第11話
「うん、よろしくね。」そう言った時、ちょうどやかんがピーといいだした。2人がちょっとビクッとしていた。私も昔、沸騰した時の音にびっくりしていたなと思い出した。
「もう沸騰したから火を止めて大丈夫だよ。」
「うん。」私は保温ポットの蓋を開けた。やかんからポットに熱湯を移して蓋を閉めた。2人も、やかんから登る湯気に火傷しそうになりながら、どうにか移し終えたようだった。シンクの隣に皿などを置いておく用の籠があったので、軽くすすいで置いた。
「あ、そうだ、せっかくだしLINE交換しない?」と提案してみた。まだ出会って数十分しか経っていないから距離感おかしい人だと思われちゃうかもと思ったけど、そもそもこの先3年間一緒なんだからいいよねと思っての事だった。
「うん。もちろん!」
「いいよ。」それぞれスマホを取り出してLINE交換をした。
「じゃあ私部屋に戻るね!じゃあまた!」そう言って給湯室を出た。まだこの学院に来て1日も経たないのに結構友達ができて嬉しいなと思った。そして部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、どこが自分の部屋か分からなくなってしまった。全然自分の名前見つからないし……。あー、クレアにもついてきて貰えばよかったなと思いながら廊下を彷徨っているうちに梅花棟と椿棟の真ん中にある談話室を見つけた。高級そうな茶色に花柄のソファに座ってみた。ふかふかで体が沈み込む!と思って楽しくなってきた。そこでスマホでクレアに連絡することを思いついた。もっと早くに気がつけばよかったのにと思いながらクレアに電話をかけた。
「あ、もしもしクレア?」
「うん、もしもし。どうしたの?もしかして給湯室から迷子になったの?」と優しく、少し笑いながら言った。
「え?なんでわかったの?!談話室までは着いたんだけど……。」
「じゃあ今から迎えに行くわ。動かないで座っててちょうだいね。でも、談話室って給湯室より先じゃないかしら……。じゃあね。」給湯室より、先……??じゃあ私は今までどこを?ほどなくしてクレアが談話室に現れた。
「さ、帰りましょ。ところで真緒はもしかして椿棟の方の給湯室に行ったのかしら?梅花棟の給湯室はもう少し部屋の近くにあるわよ?ほら。」クレアが指差した場所に給湯室と書いてある。確認のためにやかんを置いたはずの籠を見ると、1つもやかんは置いてなかった。
「え?嘘、私中央階段通り過ぎて給湯室行ったんだけど……。」クレアは吹き出した。
「ほんとに真緒は面白いわね。まさかわざわざ遠くまで行ってたなんて!」クレアはなんだか壺にはまったみたいで、バカにしてるんじゃないのよ、と弁解しつつも笑っていた。
「新しいお友達できたんだけど、あの子達も椿棟の子達なんだ……。部屋が近くならすぐに遊びに行けるかなって思ったのに。」私が落胆している側でクレアはまだ笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます