tr.21 Project B.B.

♪バイアスフィットをスイッチオン!!

 バトルラッタッター、エイドロン!!

 走る走る走る、仮面レコーダーBlaMag!!

 悪のゴスゴス、迫るココム、リバースゲインで一砕き!!


<< □ |> ○ || >>


 エイドロンの車内スピーカーからはなんともノリノリなヒーローソングが流れている。

 音源は何故か雨音指令のポケットに入っていたカセットテープなのだが、何故なにゆえ、異世界の侵略者のマシンにこんな機能がついているのかは謎である。


「なんかこういう電装品は地球製がコスパいいとか言ってたような~~」

「そういやなんかパネルにCar○zzeriaとか書いてあるな……」

「安心し給え諸君、このテープは耐熱能力特化型のマクセルが誇るカーステ専用テープ、Metal-GPXだ!! 異世界でもバッチコーイ!!」

「誰もそんなことは心配して居りませんわよ、司令」


 呆れ顔のソニア隊員を乗せて亜空間を突き進むエイドロンと旧車會……もといヴィークル軍団。

 やがて、いつ果てるとも知れぬ真っ暗な空間の先に、一筋の光が見えて来た――。


<< □ |> ○ || >>


「――はッ、はッ、はッ――い、急げ急げ急げこのポンコツ!! 奴が、ヒピキが、来るッッ!!」


 必死の形相で座乗したバトルラッタッターの横腹を蹴りつけるローディムーン。

 その都度バトルラッタッターは「おぅふ」だの「ぁふん」だの妙な声を上げているが、調教済みなのかこいつ!?


「――奴に追い付かれる前に、アレを、アレを目覚めさせねば――」


 やがて、ローディムーンを乗せたバトルラッタッターは亜空間を突破した。


<< □ |> ○ || >>


「――ここが?」

「そうね~~ゴスゴスの本拠地跡~~の筈なんだけど~~」

「それにしてはまた、何もありませんわねぇ」

「更地になる直前の廃工場跡って感じだなこりゃw」


 一方、こちらも亜空間を突破してかつてのゴスゴス本拠の跡地に降り立ったヒビキ達御一行。

 追い付いてきたゴッタイガーチームやヴィー隊員・ミサ隊員は物珍しげにあちこち見回している。


「――ん~~?」

 記憶を辿るように虚空を見上げて歩き出すヒビキ隊員に慌てて付いていく一同。

「――確か、美月ちゃんの培養槽はこっちにあった筈だから~~」

 次元の狭間に揺蕩う何もない廃墟を奥へと進む。


「――しかし、ヒビキ、追い付いたとして彼女をどうするつもりなのだ?」

「え? それは~~」

わたくし達としても敵とは言え、ヒビキの知り合いを流石にその――アレするのは躊躇われますし――」

「――おじさまとおばさまが心配してるから~~」

「は?」

「そろそろお家に帰った方が良いと思うのよ~~」

「へ?」

「流石に丸2年留年しっぱなしだし~~」

「……ふ、ふふふ……はぁーっはっはっは!!」

「ちょ、ちょっとシンク、どうしましたのいきなり!?」

「――あぁすまん、安心したよ。やはりヒビキはヒビキだ」

「――ふふ、それもそうですわね。細かいことは彼女をとっ捕まえてから考えましょう」

「全くだ。明日は明日の風が吹く――ならば今日は今日できることを為すのみ」

「ソニアちゃん、シンクちゃん……」


 やがて、そこだけが薄く明かりの点いた一角に到着する一行。鬼が出るか蛇が出るか――?


