tr.15 三姉妹の大逆襲

「――そろそろかしら?」

 ソニア隊員が空を見上げる。

「――ソニア?」

 シンク隊員が首を傾げた、その時。

「ラ=ム姉さん~おまっとーさーん!!」

「ラ=ム姉さん、ご無沙汰しておりました」

 彼方から飛来する2機の戦闘機。

「よぉ、お前ら!! 遅かったじゃねーか!!」

 タツヲがその2機に呼びかける。

「てか兄貴、ヤラれてんじゃんw」

「しっかりして下さいよ、兄さん」

「ウッセー!! そんだけ強敵なんだよ。――お前らを喚ぶくらいにな!!」


「レ=ム!! リ=ム!! 準備は宜しくて!?」

「はい、姉さん」

「いつでもいいよ、ラ=ムねぇ

「では参りましょう――宇宙そらときいかづちよ、我に力を!!」

 叫んだソニアことラ=ム姉さんの身体が青い輝きに包まれた。


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「な、何じゃ今度はッ!!」

 ローディムーンが驚いて叫ぶ。もう何度目だこれw

 彼女が凝視する先では、青い輝きに包まれたラ=ム姉さんが次第に巨大化していく。

 そして、上空の戦闘機――機種にシャークマウスが描かれたF-20に似た機体のコクピットから飛び出す緑色の髪の少女と、X-29のような前進翼機のコクピットから飛び出す朱色の髪の少女。彼女たちもラ=ム姉さんと同様、各々の髪と同じ色の光に包まれている。

 地上へ降下する2人と地上から飛び上がるラ=ム姉さんの身体が同一線上に並んだ、その時。

『スピネルフォーメーション・トリプルコーティング!!!』

 3人の声が唱和し、重なった光は白く輝いた!!!


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[BGM]「勝利の三姉妹・炎」

♪我ら最強! 我ら最強! 無くす物さえ無い今が~

♪強くなるチャンスよ~ お前には! 敵は無い!


「段々とBGMが手抜きになってきていますわね」

「姉さん、作者さんもお忙しいのでは」

「ちっちっ、レ=ムねぇは甘いなぁ」


 重なった光の中で巨大化したラ=ム姉さんの身体がぱっかーんと前後に開く。

 続けて次女の緑の髪のレ=ムの身体も同様にぱっかーんと。

 末っ娘の朱色の髪のリ=ムがレ=ムの開いた身体に入るとレ=ムの身体が閉じた。

 そのレ=ムが開いたラ=ム姉さんの身体に入り、ラ=ム姉さんの身体が閉じる。

 ラ=ム姉さんのヘッドギアから左右にウイング状のアンテナが伸び、マスクガードが閉まる。

 巨大化した彼女は大張風エフェクトでポーズを取り、叫ぶ。


「トリオで変身、ベーカムフー!!」


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βベーカム風?」

「司令、違うと思います。ある意味当たってますが」

「おぉ……マトリョーシカ合体……浪漫だ……」

「シンクちゃん、感動してる場合やないw」

「てか、ぶちょ……ソニア隊員、最初からそれやりゃ良かったじゃんね?」

「出来ればやりたくなかったですわっ!! 何が悲しくて花の乙女が巨大化だの胴体ぱっかーんだの!!」

『デスヨネー(^^;』一同、納得。


「――それは兎も角」

 こほんと咳払いをしてビシィッ!!とキメポーズを取るベーカムフー。

「闇より出で、地球を蝕む者達よ、わたくしは絶っっ対にゆるしませんわっ!!」


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「――ふ、ふんッッ!! たかだか1匹増えたところでそれが何だと言うのだッッ!!」

