第83話 奇襲

昼近かったのと時間に隙間があったので、目的地付近で軽く食事を取ってから俺は面談場所へと向かう。


「無駄に広いな……」


塀に囲まれた広い敷地内に、いくつかの大きな建物が建っているのが見えた。

建物は高い物でも4階建て程で、平べったい横長の形状をしている物が多い。


佐藤の運転する車はセキュリティーゲートを抜け。

そのうちの一つ。

国会議事堂っぽい建物の側の駐車場で停まる。


「つ、つきました」


「ここか。所で……お前何かしたか?」


「……へ?い、いえ!とんでもありません!私は何も!!」


ここは敵地なので、当然俺は範囲サーチ系の魔法を発動している。


その結果――


「じゃあなんで駐車してある車に人が乗ってるんだ?それも見えない様、身をひそめる形で?」


――明らかな待ち伏せを感知する。


事前にてきが来る事が分かっていなければ、此処まで準備万端とはいかない筈である。

そしてその情報源としてもっとも怪しいのが佐藤だ。


電話の会話内容に特に不自然さはなかった。

だが、一見普通に思えて、緊急用の暗号が仕掛けられていなかったという保証はない。


何せ不法な秘密を抱えた巨大企業だからな。

それ位の備えはあってもおかしくはないだろう。


「わわわ……私は本当に何も、何も知らないんです!」


俺が睨みつけると、佐藤が真っ青な顔で慌てふためいて否定する。


「第一私は貴方様に命を握られてるんですよ!そんな真似は絶対しません!」


会社の為なら死所か、無限の拷問すら厭わない忠誠。

佐藤にそんな物があるとは到底思えないが、それがゼロとは言い切れない。


が――


「まあいいか……行くぞ」


――確認するだけ時間の無駄だと判断した俺は、その話を打ち切り車から降りた。


予定はまだあるのだ。

一々細かい事で拷問なんてしてたらキリがない。

後で判明したら、その時はきつめに仕置きしてやればいいだろう。


一々車を回って引きずり出すのも面倒なので、無視しておく。

そうすれば相手の方から勝手に出て来てくれるだろう。


――案の定、俺が駐車場を出た辺りで潜んでいた奴らが動き出した。


「ひぃ!?」


背後からの襲撃。

いきなり響いた銃の乱射音に佐藤が悲鳴を上げる。

警告もなく発砲してきた辺り、捕獲とかは一切考えていない様だ。


銃声は数秒程で鳴り止む。


「なにっ!?効いていないだと!?」


俺への攻撃はタリスマンが防いでいる。

佐藤も心臓にタリスマンを融合させているので、当然無傷だ。


魔力弾バレット


俺は振り向くと同時に、動揺しまくっている襲撃者共に向けて魔法を連射した。

バレットは基本威嚇の魔法でしかないが、この世界の虚弱な人間相手なら十分必殺の攻撃となる。


「ひぎゃあ!?」


「ぶげっ!」


魔法の直撃で胴体が消し飛び、頭部や下半身が地面に転がる。


「さて行くか……いや、待てよ……」


始末し終えたのでそのまま建物に向かおうとしたが、思い直し、今殺した奴らの遺体を亜空間に回収しておく。


こいつらはタリスマンの材料になるからな。

今回の帝真との一件である程度情報が流出してしまったと考えると、事前の予備を多めに作っておいて損はないはずだ。


備えあれば憂いなしって言うだろ?

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