第21話 戦争終結

「アリス副長!本当に我々は退却してよかったのですか?シド隊長はまだ前線にいるのでしょう?」




アリスによって王都へと転移されたゲイルがアリスに詰め寄る。




「ああ、心配すんな!てか俺たちがいた方が邪魔になる」




少しアリスは寂しそうな顔をする。




「それは一体どういうことなので?」




「ダンジョンから出るときに使った力は殆ど災害だ」




「え?」











ゲートを破壊してダンジョン最下層を脱出するとき、シドの炎はもう一段階先へ進んだ。




「シド!もうやめろ!それ以上燃え上がったら俺の回復魔法でも追いつかねーぞ!」




「それでもやる」




「だからって!」




「お前の泣きそうな顔を見るのは嫌だ」




「俺は泣きそうな顔なんてしてねーよ!」




「アリス、帰ろう。俺たちの家に」




「俺は、、、」




「いつの間にかあの隊は俺たちが帰る場所になってたな」




「そんなもんお前がいなくなったら意味がね―よ!」




「だったら俺を死なすな!」




更にシドの炎は強くなっていく。




「その言い方はずりーぞ!くそ!」




「信じてる」




シドの言葉をアリスは噛みしめる。




「ちくしょー!俺が限界を超えればいいんだろ!?だったら俺を心の底から信じやがれ!」




アリスは自分の中にある魔法の根源に訴えかける。というか脅しをかける。力をよこさなければすべて捨ててやるぞと。アリスに嘘がないことは彼女の根源であるからこそ疑いの余地はなかった。だからこそ無理やりに開かれた。新たな魔法への入り口を。






アリス




魔力総量 10000000


有効魔法範囲 10000000


属性 無




スキル


収納魔法


転移魔法


変身魔法


通信魔法


共鳴魔法


回復魔法


補助魔法バフ


補助魔法デバフ


洗脳魔法


幻影魔法


呪術魔法


探知魔法


鑑定魔法


結界魔法


浄化魔法


錬成魔法


付与魔法


強化魔法


魔力供給魔法


魔力需給魔法




エクストラスキル


天界魔法


再生魔法←NEW




「おらぁ!回復なんてけちなことは言わねぇ!燃え尽きて失われても俺が再生してやる!ひたすら燃えやがれ!」




「愛してるぜ、アリス」




「俺もだ!ばっきゃろー!」




シドの炎は徐々に色を変えていく。蒼から黄へ、そしてそこに光沢が生まれていく。




「俺は太陽だ!全て焼き尽くす太陽だ!」




シドの炎は金色に輝きだす。そしてその光は急に収まっていく。




「はぁはぁはぁ!どうしたんだよ、シド!」




「周りを見てみろよ、アリス」




シド、アリス、ミル、エンリの面々はいつの間にかハルネ山脈の麓にいた。




「おい!シド!これって!」




「燃やし尽くしてやったぜ。空間ごとな」




そう言ってシドはその場に倒れた。




「シドお兄ちゃん!」




「隊長!」




ミルとエンリがシドの元へと駆け寄る。そしてアリスはゆっくりとシド近づき彼を抱きしめる。




「無茶しやがって。バカ野郎」




「副長ここからどうしますか?」




「王国軍をぶち殺す!シドを最低限回復したら一気に戦場へ飛ぶぞ!」






シド




魔力総量 ∞


有効魔法範囲 0


属性 火




スキル


火耐性 強




エクストラスキル


不死鳥の炎


”#地$%獄%の$炎#”


日輪の炎←NEW








アリスがダンジョンでのことを思い出しているとき、メメは地上に降りてきた太陽を眺めていた。




「ふざけてるなぁ。確かにこれじゃあ王国軍に勝ち目はないね」




メメはシドを眺めながら思った。戦略とかそういったものを台無しにするふざけた力だと。メメは軍師としてこういったルールをバカにしたような力が嫌いだった。考え抜いた策を一瞬で台無しにしてくるそんな力が。そう、自分の力も。




「本当に戦況をひっくり返す理不尽な力だね。全くもってウザい。なら俺も理不尽を使いますよ。心の底から嫌だけど」






―月読尊―






シドの炎が収まったころ王国軍は誰一人としてハーネス大陸にいなかった。だがシドにはわかっていることがあった。なぜかは分からない。だが間違いなくあの男は取り逃がしたと。











ハーネスで王国兵が焼かれていたころ、メメはユリと二人で船の上にいた。




「あれ?あれ?なんで私たち船の上にいるんですか?」




「それは聞かないでもらいたいな。俺としても不本意な結果だ。まさか俺が戦争でこのカードをきらさせられるとは」




メメの苦虫を潰したような顔を初めて見たユリは驚きを隠せなかった。この人はどんな時でもどんな敵でも余裕を崩すことはなかった。その彼が本当に悔しそうな顔をしていたのだ。




「メメ様」




「少しそっとしておいてくれ。俺は愛すべき戦争というゲームで禁じ手を使わされた。あいつだけは絶対に殺す。俺の愛すべき戦争でだ」




メメが誰かを殺すと言い切るのも、ここまで強い目をするのも初めてだった。メメは間違いなく天才。最強の軍師だとユリは信じている。だがどこかいつも本気になれないような、退屈しているような、そんな印象を受けていた。だから本当に初めてなのだ。メメの本気の顔を見るのは。


本気になったメメ。それを想像するだけで背筋が震えた。それは見てみたかったものでもある。だが見てはいけないものだったのかもしれないと恐怖を覚えた。











「あれだけの熱をどうやって逃れたんだ、あいつ。まあそれはあとで考えるか。さすがに、もう、ガス欠だ」




燃え尽きて黒焦げになったシドは意識を手放して地面に落ちていく。




「ばっきゃろー!丸焦げじゃねーかよ!ふざけんじゃねー!マジで、マジで、ばっきゃろー!」




地面にぶつかる前に、転移してきたアリスがシドを受け止める。と同時に回復魔法と再生魔法をかけまくる。黒炎の時とは違って魔法は効くが、火傷の具合が桁違いだった。普通ならとっくに死んでる。本物の焼死体よりも焼死体のようだった。




シドはそれから再び眠り続ける。そしてアリスはシドの傍からひと時も離れずひたすら回復魔法をかけ続けた。




そしてシドが目を覚ましたのは10日後だった。

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