第61話 戦闘力

――人気のない校舎裏。


「くぅぅ……」


ギャオスが俺の前に膝を突き、悔し気に睨みつけて来た。

奴の手下どもは既に動けなくなって、周囲に転がっている。


「へっ、これが俺様の力だ。もう二度とデカい顔するんじぇねぇぞ」


俺の名は鮫島鋼牙さめじまこうが

チーム、シャークバイトのリーダーだ。


今までは風早という化け物がこの学校のトップだったため日陰に籠っていたが、奴さえいなくなればこちらの物である。


「大勢で袋叩きにしておいて……随分と偉そうね……」


「数も力だ。悔しかったら集めてみろよ」


ギャオスは強い。

その戦闘力の数値は、120にも達している程に。


――実は俺には、生まれつき特殊な能力があった。


他人の戦闘能力を数値化し、認識出来るという能力だ。

俺はこれをスカウターと命名している。


なんでそんな能力があるのかだって?


さあな。

それは俺にも分からないが、俺はこの能力を利用して余計な危険を回避して生きて来た。

よく分からない物でも、使える物は使わないと損だからな。


で、戦闘力だが、一般的な成人男性は10前後。

ある程度喧嘩自慢や、多少格闘技してる様な奴なら20程。

何かしらでトップ張る様なつええ奴なら30以上って所だ。


俺か?

俺は子供の頃から本格的な格闘技を習ってたから、40ちょっとある。

自分で言うのもなんだが、これでもかなり強い方なんだぜ。


――だがギャオスの戦闘力は120。


格闘技で名の知れてる俺の先輩でも60程度だと考えると、奴の強さがどれ程異常かがよく分かるだろう。

本当に異常な野郎だ。

全てにおいて。


だが所詮は少数——ギャオスは強いが、その性格と気持ち悪さから下についている人間は少ない。

風早レベルの怪物ならともかく、こいつ程度なら数で囲めばどうにでもなるってもんだ。


そしてその結果が今の状態である。


まあそれでも、薬が無かったらここまで余裕って訳にはいかなかっただろうが……


薬ってのは、最近巷で出回ってるハードブーストってブツだ。

使うと短時間だが身体能力が爆発的に上がるって代物で、これを服用した俺の戦闘力は80にまで達する。

俺の手下の四天王も、この薬で今は戦闘力が60だ。


「いいか!二度と逆らうんじゃねぇぞ!!」


ギャオスの顔面を、靴の裏で思いっきり蹴り飛ばしてやった。


「ぐぅっ……」


弱り切った奴はその一蹴りで吹き飛び、そのまま動かなくなる。


「へっ、ギャオスも大した事ねぇな」


「鮫島さん。随分昼休みが余っちまいましたね」


「折角だし、安田って奴もしめてやりましょうや」


「いいねぇ。ダークソウルとかってチーム作って、調子乗ってるみたいですし。ガツンと一発かましてやりましょうぜ」


あっさり勝負がついて力が有り余ってるのか、四天王が最近噂になっていた安田を潰そうと提案して来た。


「ふむ……」


ダークソウルは寄せ集めの急造チームだと思われるので、問題にはならない。

だが安田の強さはギャオス以上と言われている。


……それがどの程度か次第、だな。


「そうだな……まあやるかどうかはともかく、挨拶ぐらいはしてやってもいいだろう」


まずは戦闘力の確認だ。

もし風早レベルの化け物なら……まあそれは絶対ないか。


そこそこ手強い様なら数をもっと集めて叩き潰す。

大した事がない様なら、その場でやってしまうとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る