tr.02 謎の怪人

(SE)梟の鳴き声、そこに被さって鴉の甲高い鳴き声と羽撃きの音――。


 深夜、地上を煌々と照らす満月。

 夜道を歩く若い女性。時折、不安げに後ろを振り返る。

 一瞬、雲が月を覆い、真っ暗になる。

 不審な気配に恐怖に見開かれる女性の眼。

 闇夜に絹を裂くような悲鳴が一瞬だけ谺して、消える。

 雲は晴れ、月が夜道を照らす。

 何事も無かったかのように静まりかえる夜道。

 遠くで鴉が鳴いている――。


『世界がパンデミックの脅威に打ち震える中、密かに忍び寄る魔の手』

『それは人類を影から支配してきたの仕業なのか――!?』


「むぅ~~!? これはゴ○ゴ○の仕業ね~~!!」

「ヒビキ、いきなりどうした!?」

貴女あなた、一体何を仰っているの!?」


[BGM]♪ドフを超えろ! オクを駆けろ! この音のため~


『誰もその恐怖に気付かぬ今、世界を救えるのは君だけだ!!』


[主題歌]『仮面レコーダーBlaMagさん』


 ドフを超えろ! オクを駆けろ! この音のため


 君は見たか針が真っ赤に振れるのを

 黒い磁気の底に危険な沼が待つ

 信じる奴はジャンキー 真実の亡者

 夢を見続けることが俺のエクスタシー

 値切ることが好きさ 赤く浮かぶ残高バラン


 ドフを超えろ! オクを駆けろ! この音のため

 入札ビッド燃やせ! 涙 流せ! 明日は無一文(( ;゚Д゚)))

 仮面レコーダーBlaMag (cho:さん…さん…さん…)

 仮面レコーダーBlaMag (cho:さん…さん…さん…)


『今こそ甦れ、伝説の戦士、ブラマグさん!!』



<< □ |> ○ || >>


 年の瀬も押し迫ったある日――。

 電音部は、暇だった。


「何というか、忙しいのだが、そうなると逆に――」

「ええ。却って何もやる気がしないものですわね……」

「最近は侵略帝国の連中もおとなしいしねぇ☆」

「それな。まぁ今度出てきたら再起不能なくらいキッタギタにしてやるんだけど」

「ま、GW劇場版であれだけドつき回したから当分は出てこないんじゃ無ぇか?」

「でもさ、キョウく――司令、最近、不審な事件が多くない?」

「若い女性ばかり行方不明になっているというアレですわね?」

「はい――これは侵略帝国の仕業ではないんでしょうか?」

「アイツらの仕業にしても流石にセコくね?」

「そうそれ。奴らは基本、脳筋だからどっちかつーと力押し」

「確かにな――ん、どうした、ヒビキ?」

「何か悩み事ですの?」


「むぅ~~!? これはゴスゴスの仕業ね~~!!」


「ヒビキ、いきなりどうした!?」

貴女あなた、一体何を仰っているの!?」

「てかゴスゴスって何なんよ、ヒビキパイセン?」


「(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー!! (`・д´・ ;)」


「ふぇ!? 急にどーしたんですか、キョウく――司令?」

「ゴスゴス、よもやその名を聞く事があろうとはっ!!」

「何か知ってんなら勿体つけんととっとと吐けやヴォケ」

「ヴィーちゃん、言い方(^^;」

「ゴスゴスって一体何なんですか、司令?」

「――話せば長くなるのだが」

「えー長いのヤだー☆」

「三行でよろ」

「えーいまったく!! これだから最近の若いモンは!!」

「ボクらの方がお姉さんなんだがそれは」

「言い方が爺臭いぞー司令☆」

「ほれほれ、そこ混ぜっ返さない。――で、司令?」

「う、うむ。一説に、人類発生の時より裏側からその歴史を操っていたとされる組織で――」

「……思いっきり胡散臭いですわね」

「オカルト系雑誌に定期的に出て来る的なアレか」

「ム○か、△ーだな、○ルミナティとか○リーメイソンとか!!」

「ヴィーちゃん、喰いつきめっちゃ良くね?(^^;」

「うぅ……皆さんが何言ってるのかさっぱり解りません……(´・ω・`)」


「――でも、彼らは滅びたはずなのに~~」

「ふぇ?」

「なぬ!? ヒビキ隊員、それは一体――」


 どういう意味か、と司令がヒビキ隊員に問いかけようとしたその時。


 ばりばりばりぐわっしゃーん!!


「きゃーっ!!」

「うおっ!?」

「な、何ですのっ!?」


 突如として崩落する部室……じゃなくて司令室の壁。

 折角、前回の修理が終わったばかりなのに(´・ω・`)


「よ、よし! 前回で対策したお陰で備品は問題無い、完璧パルフェ!!」


「備品より先に壁の心配しろや阿呆司令」

「ね、ねぇ、このパターンってさぁ、やっぱりまた――」


 ミサ隊員の声に土煙が舞う崩落した壁の向こうを凝視する一同。

 そこに居たのは――。


「ぐふるー!! ぐわっ! ぐわっ!」

 両肩からキャノン砲を生やした直立歩行する虎。

 その砲身からは白煙がたなびいており、今の惨状の原因をはっきりと示している。


「こん畜生め、侵略帝国の連中、暫く静かだと思ってたらこれかYO」

 ヴィー隊員が毒づくが、敵の方は一顧だにしていない。

「でもさ、何か今までのと感じが違くね?」

「そう言えばそうだな、何というか、その――」

「はっきり申し上げて"キモい"ですわね」


 そう。今までの侵略帝国の怪人はどちらかというとゆるキャラ的なコミカルさもあったのだが、今回のこの虎怪人、何というか、異様にリアル指向な見た目のため、確かに怖いを通り越してキモいレベルの造形だ。天宮K太をベースに小松Z茂と石原G人のテイストを加えた感じだろうか。子供が見たら泣き出して夢にまで出てきそうなまである(( ;゚Д゚)))


「今までが酷過ぎたんでデザイナーが馘首クビになったとか」

「いやいや、むしろこれは造形師モデラーの方かも知れんな」


 暢気な声で分析するヴィー隊員と司令。


「二人とも、そんなことは後で宜しいですわっ!! 今は目の前の敵を!!」

「皆、変身だ、急げ!!」


 皆を急かして戦闘態勢に入る年長組。だが――。


「ヒビキ、どうした!?」

「ヒビキっ!?」


「――あれはタイガーゴス……どうして……」


 何があろうと常にマイペースを崩さないヒビキ隊員が、眉を寄せて眼前の虎怪人を睨んでいた……(( ;゚Д゚)))


[L] ||||||||||||||||||||||||||

-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB

[R] |||||||||||||||||||||||


 えー、お正月映画ということで干支にちなんで虎怪人です(^^;

 モデルは判る人にはバレバレかと思いますが、10号ライダーの敵のアイツです。てかほぼそのまんま(^^;

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