第9話

さっきもらったルールブックをしっかり読んでいると、家具は壊さない限り、移動していいと書いてあった。

「ねぇクレア、見てこれ。」と言って紙面を見せると、

「変えたい?」と聞かれた。米印でただし、地震の時に危険にならない様に配置する事と書いてあった。

「入り口側クローゼットってちょっと危ない気がするんだよね。もし地震で倒れたら出られなくなっちゃいそう。」

「それはそうね。じゃあベッドと学習机の間に置く?それともベランダ側に?」ベッドと学習机の間はなんか不恰好だなと思った。

「ベランダ側がいいんじゃないかな?カーテンもちゃんと2枚あるから大丈夫と思う。」私達の部屋は校舎の反対なので、外には森と、少し遠くに学院を囲む塀があるだけだったけれど。

「じゃあ動かしましょ。」そう言ってまずは私の方のクローゼットを部屋の真ん中に動かし、それからベッドと学習机を入り口側に動かしてクローゼットをベランダ側に運んだ。クローゼットの中身を一度出してからまた仕舞う羽目にあった。先に教えてくれれば朝動かしたのになと思った。同じようにクレアのも動かした。軽く汗をかいた。するとほのかに香っていた金木犀の香りが少し変わった。ひと段落して時間を確認するとまだ17時30分だった。21時に天音先輩と会う約束があるという事実が私に期待と焦りを感じさせた。明日の予定表にはは朝9時に体操服で体育館集合とあった。その後は昼食、再びガイダンス、夕食、就寝という割とゆったりした予定だった。体操服で体育館って何するんだろう?レクリエーションなのかなと思った。

美亜からLINEのグループの招待が来ていた。入ると美亜と聖蘭が先に入っていてクレアがまだだった。 

「クレア、グループの招待来てるよ。」クレアがスマホを開いてグループに入った。

「ねぇ、ルールブック読んでたらさ、夜は基本的に22時以降に宿舎の外に出るの禁止なんだけど朝は4時以降なら学院内のみだけど外出できるみたい。」と美亜が送ってきた。

「だから明日の朝早く起きて、学院内散策しない??学院内地図見たらすごい面白そうなところがたくさんあったから見に行きたくて!」と続けた。

「確かに私も見てみたい!」と私が答えると、

「じゃあ明日は何時に起きたらいいのかしら?」とクレアが送った。

「早く起きるなら朝はきっとまだ暗いから4時くらいに起きて5時くらいに出たらいいと思う。」と聖蘭が送った。

「確かに暗かったら何にも見えないもんね!じゃあ明日は4時起きで5時に宿舎を出発しよう!」と美亜が送った。18時。明日の朝はまだ寒いだろうから、分厚いコートと、暖かいインナーシャツに白いセーターとオレンジ色のワイドパンツを着て、さらに濃いデニールのタイツを下に履くことにした。

なんだか喉が渇いてきた。各部屋に魔法瓶のポットがあり、各階に給湯室があることを思い出した。

「私、給湯室に行ってお湯沸かしてくるね。」そう言って保温ポットを持って部屋を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る