第6話 友人
「お、俺が……情けないばっかりに……うぅぅぅぅ……」
山田がすすり泣く。
山田の身に何が起こったのかと言うと……
四日前の日曜日、兄妹二人で遊びに出かけたそうだ。
山田んちもシングルマザーであんまり裕福じゃないんだが、その日から母親が一週間ほど男と旅行に行くらしくてかなりお金を多めに置いて――金の出所は相手の男らしい――行ったらしい。
で、そのお金でたまの贅沢をしようって色々夜遅くまで遊んだ帰り道、出会ったそうだ。
中学時代、山田を酷く虐めていた札付きの悪共に。
山田は俺とは違って成績が良かったのに、あんな底辺高校にいたのはそいつらのせいだった。
テストは何時もぐちゃぐちゃにされ、受験も今のところ以外選んだら家を燃やすって脅されて。
当然そんな奴らと夜遅く、しかも人通りのない場所であってタダで済むはずもなく。
山田はボコボコにされ、そして一緒にいた妹は暴行されてしまう。
しかもその際の映像を撮られていたらしく、警察への口封じ所か、逆に金を出さなければばら撒くと脅されたそうだ。
糞過ぎて反吐が出る連中である。
「ううぅぅぅ……金を払わないと妹が……でもあんな大金……」
山田の妹が動かないのも、その時のショックで部屋で寝込んでいるかららしい。
それと、その事は母親には連絡してないそうだ。
もし言えば性格のキツイ母親は、ばら撒かれても警察に行けと言うのは目に見ていて、妹が余計に傷つくからだ。
「山田、安心しろ」
山田は今通ってる学校で唯一の友達だ。
そんな彼が誰にも相談出来ずに困っているのを見過ごす訳にはいかない。
「俺がなんとかしてやる」
「うぅ…ぐずっ……なんとかって……」
「実は知り合いに、その手のトラブル処理が得意な人がいてさ」
俺が直接ではなく、人の手を借りてと伝える。
急に会いに来た友達が異世界帰りだなんて聞かされても、頭がおかしくなったと思われるだけだからな。
それに……友達であっても、特殊な力を持ってる事を軽々しく話す訳にはいかない。
何故なら、人は裏切る生き物だからだ。
秘密を話せば、俺は山田が裏切るかもと疑いを持つ事になりかねない。
友人相手にそんな気持ちで接したくないからな。
だから教えないのだ。
「ほ、本当に……で、でもあいつら……凄くやばい奴で……」
「山田。頭のいいお前なら、今のままじゃジリ貧なのは分かるよな?」
警察にも行けず。
母親も頼れず。
かと言って金の当てもない。
そう、山田は詰んでいるのだ。
「だったら俺に賭けてくれないか。その人なら必ずお前を救ってくれる筈だ」
「本当に……」
「ああ、だからそいつらの事を教えてくれ」
「わかった……」
そいつらの情報を聞き出した俺は、「吉報を待っててくれ」と山田に笑顔で告げて別れた。
さて、俺がすべきことは二つ。
糞野郎どもの始末と。
映像の回収だ。
特に後者は絶対に回収しないといけない。
後、俺がやったとバレない様にする必要もある。
「取り敢えず、家に帰って夜になるのを待つか」
こそこそ動くなら断然夜だ。
俺は家に帰り、母が眠るのを待ってから行動に移る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます