第三章 大会会場
第28話 一人だけの再会
「ロロ、ゆっくり休めたかい? 」
「うん、体の調子も最高。本当はすぐにでも試合したいぐらいだけど、試合はいつごろになりそう? 」
「多分、予定通り、二週間以内だろうね。今は少し雨が降っているから、それが止んである程度地面が渇いてからって感じだと思うよ」
チームの大人と話していた。プロになればたくさんの人と一つのチームを作り戦っていくことになる。時間を管理する人、練習メニューを作る人、食事、ケガ、そして義手義足のメンテナンス、ボール探知機の確認等、たくさんの人がいる。
「チームロロ」
今の所勝率は七割という驚異的な数字を叩き出している。
俺たちチームの半数が合流して、エンラン会場の星に向かった。半数はもう現地に乗り込んで、散歩を繰り返している。大会一か月前にそれは許されるけれど、その時に自然環境を変えたりすると即失格、まあ森でたまたま枝を折ったなんてことは大丈夫だけれど、昔地面にボールの誘導装置を埋め込んだ奴がいたらしいので、バードカメラは競技の時以上に大忙しだ。
どうしてこんな不正なことをするかと言うと、エンランの優勝賞金は凄く高いのだ。エンラン選手は使う機材も多いので、スポンサーが多数必要であり、会社も選手に活躍してもらうことで知名度が宇宙中で飛躍的にアップするため、契約料が発生する。それがものすごく多くの企業だから、セキュ=レンの年俸は桁違いだ。そして彼はそれを色々な方面に寄付しているからとても尊敬もされている。好きなスポーツ選手、全宇宙で一位になってどれくらいたつだろう。俺はまだ百位ぐらい、ハーナの方が遥か上だったりする。でも最近女の子で、すごく美人で草原地帯がフィールドの子が出てきている、その子にちょっと肉薄されている。
俺たちは特殊空間航路を行く船の一室を借り切って色々な話をしていた
「そう言えば・・・ハーナはどうなってるの? 」
「まだ星を出ていないのよ・・・ハーナは・・・難しいかも、ロロ」
言葉が出なかった。きっと俺のチームの人たちは「ライバルが減った」と思うだろうし、俺の心の中にもない訳ではない。でもあの時のハイタッチの感触と、お互い笑いながら話したことが、まるで昨日の事の様だった。
「暗い顔だね、ロロ。でももう一人は君のために全気象データーと起こりうるトラブルを必死で考えているそうだよ。凄いね、君と同じ年だろう? 直接会うのは何年振り? 」
「7年かな・・・入院した時だったから」
そうして特殊空間航路を抜け、その星の宇宙ステーションに着き、
すぐに星に降りた。
別荘のような家を借りて、俺たちチームは大会が終わるまで、全員ここで過ごすことになっていた。料理担当者もいて、食事の準備もしてくれる。その家に着くと、いい匂いと一人の男の子、俺と同じ年の子が駆け寄ってきた。
「ロロ!! 」
「カイウ!! 大きくなったな!! 」
「ロロだって!!! 」
回線ではいつも話しているけれど、やっぱり直接会うのは本当にうれしかった。
「どうして動物の方に進まなかったんだい? あんなに好きだったのに」
「好きな事を仕事にはしたくないんだ」
「じゃあこのことは? 」
「ハハハ、そうだね、そう言われると困る。でも今はボランティアだ、寝るところも、美味しい食事までついている。ありがとう、旅費まで出してもらって、ロロ」
「図鑑が曲がったお詫びだよ」
「今でも大切にとってあるから、ロロが投げた記念に」
「ああ、優勝者の記念だ」
もう一人の、懐かしい大切な友達に再会できた。
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