第28話
「これでメイクは終わりよ。鏡の方を向いてもらえるかしら。」
「はい。」そうこたえてドレッサーの鏡を見た。あまりメイクしないからなんだか不自然に見える。少し不安になった。
「普段と全然違いますね。まるで別人です。」
「そうかしら?じゃあ最後にヘアメイクね。」既に温められたヘアアイロンを持った先輩が私の髪に触れる。
「真緒はいつも前髪は巻いてるかしら?」
「はい、あ、自分で巻きますね。」
「ありがとう。」先輩は、髪を私の首あたりでくびれさせ、外ハネに巻いていた。私はいつも通りに前髪を巻いた。
私はその間にイヤリングをつけた。髪を冷やす間、ネックレスをつけようとしたが思ったより手こずっていた。すると天音先輩が
「私が付けるわ。」と言った。
「ありがとうございます。」私は軽く髪を持ち上げた。先輩の指先が私の首にあたる。それが少しくすぐったくて、ぞくっとした。
「はい。」
「ありがとうございます。」先輩はスタイリング剤を手にとって広げ、私の髪を優しく撫でた。
「これで完璧ね!」そう言ってふわっと微笑んだ。
「本当にありがとうございます!どうですか?大丈夫でしょうか…。」
「とっても素敵よ。花神として誇らしいわ。少し緊張しているかもしれないけれど、大丈夫よ。私が隣で手をひくから。」少し頰が熱くなった気がした。
「ありがとうございます。すごく嬉しいです!」天音先輩はふふっと口に手を当てて笑った。一つ一つの所作が優雅な人だなぁと思った。
「あ、そうそう、1年生はいいけれど、もし他の2年生からダンスを申し込まれても受けちゃだめよ。真緒は他の子と違って、もう私の初花なんだからね?」
「はい!先輩の初花ですから!」にこっと笑ってみせる。まだ出会ったばかりで信用されていないのかな…。
「ええ。」
「あ、まだ3時ですね。先輩は他にもお仕事あると思うので私、部屋に戻りますね!」
「そうね。私も準備しなくてはね。」私は運んできた制服などをまとめた。
「本当にありがとうございました。また後でよろしくお願いします。」
「えぇ、また後でね。」そう言って先輩の部屋の玄関で別れた。エレベーターに乗って2階まで降りた。流石に部屋の場所もわかった。
「ただいま〜」
「あら、おかえり。」クレアは先に帰ってきていたようだった。目にバーガンディが飛び込んでくる。バーガンディ色のシアー素材が肩から中指のリングまでクレアの肌を覆っていた。胸元は四角く開いていて、膝丈のタイトなドレスにはスリットが入っていた。そしてそのスリットの下から袖と同じシアー素材の生地が流れるように縫われている。クレアはダイアモンドのたくさんついた豪華なネックレスをしていた。そしてネックレスにもはめられている
「うわぁ〜クレアのドレス、すごく素敵な色だね!クレアの良さが引き出されてる感じがする!」
「ありがとう。真緒もすごく似合ってるわ。まさに金木犀の六花って感じね。」
「そうかな?ありがとう!なんか天音先輩が色々メイクとかもやってくれて、私は何もしてないんだけどね…。」
「金木犀の六花の方が??他の花神に任せたくなかったのかしら?まぁ、どちらにせよ気に入られているみたいでよかったわね。」
「うん。まだ集合まで時間あるけど、何しよう?先輩は自分の準備があるって言ってたし、動きすぎると髪が崩れちゃったりしたら
「そうよねぇ。だから私もさっきからシワにならないように座ってるわ。そうだわ、美亜達の部屋に行ってみましょうか。」
「そうだね!行こ!」
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