第37話

水曜日になった。今日の放課後はレクリエーションがある。

朝のSHR《ショートホームルーム》で小関先生がみんなに連絡した。


「今日の放課後は1、2年生でレクリエーションを行うため、部活動見学はできません。ですが、先輩方と親しくなれる良い機会ですので学院での生活についてや部活動についてなど色々お話してみてください!」



放課後までクラスのみんなもそわそわしていた。茶色のリセバッグに筆箱やファイルを仕舞う。


「では体育館に行きましょう。体育館で解散なので荷物を持ってくださいね。」


体育館に入ると、昨日天音先輩から説明された通り、円形に向かい合った椅子たくさんが並べられていた。


そして1組から円の内側に座った。それから

「本日は、花神の皆さんと初花の皆さんの一人一人の親睦を深めるためにこのような会を行うことにしました。向かいあっている方と2分ずつお話をしていただきます。初花の皆さんは2分経ちましたら時計回りに一つずつ移動して着席してください。それを繰り返します。そしてその後に少しレクをしていただきます。花神の皆さんはご自分の初花探しに役立ててください。基本的には、はじめに名前と、自分の花がある皆さんは自分の花を話してください。それ以外の会話は個人にお任せします。初花の皆さんは学生生活について質問してみてもいいと思います。それではどうぞ始めてください。」



「よろしくお願いします。」会釈をすると、なんの花か分からないけど少しだけ花の香りがした。

「よろしくお願いします。……えっとまず自己紹介するね。白井芽衣しらいめいです。山茶花さざんかの花神です。」

「花影真緒です。えっと……金木犀の初花です。」口の中が変に乾く。

「え?!金木犀の初花なの?!」

「はい、あの、まだ自覚はないんですけど…。」

「おめでとう!歓迎パーティの時とは服が違うから分からなかった!もしよければ選ばれた理由とか知り合ったきっかけとか聞かせてくれない?」

「はい、天音先輩は私を選んだ理由は縁だって言ってました。初日に食堂に行った後、食器を片付けようとした時に水のグラスを持った子とぶつかってしまいまして、偶然そこに天音先輩がいらっしゃったんです。私がぶつかってしまった子に謝っていた所を見て、『謙虚』という金木犀の花言葉にぴったりだと思われたみたいで…。」

「そうだったのね。確かに縁だね。話してくれてありがとう!他に現時点で決まってる人はいるの?」

「あ、はい、薔薇の初花が決まってます。」

「そうなの?!知らなかったわ!どんな方なの?!」

「えっと、すごく綺麗です。」

「お話するのが楽しみ!」

そして白井先輩は小さい声でこう続けた。

「……本当は初花が誰になったかっていうのはおおやけには言わないのが暗黙のルールなの。でも六花りっかはしょうがないのよ。隠したところですぐにバレてしまうでしょ?」

「そうですね。」確かに行事で生徒の前に出るならすぐにバレてしまうなと思った。


「終了でーす!初花の皆さんは時計回りに一つずつ移動してください。それではどうぞ。」


「あ、ありがとうございました!」

「こちらこそありがとう。六花として頑張ってね!」

「はい!ありがとうございます!」


こんな感じで色んな先輩とお話しをした。2分というのは私が思っていたよりも長く、色々な話を聞くことができた。でも大半の先輩方は初花に選ばれた経緯を聞いてきたのでほぼ同じ話をして1周した。


天音先輩の時は自己紹介がお互いに「金木犀の…」というのが少し不思議な感じだった。



レクが終わり、解散したので、後片付けを手伝いに天音先輩のもとへ行った。



「大変な質問攻めだったでしょう。」と言って悪戯いたずらっぽく微笑んだ。

「はい…ほとんど天音先輩に選ばれた経緯について話しました……。」

「まあそうよね。会ってその日に、なんて中々ないものね。ほとんどの六花はこのレクリエーションの後に決まるものだもの。」

「そうなんですか。」私は何を手伝うべきか分からず、手持ち無沙汰になってしまった。天音先輩はそれを感じ取ったらしかった。

「……真緒、初花の六花全員が決まるまで六花としての仕事はないから今日はもう帰って休んでいいわよ。」

「えっ、でも何かお手伝いを……。」

「いいのよ。これは花神のためのイベントだったのだから、ね?」柔らかく微笑んだ。




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