第12話 先生の夢

「寝ている顔も可愛いね」「本当に狼みたい」「静かにしよう、先生疲れているみたいだから」

部屋はしんとして、色鉛筆や、本当に小さな音、筆を水に浸す音、紙の上に走らせる音だけになった。

「グル・・・」先生のいびきのような声がすると、みんな一層静かに、絵に集中するようになった。


俺は絵の具の白が本当に無くなって、赤い絨毯も何となく仕上げてしまい

「いいか、クリーム先生は真っ白で」


と、とにかく絵は完成ということになり、暇になった。


クリーム先生は気持ちよさそうに眠っているのだが、俺は今まで先生と話したことが色々と頭の中に浮かんでいた。


「私は本当は宇宙に出て見たかったんだよ、ロロ。宇宙の色々な星を旅して、そこで治療をしながら学びたかったんだ」

「そうか・・・でもそうしたらそのきれいなクリーム色が青になっちゃうかもね」

「それもいいじゃないか、実はちょっと憧れててね」


 実はヴェルガと犬の違いの一つとして、ヴェルガの場合宇宙に出ると「毛の色が青くなる」と言われている。宇宙の医療ヴェルガは特にほとんどがそうだ。


「先生の夢か・・・・」

俺はかなえてあげたくなった。そしてそうするならばとにかくすぐに実行しなければならない。何故なら数分前に学校の先生が「ごめん、三十分ほどいいかな」と部屋を出て行ったからだ。

幸運なことに青い絵の具はパンパンにある。俺はパレットにそれを全部出して、なるべく絵の邪魔にならない角度で、先生に近づいた。


でも実は俺の夢もほんの少し混じっていたのだけれど。



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