第47話 これは返して貰う
「何者だ!」
車から男が飛び出してきて俺に飛び掛かって来た。
たぶん風早剛一郎の護衛だろう。
「ぐわ!」
護衛はオーラバトラーだったが、特に問題なく俺の一撃で地面に沈む。
「こいつらどこにでもいるんだな」
1匹見たら30匹の、某Gさんみたいな奴らである。
まあそんな事はどうでもいいか。
俺は護衛の飛び出て来たドアから内部を覗き込む。
「貴様何者だ。私を、風早グループ総帥の風早剛一郎と知っての狼藉か」
車内のベッドの上で、色々な計器類を取り付けられている壮年の男性――風早剛一郎が、鋭い眼差しで俺を睨みつける。
その顔は端正だ。
そういや山田のお袋さんも美人だったな。
山田も痩せたら、案外イケメンになるんかね?
そんなどうでもいい事を考えつつ、俺は風早剛一郎に近づいてその顔面に黙ってグーパンする。
「ほがぁ!?」
車は道のど真ん中で人身事故で停車中。
人目もあるので、もう通報もされている筈だ。
なので、ここで長々とおしゃべりしてたら警察が来てしまう。
「無駄に警察と揉めても仕方ないからな」
車に乗っていた他の面子も素早く殴り倒し、俺は途中目覚めたりしない様に魔法で眠らせてから亜空間へと放り込んだ――外にいる護衛も含めて。
そして魔法で空を飛んでその場を離脱し、邪魔の入らない山奥の方へと向かう。
「さて……」
俺は人気のない山奥に魔法で深い穴を掘り、そしてそこで
医院長達の話はもうある程度聞いているので、次に確認すべきは風早剛一郎関係だ。
俺は亜空間から剛一郎を引き出し、魔法で回復させてやる。
「う……く……」
まずはコイツから情報を聞き出し、関係者を処理する。
そうしないと、安心して山田のお袋さんを家に帰す事が出来ないからな。
そしてそれが終わったら、まだ少し残っている病院関係者と亀井会の奴らだ。
「こ、ここはどこだ?貴様……こんな真似をしてタダで済むと思っているのか?」
「思ってるけど?」
今の所、逆転される様子は皆無である。
まあそもそも俺に対して真面に反撃出来る様な相手なら、こんな容易く事を運ばせたりはしなかったはずだ。
それが出来てしまっている時点で、風早グループも霧崎の病院も俺の脅威足りえない。
「くっ、いったい誰の差し金だ?私が倍……いや、3倍だそう」
「3倍ねぇ……」
俺は誰の依頼も受けていない。
よって受け取る報酬は0円だ。
0に3をかけても0のまま。
なので仮に一万倍出すと言わても、それを受ける理由にはなりえない。
誰が0円で働くか。
まあもちろん、それ以前の話ではあるが……金貰って手を引くぐらいなら、最初からこんな事はしていないからな。
「5倍……いや、10倍だそう。どうだ?悪い話ではないだろう?」
「いや、全然悪い。買収は諦めろ」
「く……」
俺は風早剛一郎の提案をばっさり切り捨てる。
残念ながらお前にこの先待っているのは、苦痛と死だけだ。
「なあ、一つ聞きたいんだが……娘の体を切り刻んで生き延びて、罪悪感とかないのか?」
答えは分かり切っているんだが、なんとなく俺は尋ねてみた。
返答次第では楽に殺してやらなくもない。
腐っても相手は山田のお爺ちゃんな訳だからな。
少しぐらいは情けをかけてやっても罰は当たらないだろう。
「娘のからだ……
「そうだ」
そうだって返事をしたが、山田のお袋さんの名前を実は知らない。
だがまあ、今の流れで別人の名前って事は無いだろう。
たぶん。
「何を聞くのかと思えば……親に尽くすのが子の務めだ。偉大な私を生かすための礎になるのだから、あの子もきっと喜んでいるはず」
……喜んでたら殺せとは言わないんだなぁ、これが。
理論が余りにも自分勝手すぎて、思わず吹き出しそうになる。
本気で言ってそうだから怖いわ。
「そんな事よりも、私の下で働く気はないか?報酬は思いのままだぞ。お前ほど腕が立つ人間が、凡百の下で働くなど愚の骨頂だ。私の元に下れ」
風早剛一郎が、諦めずに俺を買収しようとする。
まあそれ以外生き延びる道がないのだから、気持ちは分かる。
だが――
「お前に一つ言っておきたい事がある」
「な、なんだ?」
――この言葉を奴に送ろう。
「
言葉と同時に、俺は風早剛一郎の右胸をぶち抜く。
「が……あぁ……ひぎゅあっ!?」
そして奴の中に移植された、山田のお袋さんの肺を引き抜いた。
「取り敢えず、これは返して貰うぞ」
取り返して返した所で、山田のお袋さんには迷惑なだけだろうが。
まあ一応な。
入れっぱなしはなんとなく気分が良くないし。
「安心しろ、楽には死なせねーから」
肺を抉り取った事で、風早剛一郎はショック死してしまった。
だが死んで直ぐなら回復魔法で蘇生可能だ。
俺は回復魔法をかけ、情報引き抜きの為の拷問を始める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます