第17話 特別病棟
それから何日かしてまたクリーム先生がやって来た。
「ロロ、体調はいいか? 」
「うん、いいよ。どうしたの? 」
「お前に会って話がしたいという女の子がいる。ちょっとだけいいか、特別病棟なんだ」
「特別病棟・・・」
それは本当に難病の人間がいるところだった。ほとんどの人が第四宇宙病と言って、感染力は弱いけれど、治療方法が見つかっていない病気だった。
「いいけど、どうしてその子が俺に? 」
「お前が私に絵の具を塗った話を聞いて、凄く楽しそうだった。その後、私とお前がキャッチボールをしていた映像を見せたら、とっても喜んでね。回線で話す事もできるけど・・・ちょっとだけじかに会ってもらえないかな」
「わかったよ、先生」
俺は先生と一緒特別病棟に向かった。そこに行くまでに色々な消毒とかがあったので、会えたのはそれから一時間程たってからだった。
「ロロ・・・ありがとう、わざわざ来てくれて」
ガラス越しにいたのは、女の子というよりお姉さんだった。色が白くて、人形のようにきれいで、体も少し細かった。
優しく笑ってくれて
「凄いのね、ロロ。あなたはエンランの選手を目指しているの? 」
「うん、なりたいと思っているんだ。怪我をする前までは考えられなかった夢だから」
「そうね。でもほんとうにコントロールも良いのでびっくりしたわ。それに度胸もあるのね、クリーム先生に色を塗った子なんて、私も病院が長いけれど聞いたことはないわ。シールを張ったことはあったけれど、ね、クリーム先生」
「ああ、そうだね。はがれやすいシールをね」
「フフフ」「ハハハ」
それからしばらく話した。俺が計画的に色を塗ったこと。キャッチボールをしようと先生から言われたから、何日も前からボールの実をこっそり集めておいたこと。
「でも集めておいたのを数か所に分けていたんだ。そうしておいて良かった。何か所かは無くなっていたんだ。掃除の人が持って行ったのか。他の子が見つけたのかわからないけれど」
「そんなことまでしていたのか、ロロ」
「だって先生と遊ぶチャンスなんてあんまりないじゃないか」
「フフフ、ロロってリス見たいね、可愛いわ」
楽しい時間だった。それからまたお姉ちゃんの治療が始まったので、俺はその部屋を先生と一緒に出て行った。
帰り道先生には一言も何も言えなかった。そして俺意外誰もいなくなった病室に戻ると
「ありがとう、ロロ」
先生の声を聞くなり俺は先生に抱き着いていた。
「どうして・・・俺は生きているんだろう・・・どうしてあのお姉ちゃんが第四宇宙病なんだろう、あんなにきれいで頭も良くて、優しくて・・・どうして・・・どうしてなんだろう・・・・先生・・・」
「ロロ・・・お前は人のためにそれだけ泣けるのか、自分の時より泣いているじゃないか」
「俺はやっちゃいけないってことをした。でもあの人はそうじゃない、ここにいるほとんどの子がそうじゃない」
「だからみんなに見つからないように、非常階段でこっそり練習したのか、ロロ、お前はいい子だよ」
しばらくして俺は病室の棚の中から一枚のタオルを取り出した。
一度も使っていないものだ。
「先生これをあのお姉ちゃんに」
「タオル羊のものか・・・いいのか? 」
「きっと羊も喜ぶよ」
本当は別の子に、あの得点係の子に図鑑を投げたお詫びに、プレゼントしようと思っていたけれど、お姉ちゃんに渡してもらうことにした。そうして先生からうれしいことを聞いた。
「二週間後には退院だよ、ロロ」
「本当!! 」
でもこの後に最高の、クリーム先生らしいプレゼントが待っていた。
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