<< □ |> ○ || >>


「あ、あった、これだッ!!」


 ゴスゴス廃墟の最奥部に辿り着いたローディムーンは、大慌てで埃を被ったパネルの計器類を操作する。


「ローディムーン様、ここは一体? わたくしめのデータバンクにも御座いませんが?」

「喧しいッ!! 気が散るッ!! 黙っておれッ!!」


 ローディムーンにまたも横っ腹を蹴飛ばされ「ぁふん」と悶える変態スクーターバトルラッタッター


「ふふふ……今に目にもの見せてくれる……コレが目覚めた暁には如何な貴様であろうと……」


 鬼気迫る表情で計器を操るローディムーンは、次第に復讐の歓喜に震え恍惚にその頬を上気させていった――。


<< □ |> ○ || >>


「――あら~~??」

「どうした、ヒビキ?」

「おかしいわね~~?」

「何がですの?」

「これが多分、美月ちゃんの回復に使われた培養槽だと思うんだけど~~」

「まぁ、当然というか空っぽだな」

「それにしては~~周りのスペアパーツが空っぽなのよ~~」

「それは、彼女の修理?に使ったからではありませんの?」

「それにしても根こそぎ無くなってるなんて~~不自然なのよね~~」

「ふむ――何か別の目的があって使われている……のか?」


 一同が空っぽの培養槽と部品収納庫を前に議論をしていると、不意に足音が聞こえてくる。


 ガチャリ、ガチャリ……。


 その特徴的な音に、すわローディムーンかと身構えるが、暗くてよく見えないそのシルエットは彼女よりもやや背が高く細身に見える。

 新手のゴスゴス怪人か!?と訝る皆が眼中に無いかのようにヒビキを睨み付けた三白眼は、ビシィッッッ!!とばかりに妙な形に指を折った掌を突きつけて宣った。

「御姉様、貴女アナタハ堕落シマシタ!!」


「――え~~っとぉ~~??」

 頬に人差し指を当てて首を傾げるヒビキ。

「「――ん~~??」」

 こちらは別な意味で不思議そうに顔を見合わせる雨音指令とヴィー隊員。

「――フッ、下賤ノ輩ドモ、恐怖ノアマリ声モ無イカ……ククク……」


「ねぇねぇ、そこのお姉ちゃん?」とヴィー隊員。

「何ダ、愚民ドモ?」

「それなんで『グワシ』なんだよ?」と雨音指令

「ナ!?」

 思わず中指と小指を折り曲げ他の指をぴんと伸ばした己が掌を二度見する謎の少女。

「――マダ、ガ若干残ッテイルヨウダ――修正完了――フンッ!!」

 改めて、中指のみ伸ばして手の甲を相手に向けて上に突き上げる謎の少女。

「バグって言うよか単に寝惚けてて間違えただけじゃね?」

「そうそれwww」

「しゃーらーっぷっ!! 新製品ニハ付キ物デアル!!」

「あ、誤魔化した☆」

「黙レ愚民!!」


「あの~~?」

「何ダ、御姉様?」

「うち、弟しか居ない筈なんだけど~~、どちら様~~?」

「愚問デアル。我ガ身ハ御姉様のカラ作ラレシ物。依ッテワレガ汝ノ妹デアルハ自明ノ理」

「――一体、誰が――」

「御母様ニ決マッテオロウガ――アァ、我ガ偉大ナル御母様……」

「――やっぱアイツかw」

「あの仰々しい喋り方とかまんまやもんなぁw」

 嘆息するヴィー隊員と由布子隊員。


「――ト、言ウコトデ」

 謎の少女の三白眼が蒼く光り、全身から機械音が響く。

「我ラ偉大ナルト御母様ニ楯突ク貴様ラ下賤ノ輩ドモハ、ココデ塵ト消エ去ルノダ――ワレ、R=鵺乃ぬえの啼来夜なくよコト"あ~る・ぬ~坊"ノ手ニ依ッテ!!」

 言うなり先程の"F●●k You!!"の形にした掌をヒビキに向ける。

五鬼の右手Five Demon Right閃光の夜叉すぺーすめーざー!!」

 1本のみ伸ばされた中指の先から青白い光線が迸る。間一髪避けたヒビキだが、背後の壁面は完全に溶解している。

「ネタキャラと思ったらガチだった件」

「ヴィーちゃん、冗談言うてる場合やない~!!」

「――サテ、死ニタイ奴ガ居タラ掛カッテ来ルガヨイ……ク…ククク……」

 不気味な駆動音を立てて一同に迫るあ~る・ぬ~坊。キャリブレンジャー(+α)、絶体絶命――!?


