第31話
そうは言われたものの皆どうしたらいいか分からず、棒立ちしていた。すると、コツコツと軽やかな靴音が聞こえてきた。
天音先輩が真っ直ぐ私のところに歩いて来た。再びピーンと緊張の糸が張り、周りの生徒も自然と道を開けていた。
「真緒、私と一緒に踊ってくれますか?」と手を差し出した。
「はい!喜んで!」先輩の手を取ってそう答えると、場の雰囲気が和らぎ、他の花神の方々も自分の初花探しに動き出した。音楽が大きくなった。天音先輩に手を引かれて、ボールルームの真ん中で踊りだした。軽やかな音楽に合わせてステップを踏む。周りも同じように踊っている。花神達の色々な花の香りがした。まるで花束の真ん中にいるような気持ちになった。
回る度にドレスの裾がふわりと膨らむ。先輩のドレスもキラキラと輝いている。1曲目が終わって、私たちはボールルームの端へ移動した。飲み物を飲みながら、踊っている人を見ていた。その中で一際目を引いたのが、クレアだった。亜麻色の髪を豊かに揺らしながら、目が覚める様な深紅のドレスを着た花神の方と踊っていた。まるで薔薇の花びらが重なっているような裾のデザインだった。美亜も踊っていた。聖蘭は私の対角にあるケータリングでたくさんの花神に囲まれているようだった。他の人に比べて背が低いので見つけやすかった。言ったら怒られちゃいそうだなと思った。私は他の花神の方々も交えて少し談笑した。六花になったこと祝福され、これから頑張ってねといった励ましの言葉をもらった。
「楽しい時間が過ぎるのは早いものね。真緒、最後にもう少し踊りましょう?」
「はい!先輩方、ありがとうございました。失礼します。」
「では、また今度。」そうしてお互いに軽く会釈をした。
音楽がいつのまにかロマンチックな雰囲気のものになっていた。ゆっくりと体を揺らす。灯りの明度が少し落ちてきた。先輩の手のひらからじんわりと暖かい何かが流れてくるような感覚になる。音楽に身をゆだねていると、天音先輩がこう言った。
「ねぇ。」
「はい。」先輩は何も言わずに見つめてきた。何だろうと思いつつもしばらくそのままでいると、曲が終わった。すると先輩は私の手を引いてボールルームの外へ向かった。玄関にある大きな階段を上った。階下に踊っている人たちが見えた。さらに歩くと誰もいないバルコニーに出た。
「私、ここが好きなのよ。ほら、ボールルームはいつも騒がしいから。それにここからの景色も好きなの。月が綺麗に見えるでしょう。」
「そうですね。」大きな月が見えた。
「今日は本当にありがとう。」
「いえ、こちらこそメイクまで手伝ってくださって本当にありがとうございました。」
「あなたは私の初花なんだから当たり前のことよ。六花になった以上大変なこともあるかもしれないけれど一緒に頑張りましょうね。」
「はい!頑張ります!」
先輩が軽く
「じゃあもうすぐお開きだから、ボールルームに戻りましょうか。」
「はい。」
ボールルームに戻るとみんな集まっていた。みんなの前に赤い
ドレスを
「皆さん、歓迎パーティーは楽しんでいただけましたか?本日はこれで以上となります。夕食はありませんので給湯室にお菓子をおいてあります。お腹が空いてしまった方は各自で取りに行ってください。明日は入学式です。オリエンテーションの時に配布した資料を見て、各自指示の通りに行動してください。本日はありがとうございました。」六花の方が一礼して拍手が起こった。それが止むと私たちは宿舎に戻った。
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