第30話

寄宿舎の前にはぱらぱらと人が集まってきていた。皆様々な色のドレスを纏っていた。私を見て、「彼女、金木犀の六花だそうよ。」と言った声が聞かれた。あぁ、先程の列の近くに並んでいたのかなと思った。

六花の方が棟ごと、部屋ごとに並んでくださいと言っている。並んで待っていたら残りの学生がだんだん寄宿舎から出てきた。集合時間の5分前には全員集合していた。なんとなく周りの興奮が伝わってきてふわふわとしてきた。

「では、舞踏館に行きましょう。」そう言って六花の先輩が先頭で歩き出した。今朝の校内探検で初めに歩いていた小道を歩き出した。途中で二股に分かれていた。今朝は舞踏館の存在に感づいて焦りながら右の道に進んだけれど、今回は道をそのまま進んでいく。皆、変な風に静かだった。


少し歩いて森が開けた。目の前には間違いなく舞踏館があった。紅色の屋根に白い壁や柱、二階建ての二階部分に広いバルコニーがみえる。もっとこじんまりとしたものを想像していたのでその大きさに驚いた。体育館の2倍はありそうな感じがした。他の生徒も口々に感想を述べていた。


「サプライズだったから今朝のマップには載ってなかったのね。祖母が言っていた舞踏館はもうなくなってしまったのかと思ったわ。」隣でクレアがつぶやいた。

「そっか、おばあちゃんから聞いてたんだね。私は天音先輩から聞いていたけど、秘密にしておいてって言われちゃってたから…。」

「なるほどね。それにしても立派ね。」

「うん。思ってたより大きい…。」

「それでは先ほどの列のまま入りましょう。」六花の方がそういうと、1年生は皆静かになって歩き出した。



ロビーを抜けると大広間に出た。壁際に綺麗なドレスを見に纏った花神の方々がいらっしゃった。さらにその奥の部屋の隅や壁際に沢山の料理やデザート、飲み物が置かれていた。

「まるでお見合いね。」クレアがつぶやいた。

「あながち間違ってないかもね。」私は苦笑した。


豪華絢爛なシャンデリアの光を受けて燦々さんさんと輝く人が私たちの前でこう言った。

「1年生の皆さん。ようこそ清淑女学院せいしゅくじょがくいんへ。本日のウェルカムパーティーでは花神のみと踊ってください。ボールルーム内にある食べ物は好きな時にお召し上がりになってください。それでは、今夜は初花の皆さんが入学したことを祝って踊りましょう!」

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