第25話 遠いキャッチボール
「凄いね・・・ハーナ・・・女の子では考えられないくらいに飛んでるよ」
俺が調整を終えて、投球練習場に行った時、ハーナはそう言われていた。
「ハーナもやっぱり投球練習をしたいと言ったんだ、いきなり本番じゃ絶対に飛ばないもんな。変に結果が悪かったら疑われてしまうから」
本当はすぐさま俺の得意フィールド、主戦場の広々としたところで投球を見せなければならなかったのだ。
「ロロ、見せて頂戴。あなたの投球すごく格好がいいれど、誰かに直接習ったの? 」
「いや、習ってはないけど、家族が嫌がるほどセキュ=レンの投げ方を見てるんだ」
「なるほどね、お手本が同じ星域か、うらやましい」
俺はそこに用意してある練習球を思いっきり投げた。すぐさまボールの姿は見えなくなった。
「凄いロロ、あなたの年であそこまで飛ぶの? 四百メートルくらい飛んでるじゃない、大人になったらどうなるのかしら」
「でもハーナも凄いよ、男子並みだ」
「中級リーグのね、仕方ないわ。そうだ! 一度やってみたかったの! キャッチボールをしてみない? ロロ」
「え! 面白そう!! やってみようよ! この練習場広いから!
あ・・・」
「あ・・・遊んじゃ・・・いけませんよね・・・」
「いやいや、いいよ、でもできるかい? 小さなボールで遠投のキャッチボールなんて・・・セキュ=レンぐらいしかできないんじゃないか? 」
「できると思いますよ」
「俺もそう思います。じゃあ、俺が走って行ってくるから、手をあげたら投げて、ハーナ」
「わかったわ、ロロ」
俺たちの二人の様子に委員会の人は
「君たち、今日初めて出会ったんだよね」
「そうです」
後で笑い話になったそうだ。
ハーナのボールが落ちていたのは、三百メートルほどのところだった。地面が硬く少し下っているため、すごく転がりが良いようだ。俺が走って行こうとしたのを止めて、車でそこまで移動した。俺の力を確かめる人もいるからだ。
「ボール拾いますね、転ぶかもしれないから」俺はそれを委員会の人に渡した。そして手を振ると数秒後にボールが飛んできたのが見えた。さすがに落下する前にかなり風にあおられたけれど、
「ロロ! ナイスキャッチ!! エンランじゃボールを取ることなんてないだろう? 」
「でもボールを使うんだから、一応のことは出来とかないと。それに昔からこうやって遊んでいたし」
「そうか・・・君たちは遊牧民だもんね・・・エンランが遊びだ」
そして俺が投げることになった。
「少し下がってもいいですか? 」
「もちろん、威力がありすぎる方が大変だから」
更に百メートルほど下がって投げた。
俺はずっと先にいるハーナが「ほとんど動かない」ことを確認できたのがうれしかった。後でハーナから聞いたけれど、そこにいた委員会の人は俺の投球後、茫然と立っていたという。
「面白かった! ちょっと偉そうな大人が「信じられないって顔をしているの! 」
その後それぞれのフィールに向かった。
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