tr.20 ヒビキちゃんに怒られる!!

「――そう。美月ちゃん、実は今、私ね――」

「な、何だッッ!? 今更命乞いかッッ!?」


「――とても、怒っているのよ?」


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 ヒビキ隊員――仮面レコーダーBlaMagブラマグのその言葉を聞いた刹那、ローディムーンの顔から一斉に血の気が引いた。

 そして、次の瞬間の行動もまた電光石火の如く。


「――ひ、ひぃぃぃっっっっ!!!」


 逃げた。


「せ、戦闘員の皆さーんっ!!」


 まだかなりの数が残っていた戦闘員の皆さんを壁とし、追撃を阻むこともしっかり忘れていない。


「あ、後は任せたッ!! 我が為に散れッ、999人の壁ッ!!」


 そして仮面レコーダーBlaMagの前に立ちはだかる999人の肉壁。


「――しょうがないわね~~」


 やれやれ、という顔で小さく溜息を吐いて、ヒビキは叫んだ。


「バトルラッタッター!!」


 その声に応えるかの如く、何処からともなく走ってくるパステルグリーンの弾丸。

 後ろの方で「らったった~♪らったった~♪ら~ったった~」と音がしているが、気のせいだろうか。


「――只今参上致しました、姫!!」


 それはゴスゴス暗黒科学の粋を集めた生体AI搭載の戦闘バイクであった!!


「――てかさぁ、あれって……」

「バッタの顔が付いたスクーターにしか見えない件」


「な、何を失礼なっ!! わたくしバトルラッタッターはゴスゴス基準王の乗機となるべく産み出された最強の戦闘スクーターですぞっ!!」

「いいから~~、早く美月ちゃんを追いかけるわよ~~」

「はっ、姫!!」


 逃げながらもそれを見ていたローディームーンの眼がギラリと光る。


「――しめた!! ――我が許へ参れ、ラッタッター!!」


 その声がした瞬間、バトルラッタッターの赤い眼が緑に輝く。


「――ん!? あれ!? くぁwせdrftgyふじこlp!?」


 その眼は赤と緑の間を行き来しつつ点滅し、やがて緑に固定されると、BlaMagを乗せずに走り出してしまった。


「あれ、勝手に走って行っちゃいましたよ?」

「どうしたんやろか?」


「ちょっと~~、ラッタッター~~、戻ってらっしゃ~~い」

「も、申し訳御座いません、姫!! か、躰が勝手に……!!」


 そう釈明しながらバトルラッタッターが向かう先は――


「はーっはっはっは!! ぬかったなブラマグサン、バトルラッタッターはゴスゴスの産みし物、即ち我が意のままに操るも可能!!」

「ちょっと~~、バトルラッタッター~~」

「そう言われましてもー!! ゴスゴス純正に近いローディムーン様の方が脳波の干渉が強いんですよー!! こればっかりはー!!」

「頑張って~~……あら~~行っちゃった~~」

「どわーっはっはっは!! ではさらばだブラマグサン!! オラこのポンコツ、キリキリ走れッッ!!」


 最後っ屁とばかりにドヤ顔でバトルラッタッターを小突きながら走り去るローディムーン。やがてそれは空間の裂け目に消えた。


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「困ったわね~~」


 あまり困った様子に見えないヒビキ隊員こと仮面レコーダーBlaMagブラマグ

 そこに迫るゴスゴス戦闘員の皆さん総勢999人の肉壁!!