「先程もその1匹に散々やられていらっしゃったようですけど?」

「ぐぬぬ……」

「それではいざ、参りますわっ!! "剣虎サーベルタイガー"!!」

 ベーカムフーの手に青い炎を纏った巨大な剣が顕れる。

「東通無電剣、猛虎乱舞っ!!」

 剣より伸びた青い炎が渦巻き、近くの怪人を次々と襲う。

 真っ黒に焼け焦げた怪人達は次々に倒れていく。


「む……い、いかんッッ、バームゴスっっ!!」

 ローディムーンが叫ぶや否や、六角柱の透明な胴体に手足の生えたような怪人がと前に進む。

「バームー!!」

 その怪人の頭部が捩じ込み式の蓋状になっており、それを己が両手で器用に回して開くと、中から白濁した粘液が損耗した怪人達に飛んで行った。

「何ですの……!?」

 訝るベーカムフー。

「所謂エロゲ的なアレ?」

「わーっわーっわーっ!!」

「おわっ!! マキちゃん急に大声出してどしたんよ!?」

「い、いえ、今、急にそうしないといけないような気がして……」

「ついにマキくんまで天の声デムパを受信したか(^^;」

「運営さんに怒られるような発言は駄目よ~~うふふ~~」

「ヒビキパイセンはナチュラルに受信してるし(^^;」


 などと馬鹿をやっている間に、怪人達に付着した粘液が次第に蒸発し、やがて怪人達はすっかり元に戻ってしまった。


「げげ!! なんか元に戻ってんだけどっ!!」

「なんと……あれは補修機能だったか!!」

「さっきヴィーちゃんがぶっ飛ばしたのも直ってるよ。ヤバくね?」

「ソニアちゃ~~ん、大丈夫~~?」

「何のこれしき、ベーカムフーとなったわたくし達は最強ですわっ!!」

 再び構えを取るベーカムフー。

「――そういえば、ヴィーはどうしましたの?」


 その頃、ヴィー隊員の駆る超勇者RAIDEENらいでーん(ゴッドワンコ形態)は――


「あーコラ!! 動け!! なんで急に止まっちゃうんだよー!!」

 サントラゴスが置いて行った巨大な蓄音機のホーンスピーカー風のパーツの前で座り込んでいた。

「おーい!! タメえもーん!! なんとかしてー!!」

「あーこりゃダメだねー」

「何でっ!?」

「ゴッドワンコのOSは古代ムーニー大陸の聖犬"サンニッパー"をモデルにしてるから――」

「だから!?」

「サンニッパーの生前の習性で、蓄音機のホーンを見ると立ち止まって動かなくなるんだなこれがw」

「なんだその欠陥仕様ー!!」

 よくよく見ると、ディスプレイには"Her Master's Voice"と標示されたままフリーズしている。

「だってほら、こんな巨大なホーンあるとか想定外じゃね?」

「あーもー!! 古代ムーニー大陸の奴らは馬鹿かー!!」


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「くくく……あっちの駄犬は使えんようじゃのう? 骨董品なぞ引っ張り出すから早々に壊れたかの?」

