第23話
両開きのドアとステンドグラスの引分け戸を開けて、靴を履き替えた。そしてそのまま食堂に向かった。昨日の生活ガイダンスでは食堂は7時は混雑するって言っていたのに、かなり空いていた。生徒のサンダルの色は、私と同じわさび色ばかりだった。この学院のサンダルの色は中学の時のような赤、青、緑、とは違い、なんとも絶妙な色合いのものばかりだった。1年生はわさび色、2年生は
みんなAセットにした。なんとなくだけど、Aセットは洋食、Bセットは和食なのかなと思う。昨晩もそうだった。温かいパンとスープを飲むと、冷え切った体がじんわりとほぐれていった。
「今日は昨日みたいに六花の方々はいないんだね。」そう美亜が言った。
「そうね。それに7時は混むってガイダンスでおっしゃっていたのに、先輩方の姿は全く見えないわね。」もしかしてそれってウェルカムパーティの準備をしてるからじゃないのかな。でもこれは天音先輩との秘密だし……。
「それは今日が日曜日だからじゃない。休日に早起きしたい人なんて少ないから。」
「そっか!確かに。」聖蘭がそれっぽい事を言ってくれたから美亜も納得し、クレアもなるほどと、頷いた。朝食を終えた私たちは一度部屋に戻った。
クローゼットの下の引き出しの中に入っている体操服を着る。ハーフパンツはわさび色だ。左の腰の場所に白字で花影と刺繍されている。きっと先輩方は芥子色と茄子色なんだろう。白いシャツの左胸には校章がプリントされていた。ジャージパーカーもハーフパンツと同じように苗字の刺繍があった。
着替え終わり、クレアを見ると、結城と刺繍されており、あぁクレアの苗字は結城だったなと思った。名前ばかり呼んでいるから、苗字は記憶から抜け落ちてしまっていたみたいだ。時計を見ると、8時を少し回ったところだった。
「集合まで後1時間あるわね。」
「そうだね……。あ、体操服って事は運動するかもって言ってたよね?水筒に白湯いれたいから給湯室行かない?」
「ええ、いいわよ。」私達は各々の水筒を持って給湯室へ向かった。
給湯室で、
一冊だけ持ってきていた本を読みながら、クレアが持ってきていたアッサムティーを飲んで、のんびりした。
8:30になり、そろそろ行こうと部屋を出た。
「靴とか持って行かなくていいのかな?」
「ガイダンスでもらった冊子に体育館で体育館用の靴を渡すって書いてあったわよ。」
「そうなんだ!そこは読んでなかった…。」
玄関を出て右へ歩く。朝とは反対の方向だ。部室棟を過ぎる。他の生徒たちも体育館に向かっている。
体育館に着くと、入り口に長机があり、2年生らしき人たちが名簿とサイズを確認しながら体育館用の靴を1年生に渡していた。私たちも列に並び、靴を受け取った。これもわさび色だった。
体育館のステージには大きなスクリーンがあり、並び順が図示されていた。
私の隣にはクレアが並んだ。
「意外と遅かったね!」後ろから声をかけられて振り向くと、美亜と聖蘭がいた。
「あーそっか!部屋の番号順だから後ろなのか!」
「そう。」聖蘭が頷く。
「私たちより少し早く着いていたのね。」
「うん。靴の受け取りが混むかもって聖蘭が言ってくれたから!」
「そっか〜確かに混んでた!」
いつのまにか、ステージの上に6人の先輩が立っている。
「はーい!もう全員集まったかな?」
「それではまず、皆さんに集まってもらった理由を話します。私たちの学院では、毎年4月にウェルカムパーティとして舞踏会を行なっています。皆さんにはこれから、簡単なワルツの練習をしていただきます。それから一度シャワー浴び、その後にドレスアップしていただきます。」
「このウェルカムパーティーの目的は、一つはもちろん新入生の皆さんの入学のお祝いです。二つ目は、昨日お話した『
「ドレスや靴、アクセサリーは、我が学院の頂花の方で、有名デザイナーでもある蒔田 ゆり子様が入学祝いとして、新入生の皆さんにプレゼントされました。また、メイクやヘアメイクは、皆さんがシャワーを浴びた後、この体育館で行いますが花神の力にも限りがありますので、ご自分でできる方はご自分で行ってくださいますとありがたいです。」
「説明はこれくらいにして、さっそくワルツの練習をしましょうか!」
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