第18話 シドの復活

「ごはっ!はぁはぁはぁ」




「シド!!!」




「シドお兄ちゃん!!!」




起き上がるとアリスとミルが抱き着いてきた。




「目を抉るなんてお前何考えてんだよ!バカだよ!バカ!超絶バカだ!!!」




アリスが泣きながら俺の胸をポカポカ叩いてくる。いやボカボカだな。




「ごはっ!いて―よ」




「シドお兄ちゃん、もうこんなことは絶対しちゃだめなの!」




俺の無事を喜んでくれているようだが、俺は傷が残っていない彼女たちをみて安心していた。




良かった。それが見られたのはよかった。だが俺は死んでもよかったのに。




「シド!死んでもよかったとか思ってんなら殺すぞ!」




「、、、それは本末転倒だろ」




「俺はシドに傷つけられても構わない。むしろお前が一人で傷つくよりはいい。だからもう俺を一人にしよーとすんじゃねぇ!絶対一人にするんじゃねぇ、、、」




いつも強気なアリスが不安そうな顔で俺を見ていた。その顔を見て俺はやってはいけないことをやってしまったんだと実感できた。




「お兄ちゃん、ミルは怒ってるの!だから、あの、絶対、死なないで欲しいの!





ミルも目に涙を溜めながら俺を見てくる。




わかりきったことだった。俺にはずっと一緒にいたい奴らがいる。だけどあの黒いものと話した時、あの時その全てが俺の頭から消えていた。




今回のことで俺は実感した。俺はこの子たちを失いたくないし、この子たちの未来に俺がいないのも嫌だ。俺は生きる。そしてこの子たちも絶対に生かして見せる。そしてできれば幸せに。




だからあの黒いものに頼らない力が俺には必要だ。絶対に必要だ。




「隊長!ご帰還おめでとうございます!」




「エンリまで俺のために、、、とりあえず今の状況がよくわからない。アリス、俺にここまでの情報をくれ!」




「ちぇ!わかったよ!そ、その代わりこれから1週間、お、俺と一緒に寝ることな!」




「お前いきなり何言ってんだ!一緒に寝るとか!そういうのはまだ早いだろ!


その前に色々!」




「ダメか?お前が起きなくなってから俺ずっと眠れなくてよ。すっごく怖かったんだ。だからちょっとの間でいいから一緒に寝てほしいんだけど」




アリスは寂しそうな顔でそう言った。そうだよな。やましいことなんか考えちゃいない。それがアリスクオリティだろう。




「、、、いいよ」




「よっしゃ!じゃあ今から俺が知る限りの情報を渡すぜ!」




俺の頭の中に寝ていた間の情報が一気に流れ込んでくる。アリスの魔法で流れ込んできた情報は驚くほどのものではなかった。まあこんなもんだなと思う程度。




「アリス、このダンジョンに入ってからのハーネスはどうなってる?」




「俺たちがここに入ってからのハーネス?」




「なんか気になるんだよ。いやな予感がする」




「でもダンジョンの中から外の情報を得るには俺の魔力だけじゃ無理だぜ!?」




「俺の魔力も使えよ。お前の魔力需給魔法ならできるだろ」




「でもシドは今起きたばかりじゃねーか!」




「頼む。なんかあいつらが危ない気がするんだ」




「日輪隊のことか?」




「ああ」




「しゃあねーな!じゃあ俺に魔力をよこせ!無理やりダンジョンの外の状況を見てやるからよ!」




「ありがとう。さすがアリスだな」




「、、、ふへへ。シドー!!!」




アリスが飛びついてくる。なんかこんなのがすごい久しぶりな気がした。






―魔力需給魔法×探知魔法×強化魔法(範囲10倍)―






俺の魔力を受け取って発動したアリスの魔法はダンジョンという軽い異世界を突き破り、勢い余ってハーネス大陸全土まで網羅した。




「シド!今ハーネスが王国から攻められてるぜ!しかも15万の兵だ!」




15万?さすがにイカレてんだろ。王国は解散ライブでもするつもりなのか?




「15万!?それは本当ですか!副長!日輪隊のみんなは!?」




エンリは信じられないという顔をしている。もちろんアリスもミルも事の重大さなんて何もわかっていない。




「ハーネス側はゲリラ戦で迎え撃ってるみたいだぜ!ウチの隊も参加してる!」




「いくらハーネスの先鋭でも15万の兵が相手では、、、」




エンリはその場に膝をつく。その姿を見て思った。ふざけるなと。俺の部下にこんな顔をさせてるんじゃねえ。今のところ気休めに過ぎないが俺はエンリの肩に手を置く。




「じゃあ早くあいつらを助けに行かねーとな」




「え?」




「アリス、ここから戦場へ最も早く辿り着く方法は何だ?」




「ダンジョンの中からだといくらシドの魔力を貰っても転移魔法は使えねーしなぁ。ん?そう言えばそこのゲートを通ればハイネ山脈の麓に出られるんじゃねーか?」






―鑑定魔法―






アリスはゲートを鑑定する。




「どうだ?アリス」




「このゲートをくぐればランダムだけどハイネ山脈の麓のどこかには転送される!だがロックがかかってるみたいだぜ!」




「ロック?」




「通れない壁みたいなもんができてる!」




「無理やり通るには?」




「へへへ!ぶっこわしゃいい!」




アリスは悪戯っぽく笑った。




「わかりやすくていいな!」




「だろ?」

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