Bonus.1 - tr.3『劇場版 磁帯戦隊キャリブレンジャー! -出陣!!新たなる戦士-』
「――着任ご苦労。早速やられたようだな、オングーロよ」
総司令グルンディッヒが冷たい眼で大参謀オングーロを見る。
「恐悦至極に御座います。――なぁに、今回は挨拶代わりの小手調べ。既にメガロゲーロの改良と新型の開発を始めております」
「それはまた仕事の早いことだのぅ!!」
大将軍ブラウプンクトが嘲るように叫ぶ。
「お褒めに預かり光栄に御座います」
皮肉を意に介さず敢えて恭しく返すオングーロ。流石は陰険眼鏡。
「その新型ですが――」と科学長官テレフンケンが口を挟む。
「現在、大至急で開発中です。明後日までには完成するかと、フェッフェッフェッ」
「ふむ。では夜が明け次第、時間稼ぎにメガロゲーロ改を奴らの基地に向かわせよ」
「ははっ!!」敬礼し、退出するオングーロ。
「そ、総司令閣下――」狼狽えるブラウプンクトを眼で制し、
「まぁ、お手並み拝見と言ったところだな」ニヤリと嗤うグルンディッヒ。
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「……マキくん、奴らの出てくる様子はないふぁ?」
昨夜は部室の片付けで徹夜したため、今にも寝落ちしそうな体で雨音指令が問う。語尾が欠伸と同時になってるぞおい。
「今のところレーダーには何も……」
彼女もなんだかんだと途中までは付き合ったため眠そうだ。
「……マジで全部片すとは思わなかった件」
「マキちゃんも付き合い良いっつーか……よ!!世話女房(はぁと)」
「ち、違いますーっ!! 私は秘書としての――!!」顔が赤いぞ、そこの秘書。
「それはともかく」ソニア隊員が雨音指令を見る。
「あの騒音はもう少しなんとかなりませんの、指令?」
「その点は抜かりない。既にイヤーピースの改良型を装備済みだ」
手に持ったイヤーピースを頭上に掲げる。前より一回り大きくなっている。
「これこそ強化改良新型ノイキャン・イヤーピース、コード846~!!」
なんか青い猫型ロボットの声に聞こえるのだが気のせいだろう。
「215では
徹夜明けでナチュラルハイになってるせいか、説明が通販番組のノリになっている。
「しかしそれだけで大丈夫だろうか? 敵も当然、改良はしてくると想定されるが」
シンク隊員が不安気に呟く。
「そぉ~~ねぇ~~。あのタイプは、絶対何か企んでるわよねぇ~~」
ヒビキ隊員も同意。
「まぁ待て。実はコレとは別に新型も鋭意開発中だ。乞うご期待」
「それまで敵が待って下されば宜しいのですけど」
溜息を吐くソニア隊員。――彼女の憂慮は正しかった。
どんがらぐわっしゃーん!!
基地に激震が走る。指令が徹夜で積み直した機材がまたもや音を立てて崩落する。
「ぐぉぉ!! な、なんてこったー!!
怒り狂う雨音指令。だからアンタ、ちったぁ機材以外の心配もしろ。
「予想以上に早かったか」
「もう怪人の修理終わったのかしら~~」
「言わないこっちゃありませんわっ!!」
兎にも角にも、急ぎ外に出る一同。
「くははははは!! 息の根を止めに来てやったぞキャリブレンジャーの諸君!!」
「尻尾を巻いて逃げ帰っといて良く言うよねー?」
「クチだけ男乙www」
「――フッ、コイツを見てもそんな口が叩けるかな?」
気障ったらしくマントを振り上げるオングーロ。
「出でよ、メガロゲーロ(改)!!」
「ゲゲロゲーロ!!」
先日の戦いでボロボロだった怪人がものの見事に再生している。しかも暗緑色だった皮膚が鮮やかなメタリックグリーンになり、体側と両腕には銀色の2本線が入っている。判りやすいパワーアップだなおい。
「――桜島をすっ飛ばすとはニワカめ。雪山から出直して来やがれ無知蒙昧」
ジト眼でさらっと猛毒を吐くヴィー隊員。しかしそれこそニワカのオングーロには通じないw
「――!? 意味が解らんが、まぁいい。征けメガロゲーロ(改)!! 貴様の新たな力を見せてみよ!!」
「ゲゲロゲーロ!!」
怪人は大きく咆吼すると、体表のメガホンを震わせる。しかし、その刹那。
「今だ!! モード846!!」
「「「「「らじゃ!! モード846、イヤーピース(改)装着!!」」」」」
前回より一回り大きいイヤーピースが各人の耳を覆う。
「よぉーっし!! これで騒音対策は完・璧!!」ドヤ顔の指令。ウザ。
「ほぉ。少しは知恵が回るようだなぁ。だが……」嫌味ったらしさMAXのオングーロ。
「メガロゲーロ、Bluetoothモードon!!」
「ケゲロゲーロ!! BT mode start! Pairing! Connected! Complete!」
「……なんか急に怪人がイケボになって英語喋り始めたんだけどっ!?」
「
「向こうも急
などと言っている間に、何処から取り出したのか金色のマイクを片手に小指を立ててポーズを取るオングーロ。
「私の唄を聴けぇぇぇーーーっ!!」と、歌い始めたから堪らない。
『ぁあかぁるぅいぃぃぃてぇいこぉくぅ~~!!』ぐわんぐわんぐわん!!
