tr.23 逃げ上手の姫君

 起動に失敗したもののどうにか再起動シークェンスに移行したSJ-BB-1。

 ドヤ顔で再び点灯した画面を振り向いたローディームーンの表情が凍り付いた。

「――なん……じゃと……!?」


 [ 次のファイルが存在しないかまたは壊れているため、Wind●ws を起動できませんでした。 ]

 [                                        ]

 [ C\WIND●WS\SYSTEM\CONFIG                        ]

 [                                        ]

 [ オリジナルセットアップCD-ROM からWind●wsセットアップを起動してこのファイルを修復できます。 ]

 [                                        ]

 [ 修復するには、最初の画面で'R' キーを押して下さい。                ]


「――こ、こ、これはッッ!! 何じゃこりゃぁぁーーッッ!!」 

「――あーあ、だから言わんこっちゃない(´・ω・`)」

 呆れたように言うバトルラッタッター。

「こういう古い機器で起動が不安定な時は、矢鱈滅多に押したり触ったりしちゃ駄目なんで御座いますよ」

「そ、そんなこと我が知るかッッ!! 大体、我、文系だったし(´・ω・`)」

「あーもー、文系だってPCくらい使いますでしょうに。とにかくセットアップ用のCD-ROMを……」

「――あ(゚◇゚)」

「御座いましたですか?」

「い、いかん、そういう関係の荷物は確か纏めてあの部屋に……(( ;゚Д゚)))」

「あの部屋?」


<< □ |> ○ || >>


 一方、その部屋。


「コレデトドメダ!! 天国と地獄くろすあたっくぶりざーど――地獄ヘ逝クガヨイ、御姉様!!」

 ヒビキ隊員こと仮面レコーダーBlaMagブラマグを捉えた左手に高圧電撃を流しつつ、開いた右胸から超高温プラズマの奔流を、左胸から絶対零度の竜巻を放つ、あ~る・ぬ~坊。

