第25話

「ふぅ〜やっと終わったね〜」そう後ろから声をかけてきたのは美亜だった。

「そうだね〜お疲れ様〜私もうお腹空いちゃったよ〜」

「確かにお腹は空いたけれど、私たちは梅花棟だから先にシャワーね。」

「早く行こう。ベタベタするの嫌。」

みんなで寄宿舎に向かう。

一旦着替えや制服をとりに部屋に戻った。

「まだ2日目なのに、すごい安心感!ただいま!って感じ〜」

「そうね。おかえり。」そう言ってクレアは微笑んだ。それからお風呂に行ってシャワーを浴びた。制服に袖を通した時、金木犀の甘い香りがして、私以外は髪が長いので乾かすのに時間がかかる。大変そうだなぁと思った。

「あのさ?六花の方がメイクとかヘアメイクとか、できる子は自分でやってほしいみたいな事おっしゃってたけど、2人は自分でやる〜?」そう言ったのは美亜だった。美亜はメイクもうまいし、髪の毛も綺麗だ。自分でやるのかな。

「私は花神の方に頼もうかしら。メイクとかやり慣れてないのよ。」

「そっか〜真緒は?」

「私も花神の方にやってもらおうかな〜メイクとか最近始めたばっかりで慣れてないから…。」

「そっか〜了解!」

「聖蘭は?」

「私できないから美亜にやってもらう。」

「そうなんだ!」

 3人が髪を乾かし終わったので食堂に向かった。朝はAセット(洋食)にしたので、お昼ご飯はBセット(和食)にした。クレアと聖蘭はAセットにしていた。お赤飯が出た。入学おめでとうって事なのかな?

おしゃべりしながらお昼ご飯を食べた。時計を見ると、12:20だったのでそろそろ行こうかということになった。

 

 再び体育館に行くと、先ほどの体育館とは全く違っていた。サロンの様になっていた。ステージ上は緞帳どんちょうがおりていた。そしてステージ側の半分は数えきれないほどのカラフルなドレスが沢山のハンガーラックにかけられている。もう半分は、簡易的な鏡台が幾つもあった。そして鏡台ひとつにつき1人ずつ花神の方々が座っている。鏡台の上には化粧品が沢山置かれていた。

「体育館に着いた方から赤色のテープに沿って進んでください。ドレスがかけてあるところで、まず、ご自分のいる寄宿舎の棟の名前と、ご自分の名前を伝えてください。次に、ご自分のドレスを受け取ってください。そうしましたら、向かって左側の通路からステージに上がってください。緞帳どんちょうがおりていますのでその裏で着替えてください。着替えが終わりましたら、右側の通路から出て、簡易サロンの方へ行ってください。体育館の後ろの扉の近くにアクセサリーが置いてあります。そこで、イヤリングとネックレス、ブレスレットなどを選んだら、ここで、ご自分でメイクなどをする方は部屋に戻ってもらって構いません。18時に寄宿舎の前に集合してください。何か質問がありましたら、花神に聞いてください。以上です。」少し早めに来た、数十人ほどの初花が説明を受けた。初めに説明すれば後は流れに沿って進むからなのだろう。「寄宿舎の前に18時集合」これだけは貼り紙がなされていた。

 

 

 早速赤いテープに沿って並ぶ。名簿を持っている人の後ろに花神の方々がいた。

「梅花棟の結城クレアです。」

「はい。結城さん。」名簿係の方がクレアの名前にチェックを入れると、花神の方の1人が大きな白いカゴを持ってクレアを連れていった。

「梅花棟の最上聖蘭です。」

「はい。最上さん。」次は私だ。

「梅花棟の花影真緒です。」

「はい。花影さん。」名簿係の方の声が聞こえた後、背中の方から聞いたことのある声がした。

「真緒は私が。」はっとして振り返ると、天音先輩がいた。他の花神の方々は驚いた表情をしていた。

「天音先輩?!六花の方々はお忙しいのですよね?大丈夫なんですか?私、他の花神の方」

「だーめ。真緒、あなたわかってないでしょう。私たちは『移り香の契り』を結んだのよ?初花を導くのが花神よ。」天音先輩に遮られてしまった。他の花神の方々は『移り香の契り』という言葉に、黄色い声をあげていた。天音先輩はいつのまにか大きな白いカゴを持っていた。

「じゃあ行きましょうか。」と言われ、手をひかれた。

「梅花棟の子はこっちね。」

「あの、天音先輩…私天音先輩のお手を煩わせたくないので、他の花神の方に代わっていただいた方が…。」

「真緒、私は真緒の花神なんだからこれくらいさせてちょうだい。それに真緒は私の初花だって伝えておかないと、真緒が他の花神にとられちゃうもの。それは嫌だったのよ。」

「う…はい。」先輩はずるい。そんな恥ずかしいことを、真っ直ぐに目を見られながら言われると、何も言えなくなってしまう。頰が熱くなるのを感じる。そんな私のことは見えないとばかりに天音先輩は私のドレスを探していた。

「花影、花影…あったわ。綺麗なドレスね。真緒はオレンジ色が好きなのね。」そう言ってふわりと私に笑いかけた。

「どうして私がオレンジ色が好きってわかったんですか?」ハンガーラックから私のドレスを取り出している先輩に問いかけた。

「それはね、面接よ。面接の前にちょっとしたアンケートを書かされたでしょう。それで好きな色を聞いて、ドレス選びの参考にするのよ。」

「そうなんですか。」

「ええ。そしてこれが真緒のドレスよ。」そう言って天音先輩は私にドレスを見せた。



 

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