「きゃあぁぁぁ~~!!」
「うぉぉぉ!!」
「な、なんですのっ!?」
メガロゲーロ(改)の体中のメガホンから、オングーロの歌声がエコー300%増量で流れてきた。
しかも低周波も絶賛増量中のため、イヤーピース(改)越しにも身体に直接不快な振動が伝わってくる。車酔いと船酔いを足してよーく掻き混ぜたらこんな感じであろうか。キャリブレンジャーは皆、強烈な目眩と三半規管の異常でまともに立っているのも困難な様子だ。
「ぅわはははははーーーーーっ!! 見たかー!! これがメガロゲーロ(改)の新機能、BTモードとハイパー・バス・ブーストだぁー!!」
てかオングーロ、お前はなんで平気なんだ?
「ちょっと指令、このイヤーピース役に立たないんだけどっ!?」
「……音がどうとか以前に低周波が……うぷ……吐く。もう吐く。マジ吐く」
「……ま、待て。暫しの辛抱だ諸君。それまでの間、取り敢えずアレを使うぞ」
指令もイヤーピースを付けているが、やはり直接体に来る低周波には効果が無く、天パの頭を抱えながら叫ぶ。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!! 出でよ、クラリオン音波砲!!」
一瞬、司令の声がヒッチコックばりのダミ声に聞こえたが気のせいだろう、多分。
「……これって~~アレかしら~~」
「……どう見てもアレにしか見えんな」
「……カラオケ、ですわよね?」
そう。それはどう見ても往年の縦型カラオケ機にしか見えない。巨大な38cm一発のバスレフスピーカー、8トラックとコンパクトカセットのWデッキ、懐かしのザ・昭和のカラオケ機である。
「モード8、エコーマイク、セット!!」
「「「「「らじゃ!!!!! モード8、エコーマイク!!!!!」」」」」
キャリブレンジャー各員の手に強化服と同色のマイクが現れる。
「エコーが光るぞ歯には歯を、小節が唸るぞ目には目を、だ!! 正義の為なら
雨音指令が叫ぶ。長身の天パだけに、声がシングル国内売り上げ最高記録保持者のあの人っぽいが、おそらく気のせいだ。
「なるほど、騒音には騒音…もとい大音量のマスキング効果で潰せ、ということか」
「解りましたわっ!! では、1番、キャリブルー唄いますわっ!!」
厚めの文庫本サイズの8トラックテープをセットし、選曲ボタンを押す。テープがゆっくりと回り、シャーッという僅かなノイズの後に演奏が始まった。
♪ぉオーヴァーナイッ!! サークセッ!!
ブルーが歌い始めるが、何というか…原曲はロックなのに
「……なんか余計騒音が酷くなってる気がする件(--;」
「……よ、よし、交代だ。2番、キャリブレッド、参る!!」
♪ぷわァ~とぅわぁ~ィむ・らヴぁッ!!
こっちはミュージカル…というか宝塚調で来たかw
「れ、レッドってばガッチガチじゃんね(^^;」
「じゃ次、私ね~~キャリイエロー、行きまぁ~~す♪」
♪らぃどぉん~~たぁいむ~~
「……スヤァ」
「( ˘ω˘)」
「……はっっっ!!」
子守歌のようなイエローの山下達郎に危うく寝落ちしかけたオングーロが頭を振りかぶった。
「い、いかん、危うく寝落ちするところであった……あれは催眠音波か?」違うと思います。
「えぇい面倒だ、メガロゲーロ(改)、ボディソニック全開!!」
ぅわん!! と音量が増し、益々ノリノリで唄を再開するオングーロ。
♪じぃ~んせぇい~らぁくぅあぁりゃぁ~
「くっっっ!! やっと静かになったと思ったら!!」
「えーい!! 次よ次!! 次の曲をお入れ遊ばせ!!」
「ブラック~~ピンク~~宜しく~~」
♪♪はぁじぃめから(はじめから)~むぅすばれなぁい(むっすばれっない)~
♪♪すぅぱぁすたぁのお出ましに~
2人がデュオで熱唱するも、じりじりと押し返されている。
「……く、アレは、アレはまだか!!」空を見上げる雨音指令。
その時。
「おまたせしましたーっ!!」
「新手か!?」空を見上げるオングーロ。
そう。彼が見上げた彼方にはどこぞのオリンピックで見たような小型の背負い式ロケットでこちらに飛んでくる少女の姿が。
「マキさん!?」
「マキくんか!?」
「マキちゃ~~ん!!」
「マキマキ乙」
「マッキー!!」
「よし、間に合ったか!!」親指を上げて"いいね!"する雨音指令。
「皆さーん!! これ着けて下さーい!!」
彼女の手から色とりどりの
「コード
「「「「「らじゃ!!!!! コード
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G.W.期間中、連日公開!!
期間中に完結予定(たぶん^^;)
大参謀オングーロ、ブラック、ピンクについては追って公開予定の本編Disc.2をお楽しみに!! (おぃ)
劇中で各自が熱唱した歌は、1つを除いて各々の元ネタに関連しています。
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