第60話 体質改善
真夜中。
山田の部屋。
「じゃあ始めるぞ」
ベッドに不安げに寝転ぶ山田に、俺は声をかける。
これからやるのは肉体の改造だ。
「う、うん。お手柔らかに頼むよ……」
肉体の改造には激痛が伴う。
それも結構な。
だから山田は不安げなのだ。
あ、言うまでもないとは思うが、当然山田の部屋には音や振動を遮断する結界を張ってある。
じゃないと雄叫びで家族が飛び起きてしまうからな。
「ま、俺の時よりはマシだから……取り敢えず頑張れ」
自分が受けた時の事を思い出す。
俺の場合は転生した肉体に魔力を扱う素養が最初からあった訳だが、魔王と戦う為にはもっと力が必要だった。
だから、限界突破する為に施術を受けたのだ。
俺の時はアトリが施術してくれたんだが、アレは本当酷かったよなぁ……
そしてその痛みは、通常の施術の比ではなかった。
体をまるで、細胞単位で引き裂かれるかの様な激痛。
拷問に耐える訓練が、子供のお遊びに思える程それは酷い物だった。
ああ、因みに、麻酔とか意識を奪う魔法系は意味がない。
改造の過程で、そういうのは全部無害化されてしまうからだ。
今の俺なら、痛みを感じさせない方法もなくはないのだが……
ただ、友人にするにはあまり乗り気のしない方法だ。
どうするのかって?
簡単な事である。
――脳を潰す。
脳があるから痛みを感じるのだ。
ならば、脳を潰してしまえば痛みなど本人は感じようもない。
それだと死ぬんじゃ?
それなら大丈夫。
死なない様にヒールをかけて、肉体の生命を維持するから。
――そして脳は再生する端から破壊する。
――まさに破壊と再生!
敵には容赦しないタイプの自覚はあるが、友人にそういった真似をするのは流石に俺も思う所がある。
そもそもこれは山田の要望だし、まあ多少の痛みは我慢してもらう。
あ、因みに、死ぬ程きつかった俺の時にアトリがそれをしてくれなかったのは、単純
に俺の防御力が高すぎて脳を簡単に破壊できなかったからだ。
ま、いわゆる石頭って奴だな。
ああ、後、殺して改造してから復活させるっていうのも出来ない。
蘇生は死ぬ直前に戻ってしまうので、改造自体が無くなってしまうからな。
まあモルモットを使って蘇生魔法の研究を続ければ、その内出来る様になるかもしれないが、少なくとも今は無理だ。
「頑張るよ……」
「じゃあ始めるぞ」
「む……もご……」
まず最初に高濃度の魔力を山田の歯にまとわりつかせ、物理的に作用するクッション代わりにする。
舌を噛み千切らない為の保護だ。
猿轡とかだと、噛み締めた歯が痛みで砕けてしまうからな。
まあ砕けても回復させればいいいいだけって気もするが、これは友人に対する気づかいだと思ってくれればいい。
更に魔法で山田の体をベッドに軽く固定する。
痛みで暴れ回らない様にするために。
「じゃあ魔法をかける。頑張れ」
「——————っ!!!ぐぇあああああがががががぎゃあがっがああああ」
魔法をかけた瞬間山田の体が大きく跳ね、雄叫びを上げる。
「う”ぅぅぅぅぅぅ!!ひぃひゃあっがああああああ!!」
拘束された山田が暴れまわり、涙を流しながら失禁脱糞する。
だが問題ない。
事前にちゃんとおむつは履かせてあるからな。
備えあれば患いなしである。
「まあ頑張れよ」
しかし……
雄叫びを上げながら痙攣したり、体を暴れさせる姿を見て思う。
今まで考えもしなかったが、これってひょっとして拷問に使えるんじゃないか、と。
「ま、直接殴ったり壊した方が手っ取り早いか。さて……」
魔法はだいたい二時間位かかる予定だ。
魔法自体は単純な物なので、俺は左手を山田に翳して魔法を維持しながら右手でスマホを取り出す。
暇つぶしに。
めぼしいニュースがないかと纏めを検索すると、ある一つの記事に目が留まる。
「なになに、爆発事故?」
本日夕刻、大きな爆発事故が邸宅で発生。
その爆発で数人の死者が出たと、ネット記事には書いてある。
爆発事故は多少珍しいが、それだけだったならたいして気にもとめなかっただろう。
俺がその記事に引っかかったのは、被害者と思しき人物達の名字が全て『風早』だったからだ。
「タイミングから考えて、事故って事は無いだろうな」
剛一郎が居なくなった事による、遺産や利権をめぐっての争い。
そう考えるのが自然だ。
「ま……俺には何の関わりもない事だしどうでもいいか」
俺が剛一郎を始末したからこうなった?
いやどうせ時間の問題だったろう。
俺が始末した事で、骨肉の争いがちょっと早くなっただけ。
つまり、俺には全く関係ない。
「他は何かないかな?」
俺は山田に魔力を送りながら、2時間程スマホをポチポチする。
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