第21話

「そういえば、私と真緒は同じ東京出身だったんだけれど、美亜と聖蘭はどこのご出身?」

「美亜は群馬!」

「群馬県なんだ!近いね!」

「聖蘭は?」

「私も生まれは東京だけど、体が弱くて、軽井沢で静養してたから、出身は長野県。」

「そうなんだ。今はもう体は大丈夫なの?」

「うん。だいぶ良くなったから清淑女学院を受けた。本家の女の子は基本的にここに入るのがしきたりだから。」

「本家?大きいお家なの?」

「うん。旧華族きゅうかぞくの家なの。政治家。」

「旧華族なの?!嘘!それは聞いてない!」美亜が何やら興奮気味だ。

「ごめん美亜、キュウカゾクって何?」

「あぁ、旧華族っていうのは、明治時代にあった特権的階級でね、皇帝の下、士族の上の階級だったの。もう憲法が廃されてしまって階級自体はないんだけど、それでも旧華族は現代社会に置いても強大な力を持っているって言われているの。貴族のお嬢様ってすごい憧れるじゃん?美亜お嬢様とか大好きなんだよねぇ〜。確かにお淑やかでお嬢様っぽいなとは思ってたけど、まさか本物のお嬢様が隣にいたとは思わなくてさ!」

「そうなんだ〜。本物のお嬢様かぁ〜すごいね。」

「いや、もうただの令嬢だけど。」

「まさに深窓の令嬢ね……。あら?もしかして、最上首相の?」

「あ、うん。もう前首相だけどね。」

「……………え?え?!内閣総理大臣?!」脳が理解するまで時間がかかった。

「やっぱそうなんだ〜。」

「え?美亜は知ってたの?!」

「いや、知らなかったけど、旧華族で政治家で、本家だから最上姓でしょ?そしたら前の首相かなって。」

「すごい…美亜って博識だし、探偵みたいな推理力だね!」

「えへへ、ありがと。」

「そういえばいつかパーティーで会ったかもしれないわ。重陽ちょうようの節句の頃かしら?最上首相の一家が体の弱いお嬢様を連れてらしたことがあったのよね……。結城ゆうき家主催の重陽会で。」

「あぁ、それは行った。そのときは体調が良かったから、顔見世しに行けって言われて行った。」

「確か軽く挨拶くらいしかできなかったけれど、じゃあ私達、もう出会ってたのね。」

「そうだね。私はクレアのこと覚えてた。結城の本家はかなり落ちぶれたけど、分家がすごいって聞いてた。そしたら分家の人との挨拶の時にお人形さんみたいな子が出てきたからびっくりしたから。今はバービー人形っぽいけど、昔はビスクドールみたいだった。」服装のことかな?今もお嬢様っぽいけど、ビスクドールってことはロリータっぽい感じだったのかな?

「あら、覚えてくれてたのね。嬉しいわ。ごめんなさいね、しっかり覚えてなくて。」

「いや、私はほとんどパーティーに出てないから。何百人ものひとに挨拶してれば忘れるのは当たり前。」

私達は門の前のメインストリートに出た。メインストリートに沿って桜が植えられていた。

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