第46話 ワンハンドキャッチ
「しかし……」
医院長に関係者を全て呼び集めさせ、全員押さえたので次は風早剛一郎と思ったのだが、どうもエレベーターの爆発騒ぎのせいで他所へ緊急搬送されてしまっている様だった。
「ちょっとエレベーターが爆発した位で逃げ出すなよな」
しかも相当用心深い人物の様で、病院側もその行き先は知らされていないとの事。
もう少し痛めつければ話が変わるかもしれないが、もし本当だったら時間の無駄でしかない。
「まあ病院だし……」
手っ取り早い方法を思いつき、ぴくぴくしながら床に転がる霧崎に回復魔法をかけてから尋ねる。
「風早剛一郎の血液はあるか?」
と。
大きな病院なら、検査用に採血した血があってもおかしくはない筈だ。
そして血液があれば、俺は魔法でその居場所を探索する事ができる。
保管されているのが仮に少量だったとしても、山田のお袋さんの血を借りれば問題ないしな。
「ほぁ……け、けけけ血液で御座いますか?」
「言われた事に黙って答えろ」
「ほぎゃっ!?」
一々疑問を挟んで来た霧崎の頬を張る。
頬骨が陥没して歯も何本か飛んで言ったが、まあ喋るだけなら問題ないだろう。
「け、けちゅえきでしゅたら……ぎょ、ぎょざいまふかと……」
「じゃあ誰かに言ってここに持って来させろ。大至急で」
取りに行ってもいいのだが、霧崎の衣類は血まみれでボロボロだ。
もし人目に付けば騒ぎになるだろう。
ここが悪の巣窟なら全く気にする必要はないのだが、入院患者や不法移植に関わっていない人間も多い。
その辺りに配慮しての行動である。
常識人だからな。
俺は。
「きょきょまでもってこりぇるのは……とょくていの……もにょだけぇでしゅて……」
「面倒くさいな。一番直近の場所まで持ってくるよう指示しろ。で、それを高頭って男が受け取るって言え」
「ふぁ、ふぁかりまふゅた……」
俺は霧崎に回復魔法をかける。
余りにも舌ったらず過ぎて、内線で意図が伝えられない可能性があったからだ。
が、直ぐにある事に気付いてそのまま奴を眠らせ亜空間に放り込んだ。
「俺とした事がうっかりしてたぜ」
何をうっかりしていたのか?
風早剛一郎の胸の中に、山田のお袋さんの肺が入っている事をすっかり忘れていた事を、だ。
なので、態々血を取り寄せるまでもない。
「魔法を再発動すりゃいいだけだった。ほんと、我ながら抜けてるぜ」
戻って来てからそれ程日にちは経っていないが、もう平和ボケが始まり出したのかもしれない。
危険性は限りなく0に近い状況とは言え、もうちょっと緊張感を持って行動しないとな。
俺は理事長室の壁をぶち抜いて外に飛び出し、そのまま飛行魔法で反応のある場所へと向かう。
けっこう派手にやってるので、光で暈すとか面倒くさい事はもうしない。
目撃されても顔が別人だしな。
魔法での探索に関しては、魔力の残痕から俺を見つけ出せない様に処理しておけばいいだけだ。
「見た事のない車だな」
俺は5分ほどで反応の出ている車に辿り着いた。
形は救急車に似ているが、その色は黒で赤色灯も付いていない。
よく分からんが、プライベート用の改造車かなんかなのだろう。
「ま、なんでもいいか」
俺は走っているその車の前に着地し、それを片手で受け止める形で無理やり止める。
「車の種類が何であろうと、やる事に変わりはないからな。サクッと連れ去って、山奥で聴取するだけだ」
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