第51話 気分はハンバーグ
「嘘を吐いてたら、地獄を見る事になるぞ」
「う、嘘はついてません……ぜ、全部本当の事です」
俺の問いに、パンツ一丁で正座する亀井会ナンバー2の滝沢が俯きながら答えた。
初対面時は――
「ふん、化け物め。
――とか調子に乗っていたが、ぶちのめして拷問して既に調教済みである。
視線を横に移すと、同じ格好をした亀井会の会長が短く悲鳴を上げた。
まあ悲鳴自体が聞こえていた訳ではない。
結界を張って、お互いの声は聞こえない様にしてあるからな。
なので表情や口の動きから推測しただけである。
因みにこいつは車で逃げ出そうとしていたところを――結界が張ってあるので外には出れず立ち往生していた――車内から無理やり引きずり出してとっ捕まえている。
当然拷問済み。
「ふむ……一人は海外か。面倒くさいな」
亀井会の幹部は全部で8人。
全員回収する予定だったのだが、そのうち一人は海外勤務となっていた。
流石の俺も海外まで飛んで行って、そいつを探して捕らえるのは少々手間だ。
会長に日本へ戻ってくる様呼び出させる手もあるが、日本への帰還途中に亀井会に何が起きたかニュースなんかで知る事になるだろうから、そのまま逃げられてしまう可能性が高かった。
「まあ誘拐にはかかわってないっぽいし、そいつは放置でいいか」
亀井会自体が壊滅的なダメージを受ければ、どうせもう大した事は出来ないだろう。
そして誘拐に関わっていないのなら、山田親子に辿り着く心配もない。
よって放置。
俺は日本中の悪党を潰して回る、ヒーローごっこをする気は更々ないからな。
「お、到着したか」
結界に入って来る気配を感知する。
滝沢が応援に呼んだ人員だ。
俺の張った結界は防音と、内部からの脱出は阻害するが、外部からの侵入はフリーパスだったりする。
こういう増援を期待してたから。
「数は20人程」
うち幹部が1人。
亀井会の構成人数は100人を超えているので、こいつらを入れてもまだ半分以下だ。
「さっさと処理するか」
敷地内に入ってきた奴らをおざなりに迎撃し、戻って滝沢に電話を掛けさせる。
幹部や構成員をこの場に集めるために。
逐一探してってのは効率が悪いからな。
こちらから出向くより、相手側に集まって貰った方が遥かにスピーディーだ。
「さて……」
やって来るのに1時間ぐらいはかかるとの事なので、その間黙々と拷問を続けていく。
情報の精度を上げる為でもあるが、心をへし折って死を望む様にするためでもある。
奴らには全員、タリスマンの材料になって貰う予定だから。
そんなにタリスマンがいるかだって?
こういうのは、いくらあっても困らないもんさ。
これから先だって何があるか分からない以上、確保できるのなら確保しておいた方がいいに決まっている。
それにタリスマンは単純な護符効果以外にも、結界なんかを長期間維持する為の魔力源にしたりする事も出来るしな。
「な、何やってんだテメェ――ぶげぇっ!?」
「おや――ほぎゃっ!?」
拷問をしていると、ちょろちょろと呼び出された間抜け共がやって来る。
一々拷問を中断して出迎えに行く様な間柄でもないので、屋敷内の拷問ポイント——広い畳の宴会場——に辿り着いた奴を、その都度魔力を固めて飛ばした指弾で潰していく。
そして拷問の仲間入り。
「呼び出した奴らはこれで全部か」
追加は計40人程。
内、幹部は5人。
「もう結構いい時間だし……さっさと帰るか」
ある程度重要ポジションにいる奴らは片付けられたので、この辺りで十分だろう。
ここまで失えばもう亀井会としての活動は出来ないだろうし、山田のお袋さんの誘拐に関わった奴らは全員押さえてあるので、後顧の憂いもない。
「朝ご飯は何だろ。何となくハンバーグが食べたいから、ちょっとリクエストしてみるか」
俺は血まみれの宴会場を後にし、家路に付いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます