第2話

「部屋が一緒だなんて嬉しいわ。真緒。」と言って微笑んだ。

「私もだよ!結城さん。」と私が言ったら

「結城さんじゃなくってクレアって呼んでくれると嬉しいわ。」と言われた。

「わかった。じゃあクレア、よろしくね。」

私達を部屋まで案内した先輩が、

「放送がありますけれど、荷物を部屋に置いたらお昼ご飯ですから1階の食堂まで来てくださいね。」と言って去って行った。4月なのに先輩の立ち去った後には金木犀の香りがした。


事前に渡されていた予定表には4月2日土曜日は午前10時に学校へ制服着用で寮生活に必要なものを持参の上、集合、13時から1階の食堂にて昼食、15時からプロジェクタールームにて宿舎での生活ガイダンス、とあった。ポケットに沈んでいたスマホを見ると、今は11時30分だった。

「13時からだからまだ結構時間あるね。」

「そうね。軽く荷解きでもしましょうか。」そういうことになった。部屋は長方形で中央で線対称になっていた。入って奥にガラス3枚分のベランダがあり、森が見えた。ベランダの近くに壁の方を向いた学習机があった。その隣にベッドがあって一番手前にクローゼットがあった。玄関はないけれど、色が違う床が部屋の入り口にあって、そこで宿舎専用のサンダルを脱ぐみたいだった。まだもらっていないけれど先輩達は皆、色違いのサンダルを履いていた。

「クレアは右側と左側どっちがいい?」と聞くと、

「私は右側がいいわ。」と答えたので私は左側にした。

「わかった。」

学習机の上に学院指定のバッグを置いた。そして床にスーツケースを広げて下着やパジャマをクローゼットに入れていく。


「真緒はどこから来たの?」

「私は東京から来たよ。クレアは?」

「私も東京よ。同郷の出身だったのね。」

「失礼かもしれないけど、クレアってどこの国のミックス?」クレアは北欧地方の顔立ちと特徴を持っている。ミックスは日本で言うところのハーフである。

「ううん。大丈夫よ。私のママはアイルランドの人でパパが日本人なの。私は小学校の途中から日本で育ったわ。実はおばあちゃんがここの卒業生だったから、勧められて推薦入試で入ったのよ。」

「そうなんだ!最初に話しかけられた時、お人形さんみたいでびっくりしちゃったよ。すごく綺麗な瞳だよね。」

「ありがとう。真緒はどうやって入学したの?」

「私はお兄ちゃんに勧められて一般入試で合格したけど、なんで受かったのか全然わかんない。」清淑女学院せいしゅくじょがくいんは偏差値も割と高い。勉強は多少したけどそこまで学力があったかは定かではない。面接のおかげなのかもしれないけど、面接でも気の利いたことは全く言えなかったのに。


「気になる事があるんだけれど、私、入学が決まったっておばあちゃんに言いに行ったら、おばあちゃんに『おめでとうクレア。クレアは可愛くて賢いから、きっと六花りっかかたに選ばれるわ。』と言われたのよ。真緒は何かこの学院について知ってる?」六花りっか……?選ばれる?

「なんだろう?全然聞いたことないな。六花の方って人なのかな?聖蘭ちゃんと美亜ちゃんにも聞いてみる?隣の部屋だったみたいだし。」私達が部屋に入る前に隣の部屋の表札が見えたのだ。

「そうね。」と言って時間を確認したクレアがまだ12時30分だし、アナウンスがあったら一緒に行けばいいものね、と言った。部屋を出てクレアが鍵を閉めた。2つついているけれどクレアが持っていてくれた方が安心だと思った。私はおっちょこちょいだからなくしちゃったら困るから。左の部屋の表札に最上 聖蘭 藤田 美亜 と書いてある紙がガラスの中に入っている。ドアをノックすると、はーいという声が聞こえた。

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