第33話 ハーナの戸惑い

「どう思う、グリーン」

「遠回りで会場の星まで行くか。それはできなくはないが、十日だろう、お前の負担も大きいし、まず散歩が出来ないぞ。森のエンラン選手で散歩が出来ないとなると致命的だ」

「だろうとは思うんだ・・・だがな・・・」

「そんな話を聞かされたら動かないわけにもいかない、か。時々そんな話は聞くが、女の子だから大変だっただろう、かな? 」

「まあ男でも女でもいい奴はいるさ。だが意思のない奴にも困ったもんだが、とにかく最初にお前に話してから総司令部に言おうと思うんだ」

「先にハーナに話した方がよくないか、ハーナがそれでもいいというなら、実行する方が良いだろう」

「そうだな、さすがグリーン、ロロを運んだだけはあるな」

「ハハハ、でもよくよく調べたら塩(キャプテンの一人)が運んだ人間も出場するらしいじゃないか。とにかく大事なのは選手の気持ちだ、早めの決断をしてもらうことだ」

「そうするよ、で、行くとなったら、意思のない皆さんが喜んで俺にお礼を言うかな? 」

「そう言う人間は自分が何を言ったかあんまり覚えていないもんだよ、うまくできている」

「これが盗聴されていたらどうする? 」

「この会話だけは風のように消えるようにヴェルガ達に頼んである、機械自体がいじくられていないように、定期的にボルト(機械ヴェルガ)にも確認してもらったりしているから。もしハーナの事が決まったら航行のスケジュール調整を航路安全局に頼むよ」

「じゃあ、即刻ハーナサイドに」


 このキャプテンサマーウインドの提案を聞くと、ハーナのチームは意見が二分した。ハーナも速攻に「行く」という決定が出来なかった。チームの全員を集め呟くようにハーナは言った。

「散歩が出来ないとなると、不十分な試技しかできない、それを冒してまで行くべきなのかしら。でも、せっかくキャプテンサマーウインドが安全な航路をわざわざ提案してくれた。あんなに怒っていたのに」

「ハーナが他の人のことをちゃんと考えていたからだろう。ハーナ、私は出場するべきだと思うよ。確かに散歩に十分な時間は取れない、それは今までの私たちの試合では全くなかったことだ。でも昔から言うだろう、大きな大会は参加することに意義があると。

でも最後はハーナが決めてくれ。君が選手なのだから」


「そう、そうよね、行くのならすぐに行かなければいけない、一分一秒無駄には出来ないわ。

みんな、行かせて、行きましょう。私行きたい、あの森で投げてみたいの、ロロとも約束したのよ、ここで試合をしようって」

「わかった!! チームハーナ!! 出動だ!!! 」

「おう!!! 」「やるぞ!!! 」

皆急いで動き出したが、総司令部と航路安全局が今度は敵に回るようなことを言いだした。

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