第14話 家族思い

 

二週間ほど前、実はこの義手義足の実験、被験者というらしいがそれに選ばれていた。


「使い方はとても簡単なんだけれど、それが君の体にどれほど合うかわからないんだ。義手内のチップに君の動きを学んで蓄積されていくように作ってあるけれど、体に違和感、痛みとか気分が悪くなったりということがあったら、直ぐに言ってほしい」

とリハビリの先生と一緒に説明を受けた。

本物の手足の様で、本当にわからないようにできている。指紋とかは作られていないけれど、それもできるそうだ。


「本当に軽くなっていますね、以前とは比べ物にならない」

「そうでしょう、子供さんには特にいいですよ」

先生たちが話している中で、俺は不思議な感じだった。全く同じように義手の指が動く、義足も。俺からとった細胞によって動かしていると聞いたけれど、とにかくうれしかった。


「君の星は私たちの会社と同じ星域だからね、この後もできればずっとデーターを取らせてもらいたいんだよ」

「ロロ、これは幸運だよ、ここまでの義手義足は買うとしたらものすごく・・・」

「うん・・・高いだろうね」

俺は自分の家の経済状態ぐらいはわかる。そこまでお金があるわけじゃないし、兄弟たちもいる。そのことを考えたら、何だかちょっと大人びたことを言った。


「データーを取るって色々な事をした方が良いんでしょ? 」

「まあ、それはね、でも病院内だから走り回ることはできないだろう? 」

「ちょっとだけジャンプとかしてもいい? 階段で」

「ああ! それはいい・・・けど・・・とにかく君がケガをしないように。それにとにかく義手義足じゃない方との力のバランスもあるからね。言っておくけれど、この義手義足で「不死身になった」訳じゃないからね。屋上から飛び降りるなんて絶対にダメだから。これはあくまで普通の使用に耐えるくらいだよ」

「エンランは? 」

「エンランは大丈夫、学校のプールもね。山の王のように滝つぼに飛び込んだら困るけれど」

「山の王? 」

「ああ、昔の選手だから君は知らないかな、エンランの偉大な選手だよ」

その時に俺は爺さんの事よりも、義手義足に夢中になっていた。


それから俺は練習を始めた。

病院内敷地内では走ることはできないけれど、トレーニングルームでならそれができた。

「ロロ、凄く自然に走っているね、走りは早かったのかい? 」

「そこそこ、だってみんな速いんだもの」

「ああ、君の星は身体能力が高い人が多いんだよね」

「でもお母さんは全く駄目なんだ」

「ハハハ、それは人それぞれさ」

と話をしながら、大人も子供も混じって楽しくやっていた。そしてこっそり非常階段で練習するようになった。最初は普通に、それから徐々に早くして二段ぬかし、三段ぬかし。でも一つリハビリの先生から先制パンチのように注意されたことがあった。

「ロロ、この義手義足で無理をしたり、ケガをしたりしたらすぐにメーカーが取りに来てしまうからね」


「大事に扱おう、そしてちょっとずつ難しいことに挑戦していこう」


俺にしてはとても順序だてて計画を立てた。今までノートに何かを書くことなんてしなかったのに、この事の記録は詳しく取るようになった。そして階段を上ることは、かなり早くできるようになったので、今度は下りの練習を始めたのだった。



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