第32話

部屋に戻ってクレアにあの六花の方について尋ねた。

「おはよ、最後にみんなの前で話してた花神と踊ってた??」話しながらアクセサリーを外していく。

「ええ。誘われたから。六花の薔薇の方だそうよ。あと、桜の方にも誘われて踊ったわ。」ドレスを脱いでしまうと、魔法が解けてしまったような感じがした。丁寧にハンガーにかけた。

「すごいね!引く手数多あまたじゃん!」

「そんなことないわよ。最後まで一緒にいてくださったのは薔薇の方だけよ。」

「そっか〜じゃあ薔薇の方に気に入ってもらえたんだね!」

「そうだといいわね…。さぁ、お風呂に行きましょ。」

「そうだね。」いそいそとお風呂に入り、部屋に帰ってくるなり眠ってしまった。



 次の日、クレアが先に起きていた。

「おはよう。」

「おはよ~」

「今日は9時に体育館の脇に集合よ。」

「わかった~8時過ぎぐらいに食堂に行けるように頑張る~」そう応えて、白湯を飲んだ。顔を洗って化粧水を染み込ませる。お化粧自体ついこの間始めたので順番とかルールとかはよくわからない。とりあえず肌が白くなる日焼け止めを塗る。あとはビューラーでまつげを上げて、マスカラを塗る。そして桜色のリップを塗ったら終わりだ。クローゼットを開けて、新品の制服…ではなく、天音先輩から貸してもらった制服に着替えた。まだ少し金木犀のにおいがした。

 

 クレアと食堂に行き、朝ごはんを食べた。まだ集合まで時間があったので部屋に戻った。

 コンコンコンと音がした。はーいと答えて出てみると、そこには天音先輩がいた。

「おはよう。真緒。」

「おはようございます。」

「はい、これ。入学式までに間に合ってよかったわぁ〜。」そういって渡されたのはおとといクリーニングに出してもらった私の制服だった。

「ありがとうございます!」

「いえいえ、じゃあまた後でね。」

「はい!」私はいそいそと自分の制服に着替えた。何の匂いもしなかった。髪にもう一度櫛くしを通した。


「じゃあそろそろ行きましょうか。」

「うん!」私たちは部屋を出て、体育館へと向かった。

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