第33話

この間と同じように部屋の順で並んだ。

そして後から来た美亜たちに挨拶をした。

「皆さん、よろしいですか?」すっと静かになる。

「基本的に放送の指示に従ってください。では椿棟の皆さんから入場します。」体育館中から音楽が流れてくる。徐々に新入生が吸い込まれていく。私も流れに乗って入場する。六花として、胸を張って歩く。


式は思っていたより早く終わった。私たちは昼前には宿舎に戻った。お昼ご飯を食べて部屋でアールグレイの紅茶を淹れて、ゆっくりしていた。


「明日からは授業ね。」

「そうだね〜、初日は校内見学とかクラス委員とか決めるみたいだね。先に必要なものだけ用意しとこうかな。」

「そうね。」私たちは黙々と学校に必要なものを指定の鞄に入れた。茶色の皮でできた学校指定のショルダーバッグはリセバックというらしい。横長の長方形で可愛らしいデザインだ。肩紐を外せばサッチェルバッグにもなるそうだ。右下に雪の校章が刺繍されている。


そうだ、天音先輩から借りていた制服をクリーニングに出して返さないと。でもクリーニングってどうやって学院から出すんだろう、近くにお店はないし。あ、天音先輩と連絡先交換したんだった。

「あの、天音先輩からお借りした制服なんですけど、クリーニングってどうやって出すんでしょうか?」送信っと。


クローゼット開けるだけでふんわり金木犀の匂いがする。


ピロンと音がして、スマホを見ると、「そのまま返してくれれば大丈夫よ」と返ってきた。

「今からお返しに行っても大丈夫ですか?」

「いいわよ。」お辞儀しているスタンプを送って、金木犀の匂いのする制服を持って部屋を出た。エレベーターに乗って5階へ向かった。先輩と天花の方の部屋をノックした。

「はーい。」と返答があって少ししてドアが開いた。

「あ、ありがとう制服もらうわね。今、天花の方がいるから上がって。」

「あ、はい。お邪魔します。」中に入ると、天花の方が制服を着て座っていた。

「こちらが先日正式に金木犀の六花になった、そして私の初花になった花影真緒です。」

「えっと、花影真緒です。精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!」

「私は、泉 真琴。天花の六花だよ。よろしくね〜。」

「よろしくお願いします!」

「まぁでもあと1年は天音は私のものだからね〜」そう言って笑いながら泉先輩は天音先輩に抱きついた。

「ちょっと、真緒の前でやめてくださいよ。」天音先輩は少し微笑んでそう答えた。仲良しなんだなぁ。

「いいじゃないどうせカッコつけたってすぐにバレちゃうんだから〜」そう言ってにこにこしている。

私もつられてにこにこしてしまう。

「そうだ!金木犀の六花が3人揃ったんだから特別な紅茶、淹れてくるね!」そう言って泉先輩は席を立った。

「前に会った時よりもうるさいでしょう。真琴さん、寝起きははテンション低いから。」

「え?なんか言ったー?ほら天音もお茶菓子出すの手伝って。」

「はい。」泉先輩が淹れてくれたのは、金木犀の紅茶だった。

「金木犀は私たちの花だからね。これから先もずっと。大事な日には飲むって決めてるの。」

「そうなんですね!」私たちの花、かぁ…

それからクレアが昨日の歓迎パーティーで薔薇の方に気に入らられていたこと、他の六花が誰になりそうか、なんてことを3人で話した。泉先輩は気さくな方で話し方も天音先輩に比べて砕けている印象だった。泉先輩とLINEを交換してお茶会はお開きになった。

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