第23話 諮問委員会への招待状


 何がきっかけなのかはわからない。山の王のおかげと人は言うけれど、後で知ったが、山の王の爺さんは俺一人ではなく、何人かの若手選手にそうしていたらしい。

次の検診を迎える前くらいから、俺は下部リーグで優勝し、中級リーグでもどんどんと勝てるようになった。


「ロロ!! お前は風の申し子だ!! 」

「ロロ!! 連続優勝!! 中級リーグでも抜群の力!! 」


色々な事が上手くいき始めた。すると様々なメーカーがスポンサーについてくれることになり、ボールも探知機も、ウエアーも無料になった。そうしてあの最初の義手義足のメーカーがやって来て

「ロロ、上級リーグに上がるためだよ」と勧められ、とにかくその返事はもうすぐある検診の後にしようと思った。

だけれども急にエンラン協会から家に連絡が入って来た。


「ロロ選手、すいませんが諮問委員会の方に来ていただけませんか? 」


 これを聞いた時に家族は一気に暗い顔になった。何故なら諮問委員会というのはエンランの「ルール違反者」を見つけるところで、この委員会にかかり、エンランの選手でいられなくなった者は数知れずいたのだ。


 エンランの最大のルール違反、それはボールに発信機以外のものを付けること。以前脳波でコントロールできるボールが開発されて、その使用者は十年に渡る出場停止処分を受けた。そう言う特別な開発は別の所で披露することができる、エンランでは絶対禁止事項で、もちろん推進器なんか取り付けようものなら、永久追放処分になりかねない。

そしてもう一つやってはいけない医学的な違反、それが脳のリミッターを外す事だ。要は「火事場のばか力」を何度も起こさせて、試技を行う事。確かに「スーパーショット」にはなるが、これを繰り返しやると、競技者は最悪生きることが難しい状態になるという。

また義手義足と生身とのバランス等々の数値は、メーカーが守らなければならないけれど、極端なものを使えば、体が壊れ選手生命が断たれてしまう。この点は今では厳しく制限されていて、違反があった場合は、巨額な罰金とエンランへの出場停止処分がメーカーに下される。いろいろ難しいのだ。でも


「ロロ・・・どうしてそんなにニコニコしているんだ? 諮問委員会だぞ? 」

まるで図鑑事件の時の、クリーム先生に見せた顔と同じだったと思う。俺はすぐにお父さんお母さんを始め、兄弟たちに説明した。


「大丈夫だよ、俺は全くルール違反なんてやっていない。それにこの諮問委員会に呼ばれるってことは、将来有望な選手だってことなんだよ。山の王も、セキュ=レンも呼ばれているんだ。不正な事をしなければ、できないような凄い投球をしている、ってことなんだよ。アマチュアとしては最大の名誉なんだ! これに呼ばれなきゃ良いプロ選手にはなれないとまで言われているんだよ! 俺検査の前に行ってくる、医療星の近くの星で、今は行きやすくなっているから。何にも心配はいらないよ」


大手を振って俺は諮問委員会に出かけた。

そこで出会ったのが、まだそれほど有名ではなかった「森のハーナ」だった。


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