Bonus.3『さよなら私のイチヨン』
Bonus.3 - tr.1『さよなら私のイチヨン』 (前編)
♪さーいーたー、さーいーたー、いーちよんのはーなーがー。
♪なーらんだー、なーらんだー、赤、白、茶色ー。
♪ピンクにミント、青、黒、金――。
……などとイミフな鼻歌を歌いつつ上機嫌で部室に入ってきた背高のっぽの天パが一人。
言うまでも無いが、我らが
彼は終始ご機嫌な様子で部室中央の大机に掛けると、背負ったナップザックの中身をそこに広げ始める。
中から出てきたのは全て同じ形、同じ見た目の細長い箱。一部が透明の窓になっており、中が見える。
よくよく見るに、箱はどれも白いが、内容物の色が微妙に違っており、なかなかカラフルではある。
並ぶも並んだり、全部で8個、全て色が違う。
先程の怪しげな鼻歌のとおり、赤、青、白、黒、金、茶、ピンク、ミントの計8色。
原色、モノトーン、メタリック、パステルとまぁ豊富な色味である。
彼はそれらをずらりと並べて暫し悦に入っていたが――。
「あれ? 雨音くん、帰ったんじゃなかったの?」
不意に背後から掛けられた声に夢から覚めたようにびくっと腰を浮かせかける。
後ろではその声の主、
「――あぁ、用が済んだんで、戻ってきた」
「用って?」
「これ」
くいっと親指で大机に並べた8個の箱を指し示す。
「これって――うわぁ、可愛いー!!」
「あー……そういやパステル系とかもあったな」
「これって、イヤホンだよね?」
「その通り」
「で、何でまたこんなに沢山あるの?」
「ふっふっふ、良い質問だな小林君」
「小林君って誰!?」
軽いジョークが盛大に滑った響一郎は一瞬固まったが、すぐさま再起動すると、
「在庫処分で半額になっているという情報を聞きつけて買いに行ったのだー!!」
「は、半額!? それは安いけど……こんなに買って大丈夫なの?」
「大したこたぁ無いぜ。1本当たり500円(税別)だしw」
「それはかなり安いよね……8本だから……4,000円(税別)……いやでも……」
流石に一般庶民な金欠気味JKとしてそこまで出すのもどうかと密かに煩悶する真貴を余所に、
「もうここまでのクォリティのは先々出ない気がするからな。例えば――」
蕩々とドヤ顔で詳細な説明を始める響一郎。
「見ろ、このガッチリしたL字型プラグに太いケーブル。本体との接続部もカバーされて断線対策はバッチリだ!!」
アアソウデスカー、と
「そしてこの平たいハウジングで寝ながら聴いても外れにくく、"寝ホン"にもぴったり!!」
あー、それはちょっといいかも……。
「更に、このファンシーな見た目に騙されがちだが、この独特なハウジングのお陰で、このクラスとしては低域に膨らみのある独特のウォーム系サウンドがだな」
うん、単語が難しくて何言ってるのか良く解んないよ。
「これぞ正に"Poorman's Woodcone"、このメーカーが誇る木製振動板シリーズの末弟たるに相応しい――」
うわー、もう完全に理解の埒外なこと言ってる……(´・ω・`)
「――とは言え」
一転、ふと声を落とし、
「今までお世話になってきた
うっ、とその表情に釘付けになる。
「双璧とも称えられたもう片方の雄、A1000とは好対照なサウンドメイクだっただけに、尚更――」
こ、ここまでヲタ話繰り広げてからその表情はズルい、と真貴がさっきとは違う意味で煩悶していると――。
「ほぅ、それならば四の五の言う前に実際に聴いてみるのが一番だな」
ひょい、と赤を手に取る真紅。
「おー、こりゃまた可愛えー。バえる系だねー!!」
ひょい、とピンクを手に取る三沙織。
「デュフフフ、ビクターの技術は世界イチーぃ!!」
ひょい、と黒を手に取るヴィー。
「あらあら~~みんな駄目よ~~。え? いいの~~? それじゃ~~」
ひょい、と金色を手に取る日々希。
「
ひょい、と青を手に取るソニア。
「あら、真貴さん、
ひょい、とミントを手に取り真貴に渡すソニア。
「では、これは先生の分をキープで」
ひょい、と白を手に取る真紅。
斯くして、響一郎の許には茶色のみが残された。(-人-)チーン
[L] ||||||||||||||||||||||||||
-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB
[R] |||||||||||||||||||||||
某chの低価格イヤホン掲示板で「FX14ディスコンだってよ」との報に衝撃を受けて思わず書いてしまいました。
響一郎の評はほぼ私が某chに書き込んだ内容そのものです(表現はがらっと変えましたが)
地元の大型家電店でも案の定、投げ売りになっており、私は赤・青・ピンク・ミントを確保。茶は元々持っており、寝ホン専用機となっております。
コストの問題もありましょうが、良質な低価格機が減るのはオーヲタの端くれ(ホントに端っこの方ですが)としては忸怩たるモノが(´・ω・`)。
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