第24話 同じ年のお姉さん


「私はハーナ=ルイ、あなたがロロね。私あなたにお礼を言わなきゃいけないの。きっとこれは神様がくれた奇跡だと思うの。私ね、あなたを見てからエンランを始めたのよ」


ハーナは委員会が開かれる前、初めて会った俺にそう言った。でも俺はちょっと悲しくなった。顔の色は日焼けを少ししていて、いかにも健康そうな女の人だったけれど、バランスの取れた体つきと、その年ごろが、あの第四宇宙病で亡くなったお姉ちゃんと同じだったからだ。


「そう・・・」


その時は説明が出来なくて、またすぐに諮問委員会で俺たちは別々に別れてしまった。


 諮問委員会の簡単な質問に答えて、俺たちはすぐさま「試技を行ってください」とそれぞれに言われた。まずは一般的な義手義足を渡されて「これで競技を」と言われた。そして面白いことに後で聞いたら俺とハーナは全く同じことをして、同じような事を言ったという。


「これ、新品だから、ちょっと調整がいる、ギクシャクしている感じがするから」

「そうですか・・・」

そこにいたのはエンラン協会の人で、選手経験者ではない。選手経験者は別室でモニター確認するらしい。


調整は結構時間がかかったが、その間

「ロロ、君は機械関係は得意だったのかい? 」

「いや、全然」

「すごく細かに調整するんだね」

「当たり前でしょ、そうしないと飛ばないし、義手義足じゃない方が痛くなったりする」

「そうなんだ。最新式のものを借りられることになっていたのを、医療星で返したんだよね、どうして? 」

その質問はどうもその人の「心から」出たもののようだったので、俺は素直に、正直に答えた。


「山の王に言われたんだ。あまりにも最初にいい物を使ってしまうと、調整する力が身につかなくなって、プロになれなくなるって」


「ああ・・・山の王はずっとそのことを言い続けていらっしゃるみたいだね」

この部屋はとても小さな部屋で、その隣にも部屋がある。その隣の部屋のドアが開いたので


「え? もしかしてハーナは調整が終わったの? 早い! 」

「ああ、それはロロ、ハーナは生まれつきの義手義足だから」

「でもそれにしても早いよ。あの、俺は他の星域のエンランの選手のことまで知らなくて、ハーナってどういう選手? 」

「ハハハ、君の星域はセキュ=レンがいるから、彼の事を知ることが一番勉強になるだろうからね。彼女は森専門みたいでね、最初から森って難しいと言われているんだけど、「飛距離では男子にはかなわないから」ってそこをフィールドに決めたんだって。そうそう、君を見てからエンランを始めたって言っていたそうだよ」

「それはさっき聞いていたけど、ちょっと待って、俺を見てからって言ったら、俺のことがある程度ニュースになり始めたのってこの半年くらいだろう? じゃあ何、ハーナってエンランを始めて半年くらいなの? 」

「そうそう、しかも連戦連勝。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだけど

「その表現は止めてください、森ではあってはならないことですから」ってみんなハーナから言われたらしいよ。森のスペシャリストは守らなきゃいけないルールも多いからね」


森での最大のルールは「動植物をできるだけ傷つけないこと」だ。

威力のある球を投げて、木を折るなんて言語道断、球をカーブさせて木をよけながら競技を続けなければいけない。

セキュ=レンはこれが得意だ。三本の木ならそれを縫うように進むこともできる。これを見たら誰だって、幼い俺でさえ「推進器? 」と思ったが、ボールが特殊なための動きなのだ。

皮肉なことに、このことが体感できたのは医療生のボールの実だった。セキュ=レンも医療星で入院していたから、その時に「発見」したのだろう。

今では何人かがこの投球ができるようになって、小さな子でもできる子もいる。


「彼女五本くらいの木を「縫う」ことができるらしいんだよ・・・本物だったとしたら・・・・」


それを聞いた時から、ハーナは絶対的ライバルになった。ちなみにエンランには男女の別はない。


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