第8話 拷問①
「さて、人気のない所は……」
上空高くに上昇し、感知魔法の範囲を拡大して見つけた人気のない山へと魔法で転移する。
ぶっちゃけ、俺の転移魔法は欠陥品だった。
視線の通る――要は障害物のない場所にしか転移できないからだ。
態々上空に上がったのもそのためである。
「この下でいいな」
大きな木に触れ、精霊魔法で木の下に大きめな立方体の空間を作ってその出入り口を木の幹に設置する。
そこに結界を張って、他の誰かが出入りできない様にしてから俺は地下の空間へと降りた。
「さて、じゃあ情報を引き出すとするか」
どうやってか?
異世界に遥か昔からあった原始的な方法。
地球でもなじみ深いと思われる手段。
そう、拷問だ。
情報を引き出すのはこれが一番手っ取り早い。
拷問なんて出来るのか?
異世界時代は、それこそ数えきれない魔族相手に拷問を繰り返して来た。
それぐらいはお手の物である。
ああ、言っとくけど、俺だって最初から拷問なんて手段に手を染めていた訳じゃないぞ。
日本で生まれ育った訳だから、一般的なモラルは持ち合わせていたからな。
俺がそう言った手段に手を染める様になったのは、ある作戦で村を三つ魔族に滅ぼされてからだ。
俺が情報収集の拷問に反対さえしていなければ、その三つの村を救う事が出来たはずだった。
村の人達の無残な姿を目の当たりにして死ぬ程後悔し、そしてあの時から俺は手段を選ばなくなった。
甘さのせいで救えなかったから。
彼らは情報を手に入れてさえいれば、死なせずに済んだはずだったから。
俺はインベントリから4人を取り出し、眠りの魔法を解いた。
「————」
4人激しく怯えていた。
まあ当然ではある。
見知らぬ化け物——闇を纏っているので俺の姿は見えていない――がいきなり現れて、自分達の骨をへし折って回った挙句、気づいたら見た事も無い場所に連れて来られたのだ。
異世界で生きるか死ぬかを潜り抜けたベテランの兵士だって、この状況で平然とはしていられないだろう。
因みに闇はこのまま纏ったままで行く。
その方が彼らの恐怖を煽れるから。
得体のしれない相手に命を握られるってのは、想像以上の恐怖だからな。
「————」
4人の口は動いているが、言葉は聞こえてこない。
無音の魔法をかけたままだからだ。
「今からお前達の声を解放する。騒いだり喚いたら骨を折る。いいな?分かったら片手を上げろ」
4人全員の手が上がったので、俺は魔法を解除する。
「うぅ……いてぇよ……」
「ぐぅ……お、お前なんなんだよぉ。俺達に何の恨みがあって……」
「質問は受け付けない。まずはこのスマホのパスコードを言え」
俺はさっき回収したスマホの一つを見せて、パスコードを求める。
「そ、そんなの聞いてどうするつもりだよ……」
スマホを自由に扱われる事を警戒してか、一人がそう尋ねて来た。
が、そんな質問に優しく答えてやるつもりはない。
「質問は受け付けないと言った筈だぞ?答えなければ全員の骨を折る」
「ま、待ってくれ!それは長友のだ!」
「て、テメェ!畑!ぎゃあっ!?」
バラされ、激高した長友――最初に腕をへし折った男の鎖骨を蹴ってへし折る。
「5秒やる。5秒以内に答えなければもう一本へし折るぞ」
「ううぅぅぅ……1234だ……くそっ……」
いくら何でもパスワード安易すぎるだろ。
一応解除して確認し、残り5つのパスコードも順に聞いて行く。
見せしめを見せたお陰か、それ以降は順調だ。
スマホは押さえたので、そろそろ本題に入るとしよう。
「さて……お前ら、数日前に山田太郎とその妹に酷い事をしたな」
「うっ……あんた山田に雇われたのかよ……俺の家は金持ちだ。金なら出すから助けてくれ」
長友が、俺が山田に雇われたと思ったのか金を出すと言い出した。
今の俺は黒い靄の塊にしか見えていない訳で、そんな化け物が金で懐柔できるとどうして思えるのか?
そもそも山田に誰かを雇える金なんてない事ぐらい、直ぐに分かりそうなもんだが。
「悪いが俺は金で雇われた訳じゃない。山田の友人だ。それと――」
「ぎゃああああああ!!」
俺は長友の素晴らしい提案のお礼に、黙ってその足の甲を踏み砕いてやる。
べきべきと言う音が響き、絶叫が地下空洞に響き渡った。
「何度も言わせるな。お前らは俺の質問にだけ答えればいい」
静かになった――長友は痛みで喚いてるが――所で俺は質問する。
山田の妹を暴行した時の映像について。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます