tr.04 焔の運命(さだめ)ぢゃ

「オトウトヨー!!」


 ちゅどーん!!


 一瞬の間を置き、謎の言葉を残し爆散する怪人。


「意外とあっけなかったですわね」

「うむ。攻撃力に特化した分、防御力がイマイチだったのか?」

「――ちょい待ち、パイセン方。あっちから何か来るよ☆」

「独りだぞアレ。侵略帝国じゃ無いっぽい」

「――イエロー?」


 やはり様子がおかしいイエローに声を掛けたグリーンだが、彼女の尋常で無い様子に言葉を失う。

 キャリブイエロー――ヒビキ隊員はまるで悪夢か亡霊でも見たように蒼白になり、その身は恐怖に戦慄していた。


「……そんな、まさか……貴女あなたはもう死んだ筈よ……」


 お富さん? と雨音指令が遠くで呟いていたが、その声は風に吹き消された。


<< □ |> ○ || >>


 ザッ、ザッ、ザッ。


 先程の虎怪人が来た方向から独りゆっくりと歩いて来たのは、小柄で細身の少女だった。

 年の頃はキャリブレンジャーの面々と同じくらい――平たく言えばJKであろうか。

 黒のインナーの上に白銀地に濃緑色の差し色が配されたフリルだらけの装飾過多な、所謂ゴスロリ衣装を纏っている。 

 ショートボブにした黒髪に大きな丸眼鏡を掛けた彼女は見た目だけならそれなりの美少女と言ってもいいだろう。

 しかし――その表情――この世の全て絶望したかのような冷え切った双眸の月夜のような昏い輝きが、彼女をさながら亡霊か死神のように見せていた。


「要約すると死神JK」

「ブラック、それ要約し過ぎ(^^;」


 ザッ、ザッ、ザッ。


 その間にも彼女は歩みを進め、やがてはイエローの前でぴたりと止まると、にいっと悪魔的な笑みを向けた。


「お久しぶりね、日々希ひびき

美月みづきちゃん……」

「我がタイガーゴスを一撃とは恐れ入ったわ。そこの派手な連中は貴女あなたの手下かしら?」

「手下とは無礼千万な、このゴスロリ女(--#」

「あら、飼い犬の躾がなってないわね、日々希?」

「……美月ちゃん……どうして……」

「不思議よね~? それはそうよね。だって私は貴女あなたが殺した筈だもの、ねぇ?」

「……」


 殺した、という一言にその場が凍り付く。

 皆が、信じられない、という顔で二人をみているが、肝心のヒビキは否定もせず黙っている。


「私、とても悲しかったわ~」

 ヒビキを嬲るかのように言葉を続ける美月。

「同じ日に生まれて姉妹のように育ってきたのに」

 ヒビキの顔が次第に蒼白になっていく。

「そんな貴女あなたに裏切られるなんて、ねぇ?」

 ヒビキを下から見上げて哀しげに眉を寄せる。

「――違うの、美月ちゃん、私は――!!」

 抑えた感情を振り絞るように何か言おうとしたヒビキに、一歩下がった美月は、

貴女あなたが今更何を言おうが、私が裏切られ殺された過去は変わらないッ!!」

 ビシッ!!と指を突き付け、断罪するように言葉を叩き付ける。

「しかし私は地獄から甦ったッ!! 今度は私が貴様を殺す番だッ、ヒビキッ!!」

 今まで猫を被っていたのが一転、虎に化けたかの如く狂気も顕わに叫ぶ美月。


「――変、身――」

 まるでカフェのメイドさんのように胸の前で両手でハートマークを作ると、それを腰に移動し右手のみ180度捻るように回転させる。

 突如として腰部に装着された白銀のベルトから暗緑色の光が迸り、一瞬、視界が奪われる。

 それが収まり、視界が戻ったとき――


 そこには全身を白銀の鎧に包まれたかのような禍々しい姿があった。

「我は秘密結社ゴスゴスの次期基準王、ローディムーン」

「美月ちゃん……」

「人であった頃の名など疾うに捨てたッ!! 今の我はローディムーンだッ!!」

「お願い……もう、やめて……」

「ならば貴様のその命を以て贖うがいいッ!!」

 腰の剣を抜き放ち、ヒビキに斬りかかる美月――否、ローディムーン。

 反撃も防御もせず、人形のように立ち尽くしているヒビキ。

「イエローっ!!」

「ヒビキちゃーんっ!!」


 キィンッッ!! ビィンッッ!!

「――おっと、そう簡単にらせる訳にはいかんな」

「そうですわ、貴女あなたが何を言おうと、わたくし達はヒビキを信じますわ」

 ヒビキの面前に迫る凶刃をレッドが刀で受け、それを持つ腕にはブルーの鞭が巻き付いている。

「シンクちゃん、ソニアちゃん……」

「はッッ!! 麗しきかな友情、されど愚かなり!!」

 一瞬、ローディムーンが体を震わせたと思うや、ブルーとレッドは弾き飛ばされていた。

 入れ替わるように前に出たグリーン、ピンク、ブラックだが、彼女らも反撃する間もあらばこそ、瞬く間もなく叩き伏せられる。


「くっ……」

「な、なんて強さ……」

「動きが見えませんでした……」

「勝てる気がしないよ……(´・ω・`)」

「初登場補正には勝てん……ぐぬぬ……」


「さぁ日々希、貴様も此奴らと共に死ぬが良い――せめてもの情けだ、苦しむ間もなく殺してやる」

「みんな……」


 再び剣を振りかぶり、ヒビキを一刀両断にせんと振り下ろすローディムーン。

 それを哀しげに見つめて、仲間達を視界の端に捉えたヒビキは、何事かを決意したようにその細い眼を見開いた。


「――変身」


<< □ |> ○ || >>


「司令、先程からレーダーと生体感知器に妙な反応が――」

「む!? この大きさは――六花りっかくん、至急、吉田博士に連絡を」


 次回、『Girls of Destiny』仏恥義るゼ!!


[L] ||||||||||||||||||||||||||

-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB

[R] |||||||||||||||||||||||


 やはり名敵役の登場は燃えますね~!!

 月影さんはライダー史上、いや特撮・アニメ史上に残る名敵役だと思います。

 これに匹敵するのは昭和メカゴジラとハカイダーとシャアくらい?

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