異世界転生帰りの勇者、自分がいじめられていた事を思い出す~何で次から次へとこんなにトラブルが起こるんだ?取り敢えず二度と手出ししてこない様に制圧していくけども~
まんじ
第1話 帰って来た
目を開けると見知らぬ天井だった。
まあ見知らぬ場所ではあっても、ここがどこかは分かっている。
病院だ。
「ふぅ……帰って来たか」
一言でいうなら、俺は異世界帰りだ。
本来なら、俺は車に轢かれて死んでいる筈だった。
だが転生の資質があった様で、異世界を救えば元の世界で生き返らしてやると神様から取引を持ち掛けられた俺は、一も二もなくそれに飛びつく。
「長かったなぁ……」
異世界での生活は0からのスタートだった。
孤児の赤ん坊から始まり。
血反吐が出るほどの訓練を繰り返し――転生時にチートは貰えていたが、それだけで魔王を倒せるようなものではなかった。
なんとか辛うじて魔王を倒した俺は、こうやって死ぬはずだった元の体に帰ってきた訳だ。
「考えてみれば……こっちで生きた時間より、向こうで生活した時間の方が長いんだよなぁ」
異世界では、魔王を倒すまでに25年かかっている。
だがこの世界での俺は16歳――異世界とでは時間の流れが違うため、地球では1月しかたっていない――だ。
それでも俺は迷わずこの世界に帰って来た。
それは――
「たか……ひと……」
病室を区切るカーテンが開き、ぼとりと物が落ちる音が響く。
俺の名を呟いた女性。
それが俺が帰ってきた理由だ。
「母さん……」
「孝仁!たかひとぉ!!」
「おっと」
抱き着いて来た母を受け止める。
25年ぶりに見た母の顔は、少しやつれている様に見えた。
こっちの世界では1月しか経っていないのだが、きっと俺の事で酷く心配させてしまったのだろう。
「うぅぅ……良かった、良かったよぉ……」
物心がつく前に、父は亡くなっている。
それでも母は女手一つで、貧しいながらも苦労して俺を育ててくれた。
そんな母への恩を返したくて、俺は頑張ってこの世界に戻って来たのだ。
「大丈夫。大丈夫だから」
今の俺は只の高校生じゃない。
魔王すら倒した異世界帰りだ。
もう車に轢かれた程度で死んだりはしない。
これからはずっと一緒だよ。
母さん。
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