童貞しか魔法が使えない世界で無双する俺にクール系美少女が「わたしと寝たことある？」と聞いてきたが、まったく身に覚えがない。

　この世界では、『童魔』と呼ばれる超能力を持った人間がいる。童魔が使える人間の共通点。それは――童貞であること。今や、経済も日常生活も童貞による童魔の恩恵を受けているのだ。だが、同時に童魔を悪用する『悪童』たる存在も蔓延り、彼らを取り締まる『無童係』が日夜治安を守っている。
　そんな中、童貞の飆灯九重《ひょうとうこのえ》は、『元』無童係の二島絹衣《にしまぬい》と出会う。何事ものらりくらりと行動する九重に絹衣は言った――
　――わたしと寝たことある？
　当然、童魔が使える九重に心当たりはない。仕方なく、絹衣の謎の記憶をもとにデートなんかもしてみたり？
　最初は互いに反発し合っていたふたりだが、迫りくる危機に晒される度にだんだんと九重の心が揺らぎ始める。
　これは童貞による激情の変遷をめぐる物語。