「いかん、ヒビキっ!!」

「ヒビキっ、今行きますわっ!!」


「しょうがないわね~~」

 言うなり今度は赤く輝く仮面レコーダーBlaMagブラマグ

 そして、彼女に迫る999人の肉壁は――。


「セレクトポジション、BlaMagユーディトゥ~~」


 一瞬で星になった。


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「――は?」

「――なん……だと……?」


 駆け付けようとした体勢で固まってしまうソニア隊員とシンク隊員。

 それも無理からぬ話で。

 先程、掛け声と共に赤く輝いたヒビキ隊員ことBlaMagユーディトゥに瞬殺されたのであった。

 遠くの方で999個のお星様が輝いては消えている。


 当のヒビキ隊員――BlaMagユーディトゥは先程とはまた打って変わり、活力の黄金と憤怒の赤に彩られている。


「……あー、ひ、ヒビキ、大体察しは付くが、その姿は?」

「これはね~~、さっきのと違って身体防御と戦闘力に特化した姿なの~~。私の怒りが頂点に達しないとなれないからちょっと不便なんだけど~~」

「……ってことは(; ・`д・´)ゴクリ」

「あぁ見えてブチ切れてんじゃね?……(( ;゚Д゚)))」

「ヒビキちゃんブチ切れさせるとか……アイツら完全に詰んだなコレ」

「それはそうとして」

 六花秘書が冷静に疑問を呈する。

「敵が逃げた先――恐らく次元の裂け目と思われますが、追いかける手段がありませんが――」

『(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー!! (`・д´・ ;)』


 今更のように驚愕する一同であるが、本当に今更である。ただ、肝心のヒビキ隊員がちっとも慌てた様子がないのだが。


「――あぁ、それなら~~」


 傍目にはとてもブチ切れているとは思えないような至って暢気な様子で告げる。


「今から呼ぶから~~」


『は!?』


 今度こそ絶句する一同であった。


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「エイドロン~~!!」


 仮面レコーダーBlaMagブラマグの叫びに応じてまたもや走り来るコーラルピンクの影。

 彼女の前でぴたりと急停車したそれは、スポーツセダン風の自動車だった。

 ただ、その外観はと言うと――


「――ぅわぉ(( ;゚Д゚)))」

「……これはまた、なんと言うか……(^^;」

「こ、個性的なデザイン……ですわねぇ」


 彼女がエイドロンと呼んだその自動車――ボディの四隅にタイヤらしきものがあるので自動車と思われるが――は、コーラルピンクのボディカラーはまだしも、全体が刺々しい突起物に覆われた、なんともド派手な外観を呈している。半世紀ばかり前のコンセプトカーと言えばそう見えなくも無いが、なんというか「ぼくのかんがえたさいきょうのカッコイイじどうしゃ」感が半端無い(^^;


「この"エイドロン"はね~~、水素ロータリー核融合エンジンで~~次元の裂け目を突破するスピードが出せるの~~」

「あ、あのー、ヒビキ隊員、これもゴスゴスの……?」

「あ、これは違うのよ~~。前に言ったココム帝国を滅ぼした時に~~、倉庫の奥に仕舞ってあったの~~」

「は!?」

「だから~~これなら~~美月ちゃんの脳波干渉も受け付けないわ~~」

「いや、ちょっと待てヒビキ」

「逆に大丈夫なのかソレ?」

「大丈夫よ~~持ち出すときに~~ユーザー登録してあるから~~」

「はぃ!?」

「そんなんでいいんですの!?」

「大丈夫よ~~DNA登録と掌紋と瞳紋と声紋と顔認証のハイブリッドだから~~」

「うーん……なら、良い……のか?」


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「それじゃ~~、マキちゃんたちは~~ちゃんと後を付いてきてね~~」

「はーい!!」

「なんちゅうか、遠足にでも行くような感じやなぁ(^^;」

「ははは、確かになぁ」

「言わないで由布子、考えると頭が痛くなるわ」


 エイドロンは次元の裂け目を突破できるのだが、問題は自分の車体より極端に大きな"裂け目"を造れないことで。

 そのため、巨大ロボの皆さんはお留守番、マキ隊員たちのゴッタイガーは各ヴィークルに分離。

 そして元々が巨大なライデーンのヴィー隊員とギャオタイガーのミサ隊員は、ギャオタイガーの脚部から分離したトラック型ヴィークルのサニィとダッツンに搭乗。

 総勢8台のヴィークルがヒビキ隊員のエイドロンを先頭にエンジンを噴かしている。


「なんか旧車會みたいなノリだな」

「それなw」

「旧車……なんですの?」

 先頭のエイドロンの中では後部座席のソニア隊員とシンク隊員、そして強引に助手席に乗り込んだ雨音指令が車内を興味深そうに見回している。


「それじゃ~~皆さん~~」

 エンジンの回転計がレッドゾーンまで振り切る!!

「行きま~~す!!」


 その瞬間、8台のヴィークルは空間の裂け目に消えた!!

 後にはただ、その轍の跡が残り火と共に地に刻まれているのみ。

 彼女たちの戦いはこれからだ!!


 ―― 完 ――


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「いや、終わってない終わってない(^^;」

「いくら収拾が付かなくなったからって勝手に打ち切るなや作者(--#」

「坂を駆け上がって行くヒビキ隊員の後ろ姿が――」

「そのフラグやめいw」


 次回、『Project B.B.』チミは、生き延びることができるかな?


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-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB

[R] |||||||||||||||||||||||


 お正月映画の筈が春休みは疎かGWまで突破してしまいました……なんてこったいorz


 エイドロンは元ネタのRX-7に倣いRX-8ベースという設定です。だから観音開きの後部座席用ドアも装備。

 元ネタ(ライドロン)の初見時のインパクトはジャングラー(『仮面ライダーアマゾン』)やライジンゴー(『イナズマン/F』)にも劣らぬものがありましたな。

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