第6話
「この制服すごくいい香りですね。」
「あぁ、私が付けている香水の香りが移っちゃったみたい。」天音先輩は少し照れながらそう言った。再びエレベーターに乗った。エレベーターが2階で止まり、
「じゃあ私はこの後もお仕事があるからここでさよならね。1年生はみんなガイダンスまで自室待機だから。また何かあったらいつでもいらっしゃい。」と言われた。
「わざわざ貸してくださってありがとうございました!」と言ってエレベーターから降りた。方向音痴のせいで自室が分からなくなってしまったので、ひとつひとつ部屋の表札を見ながら自分の部屋を探していた。すると後ろから声をかけられた。
「真緒、もしかして制服貸してもらったの?」クレア達だった。
「あれ?クレア達は先に帰ったんじゃなかったっけ?」
「それが実はさ、食堂から出る時に先輩方にたくさん声かけられちゃって帰るに帰れなかったわけ!そしたらめっちゃ静かで強めの美人の先輩が注意しに来てくれて!」
「六花の薔薇の先輩が助けてくれて、それでようやく解放された。」
「そうなんだ!美人さんは大変だね……。」
「聖蘭が食堂出る前に覗きに来てる先輩に構うなって言ってくれたんだけど、囲み取材みたいになっちゃって逃げられなくなってさ〜LINEの友達めっちゃ増えた。あ、まだLINE交換してなかったね。今しよ?」
「うん!いいよ〜」みんなでスマホを取り出してLINEを交換した。
「ところで真緒はどうして廊下をうろちょろしていたの?」ぐっ……。見られてた。恥ずかしいなぁ。
「実は方向音痴で自分の部屋が分からなくなっちゃって……。」顔が赤くなるのを感じた。そして笑いながらクレアがこう言った。
「そうだったのね。じゃあ私達が遅くなってよかったわね。それに真緒が私に持っててって言ったから、部屋の鍵を2つとも私が持っていたから真緒が早く着いていても入れなかったわね。」笑いを堪えて、声が震えていた。そして部屋の鍵の2つ目を私に手渡した。
「じゃあ帰ろっか!」そうして立ち話をしていた私たちは無事に自室に帰った。今朝初めて入った部屋なのに安心感がすごくあった。時計をみるともう14時30分で、ガイダンスの時間が近かった。
「真緒に制服を貸してくれたのは金木犀の先輩だったのね。そこにいるだけでいい香りがするわ。」
「そうなの!六花の人達と優秀な生徒は5階の広い部屋をもらえるんだって!天音先輩の部屋に3年生の六花もいらっしゃったの!しかも天音先輩が水シミになったら困るからってクリーニングまで出してくれて……すごい人だった!」
「よかったわね。だから5階まであるのね。」クレアはまた一つ謎が解けた!みたいな嬉しそうな顔をしていた。大人っぽい顔立ちと令嬢のような気品あふれる話し方だけど、隠しきれない好奇心を持っている人なんだなと思った。
「あと、香水を引き継いだ3年生を天花、2年生を花神、1年生を初花って呼ぶみたい。」
「そうなの?面白いしきたりね。」丁度アナウンスが流れてきた。
「新入生の皆さんにお知らせいたします。15時よりプロジェクタールームにおいて、生活ガイダンスを行います。梅花棟の1階の突き当たりにあります。事前に配布された館内地図をご参照ください。筆記用具とノートを持参ください。繰り返しますー。」
時間を確認すると14時45分だった。
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