異世界に生まれ変わったので、学園を作って眼鏡男子と制服デートしてみた

橘むつみ

第1話 それは残業帰りのことでした



「疲れたぁ……」



深夜一時の帰り道。


最寄駅から降りて、コンビニに寄って、賞味期限切れかけのお惣菜とスナック菓子を買って、とぼとぼ歩く。


私は久高芽衣(くだかめい)、二十五歳。


都内の設備会社で事務をしている、ごく普通のOLです。


年度末ということもあって、最近めっちゃ残業が多いんだよね。


早く帰ってシャワーを浴びて、ビール片手に好きなものを好きなだけ食べて、泥のように眠りたい。


ああ、でも今日は木曜日だから、明日も仕事あるのか……。


住宅街に差しかかると、街灯がまばらなので、防犯と安全のためスマホの画面をつける。


そこへ会社帰りと思われるスーツ姿の男性とすれ違い、何かが光った。


あ、眼鏡。


暗くてはっきりは見えないけど、チタンフレームっぽいおしゃれな眼鏡をかけている。


やっぱ眼鏡男子って萌えるよね……。


私、実は三度の飯より眼鏡男子が好きで、会社でも眼鏡をかけた人がいると目で追ってしまう。


だからって、「眼鏡お似合いですね!」とか話しかける勇気はないんだけど。





高校生の頃、人生最大の願いは「眼鏡男子と制服デートすること」だった。


でも結局、その願いは叶わなかった。


クラスメイトにも先輩にも後輩にも、眼鏡男子はいたけれど、デートするほど親しい子はいなかったのだ。


卒業式の日、「ああ、これで一生眼鏡男子と制服デートはできないんだな」とがっかりしたのを覚えている。


そのまま何となく大学生になり、何となく社会に出て、何となく日々を過ごしている。


人生って、こんなものなのかな。




……ゥウウン。

ブブブブブブブブブ……。



変な音がするなと思った瞬間、後ろから物すごい勢いで何かがぶつかってきて、私は吹っ飛ばされた。


頭や体を強く打ったはずなんだけど、不思議と痛みはなく衝撃だけだった。


暗幕(あんまく)を引かれたように目の前が見えなくなる。


……あれ? 


私、どうなっちゃったの……?














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