第39話 出場する者の責任
「このルートでいいんだね、ロロ」
「うん、これがこの星の草原地帯をすべて満喫できるルートだよ。
でもその「さまよう湖」って本当に現れそうなの? そうだったら絶対そこを通るけれど」
「ロロ、やる気だね」
「がんばらないと、昨日また散歩でキングと会ってさ、言うんだよ
「他の奴らは安全策を取りすぎだ」って。でもそれは選手一人一人の攻め方だからって言ったんだけれど」
「どっちが年上なんだかわからないな、キングは。でもキングも良く考えている、本人が凄く調べ上げるんだって言っていたよ」
「ごめん・・・俺・・・」
「いいんだ、ロロはロロで、そっちの方が私たちもやりやすい」
「キングが水着になったのも、セキュ=レンとの戦いでちょっとノイローゼみたいになってしまったからって、本当なのかな? 本人には聞きけないから」
「それは本当らしいよ。とにかく、現時点で三分の一の選手が来れないことがわかった。で、有力候補は・・・」
「キング、そして俺ってことになっているんだろう、でも僅差だ。 セキュ=レンが出ないのなら、俺の優勝が見たいって思うのかも、それもちょっと嫌だけど」
「だたロロ、君にしてもキングにしても、十分に散歩をする時間があった、それなのに失投や予定表との食い違いがあると、グリーンキーパーの評価が・・・」
そう話していると、来客だという。試合直前なのに珍しいが、
「ロロ! チームリーダー! キングとキングのチームの二人が・・・」
「あ! ごめん! キングがちょっとお前に話があるって言っていたんだ。試合前の全員検査の時に話すんだろうと思っていたけれど、まさかここに来るなんて」
何かを起こしに来ているのは確かだった。
「ちゃんと言っとけよ、ロロ、その点まだ子供なんだから」
「まさかこんなに大袈裟な感じと思わないじゃないか」
「まあ、そりゃそうだ、ちょっと座らせてもらっていい? ああ飲みものとかはこっちで持ってきているから。だからお土産もなし、悪いけれど」
昔は敵に塩ならぬ、ちょっとした毒を盛る人間もいたそうだ。
キングはとても楽しそうだったが、他の二人はどうもしぶしぶついてきたという感じだった。
「キングのチームリーダーの方とルート担当者ですか、どうして? 」
この部屋には俺たちのチームのほとんどがいた。そして話をし出したのは、何だか風格のありげなキングだった。
「現時点で、セキュ=レン欠場、優勝候補のハーナは散歩が出来ないまま出場になる。山の王が復活と言っても、悪いが名誉参加者が優勝できるほど今のエンランは甘くはない。俺とお前が優勝候補と言っても頭一つも出ていない。しかもだ、何社かのスポンサーが降りたという話も聞いている、グリーンキーパーたちの中にも不満を漏らすものが多いらしい、結構大変な事態だ」
「でもそれは私たちのせいじゃない、試合が実際に始まればきっとグリーンキーパー達も変わるさ」
俺たちのチームリーダ―が言った。
「選手たちは時間が経てばたつほど、安全策を取ろうとする。だが今までの全宇宙大会の記録を見たら、やっぱり思い切ってやる人間が優勝している。失敗してもその後にスーパーショットをやれば帳消しってことなんだ。みんなそれを調べているはずなんだが、やらない、それをやろうとしているのは草原では俺たちだけだろう? 違うか? 」
「それはそうだろうね、散歩の様子からして」
「どうもセキュ=レンは山でケガをしたみたいだから、山の奴らは可哀そうにビビってしまっている。森の奴らはみんなハーナ以下だ。ハーナが出場すれば、すべてが比べられる。当のハーナは散歩をしていないから、正確なショットが出来ないだろう、でもその中でいいショットもあるだろうから、「ハーナが散歩していれば・・・」とグリーンキーパーは見るに違いない。だとしたら森の奴らも消える。残るのは・・・俺とお前になる」
「キング、全宇宙大会だよ、そんなに上手くいくかな」
「まあとにかく俺の話を聞けよ、でだ、まあ見てもらおう、俺たちのルートを」
「ルートを敵に見せるのか? 」
キングの担当者はもう観念したと言った雰囲気で紙を出した。そうそう、結構重要なことは紙に書いたりする、何等かの機器に入れると、盗まれることがあるからだ。
「これって・・・・」
「ほとんどロロ、君のものと同じだろう? 」
キングの担当者は今度は自信ありげな顔をした。
エンラン 全宇宙総合球技記念大会 @watakasann
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