<< □ |> ○ || >>


 一方、別室にて謎の巨大装置を操作するローディムーン。

「ローディムーン様~、コレは一体何なので御座いますか~?」

「ふん、ヒビキと共に我々の元を逐電した貴様は知らぬであろうが、これこそ我が偉大なるゴスゴスの新たなる一歩として産み出されし物」

「矢鱈と馬鹿デカいコンピュータ? で御座いますね~?」

「此奴が起動した暁には、この国は全て我々の支配下となるのだッッ!!」

「それはまたどういった――」

「かつて幾度も計画されながらも国民の反発を受け頓挫した国民背番号制度、しかしそれは雌伏の時を耐え忍びつつも水面下では脈々と受け継がれてきた」

「ほぅほぅ」

「それに目を付けたのが我が偉大なるゴスゴス。フロント企業を通して日本政府に秘密裏に接触を図り、裏ではシステムを乗っ取るためのコードも仕込んでおいたのだッッ!!」

「それはまた――」

「システム自体は現在の政府・企業の諸々のシステムにも密かに接続出来る仕様になっておる。此奴を起動しさえすれば後はバックドアから侵入すればどうとでもしてくれるわ」

「しかしえらい埃被ってましたけど大丈夫ですかね~?」

「問題無いッッ!! これがッッ、これこそがッッ!! Big Boss計画プロジェクト!!」

 ローディムーンが最後に巨大なボタンをバンッ!!とばかりに叩くと、大きく「SJ-BB-1」と書かれた巨大コンピータのそこかしこから明滅と起動音が響き渡る。

 それに負けじと響き渡るローディムーンの哄笑。地球が地球が大ピンチ!!


<< □ |> ○ || >>


「ど、どうしましょう~!! あっちもこっちもピンチですよぅ~!!」

「まぁ落ち着き給えマキくん、こーんなこともあろーかと――」

「あれ絶対なんも考えてないっしょや☆」

「それなw」


 次回、『Blue Screen Message』仏恥義るゼ!!


[L] ||||||||||||||||||||||||||

-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB

[R] |||||||||||||||||||||||


 ――あぁ、またやってもーた……。

 次から次に思いついたネタぶっ込むもんだから収拾が……。

 またも出ました新キャラ「あ~る・ぬ~坊」は同世代にはバレバレですが『究極超人あ~る』本編の最終章に登場したあ~る君の妹「あ~る・デコ」ことR・高峰秀子が元ネタです。登場時の台詞もほぼそのまんま。あちらが「アール・デコ」なのでこちらは「アール・ヌーヴォ」ということです。イミフな方は美術史をググって下さいませ。

 敵のボスが産みの親で主人公の兄弟姉妹扱いというあたりはイクサー2とその元ネタのハカイダー、主人公の予備パーツで新造されたあたりは『人造人間キカイダー』原作版のキカイダー00ダブルオーことレイ(※OVA版では若干設定が違います)。

 彼女の主兵装の五鬼の右手Five Demon Rightは『仮面ライダー スーパー1』のファイヴハンド+名前の元ネタのひとつ『地獄先生ぬ~べ~』の「鬼の手」+「グワシ!!」の産みの親である楳図かずお先生の漫画『神の左手 悪魔の右手』……もーワケワカメ(^^;

 最後のBig Boss計画は――ネーミングは言わずと知れた現・日ハム監督のあのお方ですが、この設定自体は『仮面ライダー』原作版ラスボスのビッグ・マシンとそれに付随する計画が元ネタです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る