第13話

「ハッ!?」


 九重は悪夢から目を覚ます。


「あぁ……夢か」


 何度も見る夢。


 意識が現実に戻ってきても、肌に熱したフライパンを押し付けられているかのような刺激を感じる。


 自宅のベッドの上。


 今日は絹衣とのデート(仮)当日。


 嫌な汗でぐっしょりと湿った服が気持ち悪かったので、すぐに着替える。


 数々のラブコメを読み漁ることで学びに学んだファッションを参考にタンスから衣服を引っ張り出す。


 白のシンプルなTシャツに黒のスキニーパンツ。


 結局、攻めずに無難な選択をしとけというのがどうやらラブコメ界の総意なようだ。


 顔を洗い、髪の毛を整え、ひげを剃る。清潔感を保てというのもラブコメ界の総意だ。もしかしたら脱オタの本にも書いてあるかもしれない。決して読んだことはないが。


 食パンをトースターにかけてからキッチンに出向き、まずは小皿に卵をひとつ割る。それにラップを軽く乗せ、電子レンジに投入。時間さえ間違えなければ、これで簡単に目玉焼きが完成する。


 その間に冷蔵庫からトマトを取って、カット。レタスと共にサラダ用の皿に盛りつける。


 面倒くさいが、朝は何かしらの野菜か果物を腹に入れるようにしている。これは別にラブコメ界の総意ではない。


 市販のフルーツヨーグルトをデザートに九重はこれらをすべて平らげ、歯を磨く。


 待ち合わせ時間は十一時。


 これはラブコメ界の総意かどうか定かではないが、やたら集合時間が十一時の場合が多いというのが九重の見解。ただそれだけの理由で十一時と提案したのだ。アホである。


 ということで集合時間まで、まだ余裕はある。


 椅子に座り、NFのラノベを読み、時間が来たら途中でしおりを挟む。


 そうして九重は集合場所へ向かった。

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