第二章 必要な経験
第20話 同じ道
「ロロじゃないか、大きくなったね」
エンランの試合に本格的に出るようになって、医療星で会った義手義足のメーカーの人から声をかけられた。
「こんにちは」
「ずっと上位だそうだね、がんばっているんだ。どうだい? うちのものをまた使ってみないかい? 」
「ありがとうございます。もっと上のリーグに上がってから」
「ロロ・・・しっかりしているね、感心だよ。私の息子の方が年が上だけれども。じゃあ、この試合敵になるけれど、がんばって」
「ありがとうございます」
俺の使っている義手義足は価格もそう大したものじゃない。本当は無料で最新のものが使えることになっていたことを、お父さんもおじいちゃんたちも知っていたけれど、俺がそれを返したことをそんなに責めなかった。それはこの星からエンランの歴史上有名な選手が出ていて、その誰しもが山の王のおじいさんと同じことを言ったからだ。
エンランは本当に特殊なプロスポーツだ。大人と子供とではやる場所も全く違う。子供向けのエンランの大会はみんなが同じコースを行くので、勝敗が分かり易い。俺はその試合は初出場、初優勝したけれど、それ以後はなかなか勝てなかった。義手義足の調整ミス、ボールの発見の遅れ等々、そして「散歩」の仕方。
「散歩」というのは大きな大会前に許される、選手が自分のコースを決めるために、歩くか、車で回りながら、詳細な自然の「データー」を取ることだ。プロの選手になれば、チームのメンバーにサポートしてもらいながらそれができるけれど、最初はそんなことはできない。
地道に自分で歩き、ここでこういう球を投げる、ということなどを決めていく。だが人を雇ってする人もいる。まあすごくお金持ちの子どももたまにいたりするから、その子のために、メーカーが義手義足の調整や、発信機、受信機の確認などにやって来る。
でも俺は気が付いた。
「面白くないんだ。そんなに難しくないコースをすんなり行ったって。山の王の爺ちゃんも、セキュ=レンもそうは言っていなかったけれど。それに、グリーンキーパーたちの心にも残らない。何かが起こり、それを解決していく事も、見ている人間の楽しみなんだ」
エンランを始めるのに、お母さんはあまり賛成しなかった。それはやっぱり不平等がどうしても起こってしまうからだ。地方の大会で、グリーンキーパーのほとんどがある人間の身内だったり、という話は、宇宙中に散らばっている。だがこれも面白いことに、上級リーグになると皆無になる。特に全宇宙大会などは、グリーンキーパーの正確な出身星域、選手との接点まで調べられるという。
「やるのなら、へこたれずに、諦めずにやることだ」
俺の本当のおじいさんがそう言った。上級リーグに上がるためには下のリーグで優勝か、上位にずっといなければいけない。
「この試合で優勝したい」
いつもその気持ちで臨むけれど、結局この試合も優勝は出来なかった。皮肉なことに、あのメーカーの義手義足の子が優勝した。最高試技賞もゴール賞も、俺より年上の、その子の独占だった。
ちょっと落ちこんで、医療星の検査に行かなければならなかった。
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