第12話 回想
炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火炎灰炭火。
見渡す限りの灼熱地獄。
かつて家族そろって腰を下ろし、テレビゲームをしたソファーは炎に焼かれ。
思い出の写真がつまったアルバムはすでに灰と化している。
朱色に染まったリビングに三人。
クローゼットに身を隠し、小便を垂れ流しながら死に物狂いで息を殺している子どもとその子を庇う父親。そして白コートを着ている謎の人物。フードはあるが被ってはいない。
そのため長い黒髪が妙に目立つ。
ほんの数分前まではこの部屋には五人いた。
ひとりは白コートの仲間。もうひとりは母親。
産声のような悲鳴が終わると、仲間の白コートは高笑いをしながら消えていった。
白コートの行いはあまりに残虐であり、おおよそ人間の所業とは到底思えないものだ。
だから子どもからすれば、残った白コートは人間に似た、『長髪の何か』としか認識できないといっても過言ではない。
長髪の何かは言った。
「正義を執行しに来ました」
父親は涙を枯らしながら、しゃがれた声で懇願する。
「子どもにだけは手を出すな! 頼む……っ!」
見たことのない父親の険しい顔に思わずめまいを覚える子ども。頭を強くぶつけたような気分の悪さだった。
煙を吸い、限界が近かった時、ちょうど天井の一部が父親のいる位置とクローゼットを分断するように崩れ落ちる。
今しかないと思った子どもは、クローゼットから脱出し、一直線に出口へ駆けていった。
途中、母親のものだった左手に引っかかり転ぶが、何も考えずにとにかく逃げた。
白コートが追いかけているのかもわからないが、とにかく逃げた。
逃げて逃げて逃げて。
やたら広い家のドアを開けると――
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