「「ヒビキっ!!」」「ヒビキちゃんっ!!」「ヒビキパイセンっ!!」

「「「「「「ヒビキ隊員ーっ!!」」」」」」

 皆の悲痛な叫びも虚しく、命中する天国と地獄くろすあたっくぶりざーど

『うわーっ!!』

 爆発の衝撃は近くに居た他の隊員達も巻き込み、ブラズマ発火と水蒸気爆発でもうもうと黒煙と濃霧が室内を埋め尽くす。


 やがて、それらが収まると――。


「――フ、フ、フ、ハァーッハッハッハッ!! ヤッタ!! 遂に御姉様ヲ倒シタゾ!! コレデ我ラノ、御母様ノ勝利ダッッ!!」


 そこには全身が煤と水蒸気に塗れながらも勝ち誇る、あ~る・ぬ~坊の姿が――。


<< □ |> ○ || >>


「イヤじゃイヤじゃ、我は行きとうないー!!」

「そう言われましてもローディムーン様、起動ディスクが無いとどうにもなりませんですよ?」

「だってあっちには日々希が居るー!! 怖い怖い怖いー!!」

「ったく、そんなに怖いんならいちいち張り合ったり喧嘩売らなけりゃ宜しいものを(´・ω・`)」

「だってムカつくんじゃー!! 昔っからどいつもこいつも日々希ばっかり――」

「――はぁ、拗らせるのもここまで来ればいっそ感心致しますな」


 溜息を吐きながらも泣き喚いて止めようとする主人ローディムーンを引き摺ったまま、へ微速前身を続けるバトルラッタッター。まぁ全速で走らないだけの気遣いはあるようだ。


「そもそもあちらには、ぬ~坊様がいらっしゃるのでは? ならば問題はありますまい」

「――はッッ!! そうじゃったッッ!! 我の可愛い娘が既に奴らを始末しておる筈ッッ!! ははッ、ははッ、はーッはッはッはーーッッ!!」


 一転、高らかに嗤い出すローディムーン。どうもかなり情緒不安定のようだ。

「むしろメンヘラ気味で御座いますな」

 しれっと主人をディスる従僕。てかお前、地の文に返事するなし。

「そうと決まれば行くぞッッ!! ほれ、キリキリ走らぬかッッ!!」

 嬉々としてバトルラッタッターに跨がり横っ腹を蹴飛ばすローディムーン。

 蹴飛ばされる度に「ぁふぅん」とか「ぉうふ」とか悶えていた変態スクーターバトルラッタッターだが、

「――ふぅ。しかし、姫がそう簡単に倒されるものでしょうかねぇ――?」

 ぼそっと一言呟いたそれは哄笑するローディムーンの耳には届かなかった。


<< □ |> ○ || >>


「あ~る・ぬ~坊!! ぬ~坊は居るかえ!?」


 勢い良く部屋に飛び込んできたその姿を認めるや、あ~る・ぬ~坊はその無機質な顔を一転、満面喜色に染める。


「御母様!! オ喜ビ下サイ!! 我は遂ニ倒シマシタ!! 褒メテ褒メテー!!」

「なぬ、まことか――!! 良うやった、流石は我が娘!! おーよしよし!!」

「御母様ー!!」


 と抱き合うローディムーンとあ~る・ぬ~坊を冷めた目で見るバトルラッタッター。


「――ここだけ見てると微笑ましいんですがねぇ……それよりローディムーン様、起動ディスクを――」

「お、そうじゃったッッ!! さて、確かあっちの不要品は向こうの収納スペース……に……」

「――ローディムーン様?」


 愕然として口をばくばくさせて固まるローディムーンを認めて首を傾げるバトルラッタッター。器用なスクーターである。


「あ……あ……あ……」


 それもむべなるかな、室内は先程までの戦闘――というか殆どあ~る・ぬ~坊の攻撃――で、壁どころか天井も床面も殆ど燃え崩れてしまっている。

 当然、収納スペースなんて無事であろう筈も無く――。


「のわーッッ!! 何ということじゃぁーーッッ!! 灰も残さず燃えてしもうておるーーッッ!!」

 怒りのあまりガシガシと髪を掻き毟るローディムーン。


「エヘヘ、コレネ、全~部、我ガヤッタンダヨ? 流石ハ御母様の下サッタ超兵器、御母様ニ楯突ク奴ラナンテ、チョチョイノチョーイダッタヨ♪」

「このすかぽんたーん!!」

「エッ!?」


 一転、怒髪天を突き、げしげしと愛娘(機械人形オートマタ)を足蹴にする御母様ローディムーン


「ちょ、ちょっとローディムーン様、お怒りは解りますがそのなさりようはあんまりかと――」

「えーい煩い五月蠅い!! これではッッ!! BB-1がッッ!! 起動出来ぬでは!! ないかッッ!!」

「アウアウアウ……御母様、ドウシテ怒ッテルノ!?」

「こーのおバカーッッ!! ちったぁ加減というモノをせぬかぁーーッッ!! お陰で……起動ディスクが……うぅっ……ひっく……ぐすっ……」


 自分は愛娘(機械人形オートマタ)にDVかましつつ被害者面で泣き始めたローディムーン。


「――そもそも、こんなとこに置いてたのが原因なんじゃないですかねぇ(´・ω・`)」

 最早呆れ返って母娘ドツキ漫才を放置しているバトルラッタッター。


 とうとう蹴り疲れて、またも抱き合っておんおんと泣き始めたローディムーンとあ~る・ぬ~坊。なんというか、こいつら面倒くせぇ。


 そこへ、後ろから近づく長身の人影。

 不意に肩を叩かれたローディムーンはビクッとして恐る恐る後ろを振り向く。


「オヤオヤ、こんなところで泣いてどうしたのです、可愛いお嬢さん方?」


 普段言われ慣れていないのか、「可愛い」にポッと頬を赤らめるローディムーン。


「私どもの巨大コンピュータが起動出来なくて困っておりますの」


 何やら口調まで別人にwww


「起動でぃすくヲ我ガ焼却シテシマッテ……(´・ω・`)」


 こちらまでえらくしおらしいあ~る・ぬ~坊。


「おぉ、それは大層お困りのことでせう。どれ、私に見せて御覧なさい。これでも機械には詳しいと自負しておりますので」

「まぁ、なんて親切なお方でしょう!! どうか宜しくお願い致します!!」


 一連の遣り取りをげんなりしながら見ていたバトルラッタッターだが、ローディムーンにこっそりと脇腹を蹴られ、慌てて走り出す。


「――はて、しかし、今の親切なお方、とごぞでお見かけしたような――?」



<< □ |> ○ || >>


「――ふむふむ、成る程、こいつぁちと厄介ですなぁ」

「まぁ、それは一体どういう?」

「機械自体が古いというのもありますが――恐らく起動領域ブートエリア壊れてクラッシュしておりますな」

「ソレ、直ル……ノ?」

「まぁ、幸い電源は入ります。なので外からこの端末を繋いでちょいちょいと――」

「まぁ、まるで魔法のよう!!」

「ははは、なーに、大した事ではありませんよ」

「師匠ト呼バセテ下サイ!!」

「いやーはっは、照れますなぁ。それはそうと、最後にここをこうすれば――」


 通りすがりのがSJ-BB-1に接続した小型端末のキーをポチッとやると、本体のメインディスプレイが一瞬黄色く輝き、各所のランプが忙しなく明滅を始めた。

 それを心配げに見守っていたローディムーンとあ~る・ぬ~坊の表情が歓喜に輝く。


「オ、御母様――!!」

「うむ、ふふふふふ、こ、これで人類は我らが支配下となるッッ!!」

「我ラガノ勝利デスネ!!」

「左様、これで漸く日々希に勝利することが出来――」


『――ちょーっと待ったぁーっ!!』


 勝利を確信し哄笑を始めたローディムーンの後ろから響き渡る声、それは――!!


<< □ |> ○ || >>


「どーしよーどーしよー!! 私たち全滅!?」

「今回ってアタシら全然出番ねーし☆」

「それな。作者には断固抗議」

「それにしても、さっきから出てる"親切なお方"って誰なのです?」

「ゴスゴスは美月ちゃん以外全滅した筈なんだけど~~」

「さらっと恐ろしいこと言うてはるなぁ(^^;」

「なんとなくバレバレな気もせんではないが……」

「それも含めて、次回、遂にクライマックス!! ――でしょうか?」

『(作者が作者だけにそう素直に行くのかどうか……)』


 次回、『みつき様は怒らせたい?』仏恥義るゼ!!


[L] ||||||||||||||||||||||||||

-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB

[R] |||||||||||||||||||||||


 今回の教訓:パソコンの調子が悪いときには矢鱈滅多に余計なことはしちゃ駄目だぞ!! 俺との約束だ!! (誰?

 ほんっと、起動不可になったPCの復旧って大変なんすからもう(´・ω・`)

 今のノートPCで1回、前のノートは2回、デスクトップも2回ほどHDDを入れ替えましたよ……_(┐「ε:)_~☆

 バックアップはまめに取りましょう……替えが効かない自作データなら尚更。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る