第45話 あんま変わんない

天井をぶち破って上階に上がり、男の案内で院長室に案内させる。


「じゃあお休み」


もう邪魔なので男を寝かせて亜空間に突っ込む。

そして扉がオートロックだったので、俺はノック代わりにそれを蹴破って室中へと入った。


「な、なんだ!?」


霧崎きりさき様!」


――内部の人影は4つ。


一番奥の大きな机に座っている、太った白衣の老人。

その前に立つ、痩せた白衣のおっさん。

そして両サイドには、黒服を着た屈強な体躯の男二人。


聞くまでも無く、奥で座っているのが院長だろう。

黒服二人が残りの保安要員――ボディーガードで。

痩せたおっさんは……まあ医院長の腰ぎんちゃくかなんかだろう。


「お前が侵入者か……何が目的だ?」


医院長が俺を睨みつける。

蹴破ってのダイナミック入室だった訳だが、特に怯えた様子は見られない。

肝が据わっているのか、もしくは、ボディーガードの黒服達を信頼しているのか。


……まあどっちでもいいけど。


「邪魔者の始末だ」


隠す程の事も無いので、俺はドストレートに答えを返してやる。


「暗殺か……まさかこの私、霧崎半戸きりさきはんとを狙う命知らずがいるとはな。殺さず制圧しろ。くくく。誰の差し金か、私手ずから吐かせてやる」


拷問する気満々の様だ。

気が合うな。

俺もだ。


男達が胸元から警棒っぽい物を抜く。


それで俺を殺さず制圧する気の様だが……銃を持っていた奴らを制圧した俺に警棒で挑むって事は、それなりに腕に自信があるって事か?


「ん?」


此方に慎重ににじり寄って来る黒服共から、微かにだが気の力が感じられた。

なるほど――


気孔闘士オーラバトラーか」


「そう、貴様と同じな」


同じって……俺は気孔闘士オーラバトラーになった覚えはないんだが?

ひょっとして、扉を蹴破ったのが気の力だと勘違いしてるのだろうか?


「そいつら二人は5級だ。果たしてどれだけ持ちこたえられるかな?」


禿げデブは6級だった。

そして5級のこいつらから感じる力は、それよりほんのちょっと高く感じる。

つまり5級の方が上って事だな。


どっちにしろ敵じゃないから果てしなくどうでもいいけど。


「がぁぁぁぁ……」


「ぎひぃぃぃぃぃ……」


寄って来た二人に素早くローキックを入れて、両足をへし折ってやる。


「ば、ばかな!5級二人を一瞬で!?い、医院長!?どどどど、どうしましょう!?あの二人がががが……」


「慌てるな!」


瞬殺したら痩せてる方が取り乱すが、それを霧崎が一喝する。


「なるほど……大した腕だ。だがいい事を教えてやろう……」


霧崎が椅子から立ち上がったかと思うと、その拳を机に叩きつけた。

すると破砕音と共に机が真っ二つに割れてしまう。


その体からはゆらゆらと気が立ち昇り、5級の奴らよりも明らかに力強い。

成程、自衛の自信があったから落ち着いていた訳か。


けど――


「くくく……」


霧崎が立てた親指を自分の顔に向ける。


「何を隠そう、私は気孔闘士オーラバトラー2級だ」


――俺から見たら5級も2級も大差ない。


「あ、そ」


霧崎に突っ込み、此方の動きに反応できない奴の腹部に拳を叩き込んでやる。

もちろん、手加減は死ぬ程してるぞ。

本気で殴ったりなんかしたら、この建物にまで大きな影響が出てしまうからな。


「きききき、霧崎医院長!?」


奴はその一撃で白目を剥いて泡を吹き、その場に倒れ込んだ。


「仲間はずれにはしないから安心しろ」


最後に痩せた男の腕をへし折り、取り敢えずこの場は完全制圧。


「じゃ、色々と話を聞かせて貰うとしようか」


俺は風早や病院の話を、新しく入ったサンドバッグ共に改めて尋問する。

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