 ローディムーンは可笑しくて堪らないというようにくつくつと嘲笑を漏らす。

「――はぁ。全く、ヴィーは……」

 ベーカムフーは呆れたように肩を竦めた後、

「ならばわたくしがやるまでっ!!」

 丁度そこに両脇から出てきて、

「へいへい彼女~!! 俺らと遊ばな~い?」

「行きつけの店があるんだけどさ~?」

 と、ナンパを始めたイケメン風の怪人が2体。

 おかサーファー風のサラサラ茶髪のハマトラゴスとテッカテカのリーゼントでキメたアメトラゴスのコンビである。

「その軽薄な口にチャックなさいっ!! 神聖なる学び舎でナンパなど、言語道断ですわっ!!」

 がしっ、とばかりに2体の頭部をそれぞれ鷲掴みにするベーカムフー。

「おいおい彼女~、そんなことしたら俺らの自慢のヘアーが崩れちまうよ~」

「あら、そうですの? ならばもっと良い髪型にして差し上げましてよ?」

 満面の笑みを湛えるベーカムフー。だが何故か頭を鷲掴みされた怪人コンビは冷や汗をかいている。

「東通無電・ツインハイパワーコレダー!!」

 怪人の頭を鷲掴みにしたままの両手から稲妻が奔った瞬間、怪人達は電撃に貫かれる。

 黒焦げになり煙を噴くその頭髪は、ものの見事にチリチリのパーマになっていたw

「あーら、随分と良い御髪おぐしになりましたわねぇ?」

 からからと哄笑するベーカムフー。

 雨音指令は思わず自分の頭を押さえて畏れ慄いているw


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「ダメだこりゃ┐(´д`)┌ ――次征け、次ッッ!!」

 ローディムーンの命令に応えるように、またもや立ちはだかる怪人2体。

 巨大なギターを構えた濃いもみあげにリーゼントヘアーのボルタゴスと、背中に弁慶の刀の如く巨大なゴルフバッグを背負ったウッズゴスだ。

「この作者は……まーたこんなギリギリな所を……(- -;」

「? ――何がギリギリなんですか、ミサちゃん先輩?」

「マキちゃんのパパ――いや、お祖父ちゃんにでも訊いてみよう☆」

「はぁ……?」


 なんてことをやっている間にも、各々の獲物を構えてベーカムフーににじり寄る2体の怪人。

「はぁ……」

「ふんっ、もう息切れか、青いの!!」

「いいえ? 些か呆れ返っているのですわ」

「にゃにおぅッッ!?」また噛んだw

「だって、ねぇ――」

 迫り来る2大怪人をちらと見て溜息を吐くベーカムフー。

 その時、ボルタゴスがギターをマシンガンのように構え、ウッズゴスが両手にクラブを構えた!!

「――バレバレですわ。東通無電拳・天使の暴風エンジェルストーム!!」

 ベーカムフーの両拳から巨大な竜巻が巻き起こり、巻き込まれた2大怪人はその動きを止められる。

「もうお逝きなさい――東通無電拳・天使の衝撃エンジェルショック!!」

 ベーカムフーの拳が青く輝き、只の的となった2代怪人を貫く!!

 一瞬の後、大爆発を起こしバラバラになるボルタゴスとウッズゴス。

「ここまで粉々になればもう元には戻せませんわね?」

 不敵に笑うベーカムフー。

「なんと見事な悪役令嬢!! 素晴らしいぞソニア隊員!!」

「司令、本っ当に後でどうなっても知りませんからね……?」


「んなッ……な……」

 あまりの惨敗っぷりにまたもや口パク状態のローディムーン。

「どうだ思い知ったか俺たちの力!! へへーんだ!!」

 大人気なく煽っている雨音指令を見てふっと微笑したベーカムフーも追随するかのように煽る。

「弱い怪人はもう飽きましたわ。強い怪人は何処にいらっしゃるの?」

 もうこれではどちらが悪役だか判りゃしないw

「ぐぬぬ……」

 もう何度言ったかも知れぬ「ぐぬぬ」を言いつつ、ローディムーンが叫んだ。

「――ならば、こいつでどうだッッ!!」


<< □ |> ○ || >>


「なんでヨーヨーが無いのだっ!?」

「司令?」

「ヨーヨーって何のことですの?」

「だって三姉妹だし、タツマキからのスピンとか、ここまでフラグ立っててヨーヨーが無いとかおかしいだろ!!」

「大体、あんなモノが武器になる訳がありませんわよ?」

「何を言うかソニア隊員!! ヨーヨーは漢の浪漫なのだっ!!」

「確かにソニアならサキ姐さんの"許さねぇ!!"だか"許さんぜよ!!"が似合いそうではあるなw」

「――シンク、貴女あなたまで……(-_-#」

「――司令、作者はそれにこの章を書き終えてから気付いたそうで、今更書き直せるか~!!とのことです」

「うわ……遂に六花ちゃんまで天の声デムパを……(( ;゚Д゚)))」


 次回、『青いボディの異邦人ストレンジャー』闇より出で、地球を蝕む者達よ、わたくしゆるしませんわっ!!


[L] ||||||||||||||||||||||||||

-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB

[R] |||||||||||||||||||||||


 今回のベーカムフーも色々と混ざってかなりカオスになってしまった……orz

 とは言えマトリョーシカ合体は浪漫だ!! いつかバイカンフーとゴーディアンを並べるのが密かな野望です。

 ヨーヨーの件は後書きのとおりで、全部書き上げてから気付きました☆(・ω<) テヘペロ


 ソニアの妹2人は本編に先駆けての登場……あっ、またかよって石投げないでー!!

 次女は緑色でBHF、末っ娘は朱色でCHF。名前的に今の方はリゼロと転スラを想定されるとは思いますが……作者はおっさんなので次女はドリームハンターさん+剣狼伝説の人、末っ娘は6隻の幽霊船リープ・タイプのリムさんが元ネタです。尚、本編中のイメージは辛島美登里とNOKKO。

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