Bonus.2 - tr.2『接種しちゃうぞ!?』
順番待ちの間、下を向いてブツブツと独りごちていた響一郎だったが、名前を呼ばれるとビクッと顔を上げ、やがてロボットの様なぎこちない足取りで受付に向かっていった。
「だ、大丈夫でしょうか、雨音くん……」
「大の男が注射くらいで何を怖がっているのかしらねぇ、全く」
「まぁ~~一度やってしまえば慣れるわよ~~」
「ほらほらヴィー、ミサ、待ってる間に問診票は書いてしまっておけ」
完全に引率の先生か保護者と化している先輩トリオ。
真紅に言われて封筒から問診票を出して記入を始めた2年生コンビであったが――
「あ、ヤベ」
ヴィーが漏らした一言にソニアがキッとばかりに振り返る。
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「どうしましたの、ヴィー?」
「……いや、その、受診券ガー……無い?」
コテンと首を傾けて人差し指を立てる。あざとい。
「……な・ん・で・すっ・てぇ~~!!」
あ、ヤベと再度呟いたヴィーだったが時既に遅し。
ソニアの怒りは爆発寸前。何処の時空戦士だw
「…持って行く物はきちんと確認するように申しましたわね?」
「…言った」「言ったね☆」「言ったな」「そうね~~」
「…で、いつ、確認しましたの?」
「…えーと…封筒来て一度開けてすぐ戻したし…んじゃ大丈夫か……って?」
「…つ・ま・り・?」
ソニアの表情は悪役令嬢などすっ飛ばして、もう修羅のソレである。
真紅と日々希は慣れているのか平然としているが、三沙織は冷や汗を滲ませ、真貴は既に涙目でガクブル状態。
「結局、確認してないw」
無表情でテヘペロするヴィーだが、そのあざとさが通じるソニアではなく。
「だから言ったじゃないの!!」
その怒り狂う様はさながら羅刹女の如く。
「だってだってなんだモン(´・ω・`)」
しつこくあざといムーヴを続けるヴィー。
「ぐすぐず言っても始まらないね(-_-;」
呆れ顔で真紅が仲裁に入る。
「取り敢えず記憶を辿れ、ヴィー。家か? 教室か? 部室か?」
「それが判りゃ苦労はないぜベイベー」
「この後に及んで
絶賛怒り心頭のソニア。
真貴は一人でおろおろしているが、当事者のヴィーは意外に平然としているw
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一方、響一郎は。
受付で額に翳してピッと検温し問診票に体温を記入、手指をアルコール消毒すると相変わらず死刑囚のような面持ちで会場となる講堂へ入る。
そこで再度、接種待ちの椅子に座り、順番を待った。椅子の間は1席分ほど空いており、三密対策はなされているようだ。
彼らの横にはパーティションで仕切られたスペースがあり、そこで接種を行うのだろう。
彼が待つ間にも先に待っていた者が一人、また一人と呼ばれて中へ入っていく。
そして空いた席を係の人が次々に消毒していく。某ランドのように滑らかな動きを見るに、リハはバッチリの様子。そもそもこの接種自体が2回目なので、スタッフ諸氏もそれなりに慣れているのかも知れないが。
「次の方ーお入り下さーい」
パーティションの向こうから響くどこかおっとりした声は、響一郎にはさながら閻魔大王の死刑判決にも聞こえていた。
[L] ||||||||||||||||||||||||||
-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB
[R] |||||||||||||||||||||||
この話は事実を基にしたフィクションです。ですったらですのです。
決して作者は響一郎のように注射怖い人ではありません。無いったら無いんだからねっ!!
「…苦手ではあるけどな(ボソッ」これヴィーよ、余計なことは言うでない。
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