第20話
「あっ!そういえばまだ言ってなかったんだけど、実は私、昨日天音先輩と『移り香の契り』結んだよ!」
「え?!そうなの?!すごいじゃん!おめでとう!!その方って昨日はなしてた金木犀の方?!どんな感じだった?!」美亜はかなり驚いていた。
「そうなの!おめでとう。これから頑張ってね。」聖蘭も驚きつつ、こう言ってくれた。聖蘭は言葉にはあまり感情が出ないけれど、顔にものすごく感情か出るタイプみたいだ。
「ありがと〜!天音先輩は金木犀の方だけど、なんか昨日の夜お話があるって言われて先輩の部屋に行ったじゃん?そこで私の初花になって欲しいのって言われて……。」
「へぇ〜!すごい!なんか告白みたいだね!」
「まぁあながち間違いじゃない。私のの香りが移るぐらいずっと側にいてくださいってことだし。それにしてもあってその日に契るなんて、かなり手早い。」
「うん、先輩もまさか出会って数時間で『移り香の契り』を結ぶなんて思わなかったって言ってた。縁だって言ってた。」
「他の誰にも取られたくない。もしくは明日には他の誰かに取られてしまう可能性があった、って事ね。」
「いやいやそんなことないよ〜。」
「もう、また認めないのね。まぁいいわ。時間が経てば
「あ、ここの分かれ道は左に進んでね〜これ真っ直ぐ行ったら植物園だよ〜。まぁ確かに、夜遅くても今日中に言わなきゃ!って思うのはそういうことだよね!いやぁ〜すごいなぁ真緒も金木犀の方って呼ばれるのかぁ〜」
「いやいや、そんな、え?私も金木犀の方って呼ばれるようになるのかな?!そんなおこがましいよ…!」
「いや、確かに六花の呼び方は金木犀の方になるけど、それじゃ誰のことかわからないから真緒のことを言うときは初花の金木犀の方って感じだと思う。」
「そっか。いやでもなんかむずむずしちゃう〜!」
「姉さんはすぐに慣れたって言ってた。六花になったらずっとそう呼ばれるから。」
「そうなんだ、聖蘭のお姉さんは百合の頂花だったよね。」
「まぁ真緒が初花の金木犀の方って呼ばれるようになっても、美亜達は真緒って呼ぶから大丈夫だよ〜。」
「そっか!そうだよね!」きっと3人も六花になりそうな気がするけど……。こんなに綺麗でキラキラして、オーラがあるのに六花に選ばれない訳がないと思う。
「あれ、植物園じゃないかしら?」そう言ったクレアの視線の先には面白い形をしたガラス張りの温室があった。六角形か八角形の屋根がある。緑やオレンジの色がガラス越しに見えていた。
「ほんとだ!すごーい!」走って森を抜けると、空の下の方がオレンジ色になって、グラデーションができていた。
「おー!きれい!」そう言って美亜は写真を撮った。私達も撮った。美しい朝の空と植物園。
「ずっと暗い森の中を歩いていたから、あまり気が付かなかったけれど、もうかなり明るくなってたのね。」
「あ、そうだ!4人で一緒に写真撮ろう!」美亜がそう言った。
「そうだね!撮ろう!」
「ええ。もちろん。」
「うん。」聖蘭も楽しそうに微笑んでいた。
「いくよ〜!はい、チーズ!」
「中はきっと学院案内で行くだろうからやめとこう。」
「じゃあ次は
「薔薇園!素敵ね〜!」クレアがそう言った。
「クレアは薔薇が好きなの?」
「ええ。花の中で1番好きよ!その薔薇の園があるなんて…!でもまだ薔薇は咲いてないでしょうけどね。それでも嬉しいわ。」
「そっか、じゃあ5月くらいにまた行こうね。」
「ええ、みんなで行きましょう。」
「うん!ってかこの学院くねくねした道多くない?まぁ寮の方から植物園の道に合流するところが曲がってるのは、校舎を避けてるからっていうのはわかるんだけど、なんで一直線じゃないのかなぁ?」美亜の言う通り、くねくねとした道や緩やかなカーブの道ばかりだ。
「それは、知らない。こっちの方が面白いからじゃない?」今まで通りお姉さんからの情報を教えてくれるかと思いきや、そうじゃなかった。そんなに全部の情報を教えられていたら新鮮味がなくてつまらなくなっちゃうからなのかな。
「まぁそうだよね〜。あ、薔薇園じゃない?」植物園と薔薇園は近かった。
「すごい広くない?!」
「ええ!薔薇が咲いたらさぞかし美しいでしょうね!」
「聞いてたよりも、広い。」
「ベンチとはたくさんあるみたいだね。薔薇が咲いたらここでランチとかできるのかな?!」
「楽しそう。やりたい。」
「ええ!やりましょう、みんなで薔薇園でランチしましょう!」気付けば空のオレンジ色がさっきよりも広くなってきていた。薔薇園にはまだ咲いていない薔薇が歩道の両側に植えてあった。さらに薔薇の
「ねぇ見て!あれ可愛くない?!」そう私が言うと、みんなもドーム状の屋根を見た。
「ほんとだ!可愛い!」私が椅子に座ると、みんなも座った。
「この椅子、4人でもかなり余裕があるわね。」ちょうど向かいに座ったクレアの頭の横に、同じ様なドーム状の屋根を見つけた。
「そうだね。あ、見て!あっちにもこれと同じ休憩所があるよ!」
「真緒、あっち側にもあるよ。こことは色違うけど。」
「私の方からも見えるわ。」
「私の方からも。この形の休憩所は合計で5つあるみたい。その中でこの休憩所だけが白……。」
「もしかしてここって座れる人とか限られてたりするのかな…?」
「そうかもしれないわね。」
聖蘭もこくりと頷いた。
「まぁ少なくとも真緒は大丈夫でしょ!じゃあ次は学院の門のほうに行こう!道はこのまま真っ直ぐだよ〜。」
「誰も見てないし大丈夫よ。」
「大丈夫。そこまで身分上で何かあるわけじゃない。社会とは違って。」
「そうだよね!」私たちは薔薇園から学院の門の前のメインストリートに向かってくねくねした道を歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます