第16話
ただいま、と小声で呟くと、
「おかえり。ほのかに良い香りがするわ。」と返ってきた。天音先輩といる時は気がつかなかったけど、今になると私にも金木犀の香りがいつのまにか少しだけ移っていた。クレアはベッドの上に座ってスマホをいじっていた。
「どんな話だったか聞いても大丈夫?」クレアは気遣いのできる優しい人だなと思った。
「うん、天音先輩と『移り香の契り』を結んできた。」クレアが息を飲んだ音が聞こえた。クレアが驚いているうちに私はパジャマに着替えた。
「え?おめでとう!金木犀の六花に選ばれたのね!?もう?今日出会ったばかりじゃない?」もっともだ。私だってそう思った。
「ありがとう。そう、なんか縁なんだって、あと私と話して金木犀の花言葉にふさわしいからって言われた。」
「じゃあ真緒はその天音先輩の初花になったのね。」にっこり微笑んだ。
「そうみたい。なんか急すぎて実感も何もないんだけどね。」
「そうよね。それでも、金木犀の方が今日言っておかないといけないと思うぐらい真緒は素敵だったのよ。」
照れずにそんな事言えるなんてさすがだなぁ。今日言っておかないといけなかったのは明日のウェルカムパーティーがあるからだ。でもこれは明日まで私と天音先輩との秘密だから。
「いやいや…。偶然だよ。」するとクレアが突然真剣な顔をした。
「真緒、あなたは美しいのよ。真緒を啓くのは私の役割じゃないけれど、もっと自分に自信を持っていいのよ。」
「う…うん。」勢いに気圧されて頷くとクレアは満足気に頷いた。
「そういえばさ、ほとんどの生徒がスカートにスカーフかリボンだったけど、ちらほらスラックスと半ズボンの人もいたね〜。私何も考えずにスカートとスカーフにしちゃったけど、美亜も聖蘭もリボンがすごく可愛かったな〜。」
「そうね。私もスカートとスカーフにしたけれど、六花の桜の方はスラックスがとても上品だったし、蝋梅の方のショートパンツもすごく可愛かったわね。今思えばスラックスも欲しかったわ。」
「ね!私もリボンも買っておけば良かったなぁ〜」
「じゃあ、今度買ったら?3年間もあるんだし、真緒は六花なんだからきっとたくさん人前に出るんじゃない?だったら色んなパターンの制服があってもいいんじゃないかしら。」
「確かに!家族に相談してみようかな。」
「ええ。明日は4時に起きて学院散策をするのだし、9時からまたガイダンスがあるみたいだしそろそろ寝ましょうか。」
「そうだね!楽しみだな〜あ、もし明日私が起きてなかったら起こして〜」
「わかったわ。」クレアがそう答え、ドアから1番手前に動かしたベットに入った。ベッドも硬すぎず、布団もフカフカだ。新しい場所で新しい友人と過ごしてかなり疲れたからベットに入ると、もうまぶたが重くなった。
「おやすみなさい。」
「ええ、おやすみ。」
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